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レンタル妹  作者: shio
7/7

始まりのエピローグ


 ――夕方、少女はマンションの一室のその場所にまた来ていた。


「――制服で来るとは思わなかったわ」


 シオリは少女――制服を着たサクラを見て、あきれたように、だけど、どこかにおかしさも覚えて(中学生でなくてよかった)と笑った。

 サクラの来ている制服は見たことがある。それなりの女子高で――まあ、お嬢様学校といっても間違いではない。


(なんの心境の変化かしら)


 昨日あんな別れ方をしたというのに、今日またこうして来るなんて……怒りを通り越して面白い子だとは思うが、責任者としては制服を着た少女を受け入れるわけにはいかない。

 シオリは視線を厳しくすると、詰問するような強い口調で問いかけた。 


「どうして、戻ってきたの?」

「……わかりません」


 サクラは小さく呟く。


「わからないってね……」


 あきれるシオリに、だけれど、サクラはその綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめて、


「昨日のこと、なかったことにしたくないんです」


 続けて、そう呟いた。


「――忘れたくない」

「…………」


 サクラの言葉に……シオリは溜息をついた。やっぱりこの子は嫌いだ、と昨日のその気持ちを思い出して。


「それで、忘れないようにしてどうするの?」


 この子は、また同じことを繰り返すつもり?――シオリがそう思った瞬間だった。


「お兄ちゃんのことは、忘れようと思います」


 サクラの一言はあまりに真っ直ぐ過ぎて、シオリは質問した自分を死ぬほど後悔した。


「お兄ちゃんのために、忘れます――でも」


 涙を流しながら、サクラはにこりと微笑んだ。


「自分の気持ちまで、忘れなくていいですよね」

「…………」


 シオリは何もいえなかった。なにを言えばいいのかも分からない。


 ――どれくらい時間が経ったのか。

 シオリは、ふぅ……と長い息をつくと、静かに口を開いた。


「とりあえず、涙は拭きなさい」


 立ち上がり、幼い少女の頬をハンカチで触れる。


「それで、あなたは一体どうしたいの?」


 その質問に、少女は、サクラは、


「ここで、働かせてください」


 昨日と同じ言葉を、昨日と同じ気持ち半分と、新しい気持ち半分でシオリに伝えた。


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