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第六話 マコト

「使用人を一名、出向させることになった」


「出向…ですか」


仕事を始めようという矢先、セラ様が使用人室に訪れた。

ジェシカ、ガブリエル、僕の三人に話があるという。


「行き先は隣町の屋敷だ。出発は明日の朝、終了時期は未定」


「だ、誰が行くんですか?」


「君にお願いしたい」


セラ様は僕を見て言った。


「え!」


「セ、セラ様、ですが、その…『マコト』はまだ…」


「分かっているよ。だが、彼が適任なんだ」


「どうして…」


「すまないが話せないこともある。早速、準備を進めてくれ」


そういうとセラ様は去っていった。


「…お別れなのか?」


「…出向だから、いずれ戻ってくるよ」


「…さみしい」


「…そうだね」


ジェシカは何も言わなかった。

僕たちは仕事に取り掛かった。




マリア様のお部屋の掃除はしないように言われている。

僕はそれ以外の仕事をこなした後、明日からの出向の身支度をした。

マリア様…。

せめて出発前に、ご挨拶だけでもしたかったな…。


「…マコト」


「ジェシカ。仕事は?」


「速攻で終わらせてきた」


「さすが…」


ジェシカの表情は晴れない。


「大丈夫だよ、向こうでもしっかり働いて…」


「そういうんじゃない」


ジェシカは首を振った。


「…どうしたの?」


「…」


ジェシカは少し悩んでから言った。


「やっぱりあんたには話しておこうと思う」


「う、うん?」


「隣町のお屋敷のこと」


僕の出向先だ。


「あのね…悪い噂があるの」


「…どんな?」


「使用人を痛めつけたり、罪人に過剰な刑を執行したり…」


「…」


ジェシカは不安そうな目で僕を見ている。


「けど、ほら、セラ様が」


「さすがに、他所のお屋敷までは入っていけないと思う。命の危機とかならともかく」


「そ、そっか…」


…どうしよう。


「やっぱりあたし、セラ様に言ってあたしに変えてもらう!」


「だめだよ!」


「どうしてっ!」


「ジェシカが危険な目にあったら、それを察知できるのはマリア様だ」


「…」


「けど、そこからセラ様に伝えていたら、手遅れになるかもしれない」


「セラ様を信じるの…?」


「…それしかないと思う。悪い人じゃないんでしょ?」


「そうだけど…」


「大丈夫…きっと、なんとかなるよ…」


「うん…」


ジェシカは俯いている。


「その…マリア様は、お部屋にいらっしゃった?」


「ううん、いなかったよ。まだ、お話ししてないの?」


「うん」


「探してくる」


「ありがとう。僕もすぐ行くよ」


僕は身支度を終わらせた後、マリア様を探した。

しかし、ジェシカも僕も、マリア様を見つけることはできなかった。




「じゃあ…気をつけて」


「うん。行ってくる」


「はやく帰ってこいよ!」


「頑張るよ」


ジェシカとガブリエルに別れの挨拶を済ませる。

マリア様とは結局お話しできなかった。


新しいお屋敷へは馬車で行くらしい。

セラ様が御者と話している。

話しが終わると、僕に乗るように言った。

セラ様も乗ると、扉を閉めた。


窓からジェシカとガブリエルを見る。

二人とも、寂しさや不安を押し殺しているような表情だった。

僕は彼女らを安心させるため、少しだけ微笑んだ。


馬車が動き出す。


…と、屋敷のバルコニーに人影が見えた。

…マリア様だった。


「マリア様!」


思わず口にしたが、声が届く距離ではない。

マリア様はこちらを見て…やはり心配そうな顔をしていた。


僕は…自分の思いを心に浮かべた。


マリア様は、どのくらい離れていても心を読めるのだろう。


僕には分からなかったが、どうしても伝えたくて、そう考えた。


マリア様は…少しだけ笑ってくれた気がする。

思いは伝わったのだろうか…。


やがて、マリア様もジェシカもガブリエルも、小さくなっていき…見えなくなった。

僕はこれから彼女らの存在と思い出を糧に、いつ終わるかわからない仕事を一人でこなさなければならない…。


僕の不安そうな様子を見たからか、セラ様が話しかけてきた。


「すまないな」


「いえ…」


「…さて」


セラ様が僕に向き直った。


「君に頼みたいことがある」


「…はい?」


なんだろう。


「これから向かう屋敷の主の、監視をお願いしたい」


「え…?」


意外な話だった。

僕が…監視を?


「良からぬ噂があるのは聞いたか?」


「…はい、ジェシカから」


「君にその真相を突き止めてほしい」


「で、ですが!」


「特別なことをする必要はない。普段通りに働き、そこであったことを覚えていてくれれば良い」


「…」


なんということだ。

セラ様の狙いは…それだったということか?


「もし君が危険に晒されたら、私は駆けつける」


名付けの契約のことだろう。


「…何か聞きたいことは?」


「その…」


僕は迷ったが、気になっていたことを聞くことにした。


「どうして僕なんですか?それと…どうしてそんなことを?」


「君を選んだ理由はいずれ話そう」


いずれ…。

僕はその時まで無事でいられるのだろうか。


「そして、これは重要なことなんだ」


「重要なこと…」


一体、どういうことだろう。

隣町のお屋敷のことが、僕たちに関係があるんだろうか。


僕は最後に気になっていたことを聞いた。


「僕が…断ったら、どうするつもりなんですか?」


「その心配はしていない」


僕はハッとした。

セラ様は微笑みながら言った。


「やってくれるね?『マコト』」




しばらくして、大きなお屋敷が見えてきた。

僕たちがいたお屋敷と同じくらいだろうか。

馬車が速度を落とし、やがて止まった。

扉が開けられる。

セラ様と僕は馬車を降りた。


「これから、この屋敷の主にご挨拶する」


「はい」


「失礼のないように」


「かしこまりました」


僕たちは、訪れる者を威嚇するかのような大きな門をくぐり、玄関へと向かった。

曇り空は今にも降り出しそうだ。

まるで、この屋敷でこれから起こることを予知しているかのようだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ちょっと忙しくなってきてしまいまして、

次回の更新日は未定です!

お話自体は考えておりますので、

気長にお待ちいただければと思います!

よろしくお願いしますm(_ _)m

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