レオの過去 後編
レオが炎龍・サラマンダーと契約をしてから数か月。あれから、炎龍がレオの前に現れることはなかった。そして今レオは食料を調達するために山を登っている。
(…東方向20m、うさぎが一匹…)
レオは体の向きを変え、手のひらに小さな炎を出した。
「はっ!」
レオは手のひらを前に向け、炎を発射した。そして、炎の方向に歩きだした。少し歩くと足元に丸焦げの、うさぎだったものが落ちていた。
(いただきます)
レオは手を合わせ、バックをあさってナイフを取り出した。
(ちょっと火力が足りなかったかな)
中まで火が通っていなかった。レオはもう一度手のひらに炎を出し、熱した。それにかぶりつきながら、レオは自分の手のひらを眺めた。
(だいぶ炎を扱えるようになってきたな…)
実際レオは、この数か月ですさまじい成長を遂げていた。炎を扱うという点でも、精神的な点でも。
「おい」
落ち着いた女の声だった。レオはなぜかこの人物の接近に気づくことができなかった。レオは返事をする前に手のひらに炎を出した。しかし、その人間に腕をつかまれてしまった。
「この山では勝手に動物を狩ることが禁止されている。で、君は勝手にうさぎを殺した…」
レオは後ろを向いた。声の主は、黒い髪をポニーテールに結ぶ少女だった。
「ねえ、これ食べてからでいい?昼ご飯なんだ」
「名前は?」
「…レオ」
「親は?」
「…いない」
「そうか…」
少女はレオの腕をはなした。
「私は稲妻一葉という。ここ一帯の管理をしている者だ」
レオは無視して、肉にかぶりついた。
「いつからこんな生活をしてるんだ?」
「…」
「そんなボロボロな格好で山暮らしをしていたら、死んでしまうぞ」
「…」
「苦労したんだな…君の目がそう言ってる」
「…」
「しかも、なにか大きい力にとりつかれているようだね。かわいそうに…」
「やめてくれ!!!」
レオは立ち上がった。
「ボクはこう生きるって決めた!!もう後戻りできない!!」
レオは火の球を一葉に投げつけた。一葉はそれを手の甲で消し、レオの肩に手を置いた。
「まだ小さいのに後戻りできない、なんて言ったら悲しいだろ?うちに来ないか。面倒を見てやるから」
「もう…やめて…」
レオが肩に感じたのは忘れ去っていた人間の温もり、そして冷たさだった。レオの目には数か月見せなかった涙があふれていた。…その時だった。一葉がレオに触れた部分から、激しい炎が噴き出してきた。
「あつっ!!!」
一葉はとっさに手をはなした。レオのほうを見ると、全身に炎が燃え広がっていた。
「付和雷同・瞬!!」
一葉は両手の人差し指を十字型に組んだ。そして電気の球を空へ打ち上げ、燃えているレオの腕をつかんだ。その瞬間、二人は消えた。
「…」
レオは目を開けた。そういえば、天井なんて見たのはいつぶりだろう。
「よかった…」
レオが首を横に傾けると、ベットの横で一葉が椅子に座っていた。
「ここは?」
「私が担当する支店だ」
レオはよく意味が分からず、一葉のほうを見た。そのとき、一葉は立ち上がった。
「…改めて紹介しよう。私は秘密結社A雷山村支店長、稲妻一葉だ」
「なに?そのAって」
「まだ知らなくていい」
一葉はまた椅子に座り、レオの目を見た。
「今日から君はここに住め。よろしく、レオ」
レオは何も言わずに反対側を向いた。
「…じゃあ、夜ご飯を作ってくるから待ってろ」
一葉は部屋を出て、ドアを閉めた。レオは知らぬ間に目から出ていた涙を右手でふいた。
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