《魔王》大学
舞台はちょっと変わって…これは《堕天使》が街を壊滅させてからすぐのことだ。
どことなく薄暗く、長い廊下。《堕天使》はわざとツカツカ音を立てながら歩いていた。《堕天使》は足を止めた。顔を上げたらツノをはやし、こん棒を持った大男が立っていた。
「…久しぶりだねえ、《牛鬼》。ステーキにされてたのかと思ったよ」
《堕天使》は《牛鬼》を挑発的な目で見た。
「ステッ!!!…お前ってやつは…。まあいい。報告が随分遅いようじゃないか」
「やれやれ。これだからジジイは…」
《堕天使》はおおげさに首を振ってみせた。すると、《牛鬼》は《堕天使》の顔の前にこん棒を突きつけた。
「お前の馬鹿げた行動には《魔王》様も手を焼いているぞ」
「かまわないよ」
《堕天使》はこん棒を手であしらった。そして数歩歩き、ふりかえった。
「僕らは使いやすいコマだ。殺されないから大丈夫♪」
瞳はどこまでも深く、暗かった。《牛鬼》は目をつぶり、ため息をついた。
「王を守るためだったらどんなに強くても使い捨てにされるってことを忘れるな」
「カッコつけちゃって。所詮は香車のくせに」
《堕天使》はこん棒をかついで去る《牛鬼》をにやつきながら見ていた。
「さて…一応忠誠は誓っとかないと」
《堕天使》は大きいとびらの前に立ち、ノックした。
「《魔王》様、《堕天使》です…《魔王》様?」
《堕天使》は顔をしかめた。
「留守か?あの牛肉、知ってて言わなかったな」
(おい《堕天使》。聞こえるか)
「《魔王》様?!テレパシー使えるように?!」
(元々だ。あと、もう少し発言に気をつけろ。全部聞こえていたぞ)
《堕天使》は思わず口をふさいだ。
「申し訳ございません」
(まあ我もそれですぐ殺すほどパワハラ上司ではないわ)
《堕天使》は笑っていいのか分からなかったので黙っていた。
(本題に入るぞ。《堕天使》、《猫》が失踪した。探し出せ。そして黒幕を見つけろ)
《堕天使》は一瞬考えて、笑った。
「大丈夫です。心当たりはあるので…」
「は、は、はっくしょん!!!」
「ネコもくしゃみするんだな」
「ちょっと風邪ギミかもしれないにゃ…」