練習試合編 3.翠玲vs稲妻一葉
結局試合の順番はくじで決まった。
「では審判はこの私、レモンが務めます」
ライムにものすごく似ている人が出てきた。
「ライムさん、あの人と双子?」
「…全くの他人なんですけどねえ」
初戦は翠玲vs一葉だ。二人は謎の結界のようなものの中に入った。
「いつもフーリのことをこき使ってる悪代官め!この稲妻一葉が退治してくれるわ!!」
「ハッハッハ!やってみろ小娘!俺を倒し、フーリを我が物にしてみろ!!!」
翠玲はこういうノリだけはいいのがムカつく。フーリは冷めた目で二人を見た。
「なあ、あのレモンって人の能力か?あの結界は」
音々がライムに問いかけた。
「はい。彼女は多種の結界を張る能力を所持しています」
「便利だこと」
「では第一試合、始め!」
翠玲は目をつぶり、手を合わせた。
「乱水雨拳・五月雨の陣」
翠玲がそうつぶやくと、あたり一面雨が降っているような感じになってきた。
「フーリはワカメの能力、見たことないもんな」
音々も見たことがあるのは一、二回だ。
「獅子召喚!!」
一葉が手を合わせると、雷をまとったライオンが出てきた。
「は?!魔獣は禁止じゃなかったのかよ?!」
「一葉お嬢様の獅子召喚によって出てくるライオンは魔獣ではなく幻影なのでセーフです」
「はぁ…」
一葉はライオンのおかげで距離を取って戦える分、翠玲は若干不利だろうか。
「乱水雨拳・夕立!!」
翠玲は拳に水をまとい始めた。
「俺の技に似てる…」
「ワカメはああ見えてゴリゴリのインファイターなんだ」
「ハアッ!!!」
先に仕掛けたのは翠玲だった。翠玲は一葉の背中を狙うも、ライオンに阻まれた。
「一葉さん、あれはちょっとずるいぞ」
「一葉!!チキってんじゃねえ!!」
フーリが横を向くとレオが一葉に向かってヤジを浴びせていた。
「う、うるさいわねえ。外野は黙ってなさい!!」
一葉は今にもキレそうだ。
「付和雷同・従!!」
一葉は両手の人差し指を垂直に合わせ、雷の弾を放った。
「なんじゃこりゃ」
雷の弾は翠玲の周りをぐるぐる回っている。
「完成させるのに二ヶ月かかったんだから!!」
「何がしたいのかよくわからんが…ダア!!」
翠玲はライオンの幻影に殴りかかった。
「このライオンをぶっ飛ばすしかないでしょ」
翠玲は超高速な水のパンチをライオンの幻影に食らわせた。ライオンの幻影は形が崩れてきた。
「無鉄砲もほどほどにね。ワカメさん」
ライオンの幻影は急に震えだし、爆発した。
「グアッ!!!」
翠玲は倒れ込んだ。
「だめだ!!水と雷だと相性が悪すぎる!!」
フーリは試合を止めに入ろうとしたが、結界にはじかれた。
「まああのワカメがあのままくたばるわけないだろ」
「その言葉、信じて大丈夫ですかね…」
フーリは翠玲の命が心配になった。
「ここできいてくるの。付和雷同・発!!」
翠玲の周りをまわっていた雷の弾がさらにぐるぐる回り始めた。
「この弾はねえ。体を強化すればするだけ威力が上がる、死神」
翠玲は一向に起きる様子がない。
「もう終わりにしてくれ!」
フーリはもう我慢の限界だった。
「獅子召喚」
倒れ込む翠玲に無情にも雷のライオンが突進していく。
「ワカメーーーーーー!!!!!!!」
ライオンが翠玲にぶつかると思った、その瞬間だった。翠玲の口が小さく動いた。
「乱水雨拳・時雨」
ライオンと一葉は翠玲を見失った。
「どこいったの?!」
「…人間の集中力は、うまくいっている時がいちばん弱いんだよ」
一葉は右から急に現れた翠玲に見事な右アッパーを食らわせられた。その時、翠玲は雷の弾のダメージを受けた。そして膝をついて立ち上がった。
「フーリ君、俺のこと見直した?」
いつもの頼りないワカメではなかった。
この小説を開いてくれてありがとうございました。今後も不定期で連載していくのでよかったらまた遊びに来てください!
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