転移先決定
恐るべし日本サブカルチャー
神々の間で話し合いが行われたようである。
神々は力の差はあれど、基本同格だ。ただ担当世界の管理上、如何しても階層は必要になる。力の差も国や地域を代表するような神なら空間を管理する神と遜色ない。
管理するのが、空間か地上かという違いでしかなかった。
天照大御神様の「地続きは面倒」という発言が重視され、日本は島として転移する。
「神々と共に別の世界線の日本を見たけれど、とんでもないんだよ」
「何それ詳しく」
「擬人化の嵐」
「へ?」
「船も飛行機も戦車でさえも擬人化、付喪神化」
「ほへ~」
「さらに現実ではこんなもの成立しないよねと言う、巨大二足歩行ロボットの群れ」
「はあー?」
「素晴らしかったのが、「ガジラ」」
「なにそれ」
「映画という映像作品なのだが、「八人の侍」も良かった。「喜びも悲しみも永遠に共に」は名作です。歌は最高でした」
「あんたなに視察に行ってるの」
「聞けよ。「機動警察パトセイバー」「クラムシェル機動隊」「KIARA」「けものの姫」良かったぞ。「おとなりのトトロ」でほっとするんだ」
「待って、待って。そんなに良かったの」
「見れば分かる」
・・・ただいま視聴中・・・
・・・ただいま視聴中・・・
・・・ただいま視聴中・・・
・・・ただいま視聴中・・・
・・・ただいま視聴中・・・
・・・ただいま視聴中・・・
・・・まだ視聴中・・・
「キャー♩、月に代わってお仕置きするわよー☆」
「エグ、エグ、うう、○ロ、パトラッシュ。あなたたちはこちらに来るべきよ」
「そ~りゃ、お仕置きだがや~」
「友よ」
「明日のために今の屈辱に耐えるんだ、それが男だ」
「これが若さというものか」
「○分、不器用ですから」
「一番星○つけた」
「パラパー パラパパパパー パララー ジャジャジャーン」
「たて!○つんだジョー!」
「見なよ、とっつぁんの背中が泣いてるぜ」
「この紋所が○に入らぬか。エエィ、控えおろー」
「成敗」
「また、つまらぬ物を切ってしまった」
「目が、目が~」
「動け、動け、動け、動け、動け、動いてよ」
「勝ったな」
「ああ」
「ターゲットスコープ・オープン、○影クロスゲージ明度20」
「おまえはすでにタヒんでいる」
「ボールは友」
「たっちゃん」
「ヤック・○・カルチャー」
見えざる者達は確実に汚染されていった。
「やはりこの国の未来を潰すわけにはいかない」
「いや、全部の国そうなんですけど」
「貴様、これらの魅力ある作品が世に出なくとも良いのか!」
スッパーン 張り扇が響いた。
「おバカ、なに興奮してるのよ。落ち着きなさい。分岐した世界のことでしょ。この国が今から辿る道で同じになるとは思えないんだけれど」
「しかしだな」
張り扇が動く。
「お嬢様、何なりとお申し付けください」
「早!でもいいわ。そう言えばまだ聞いていないけれど、神々の反応はどうだったの?」
「地球の神々は知っていたので、今更かという反応でした。他の神々は、地球の神々になぜ教えてくれなかったと苦情を言っていました」
「そんなに?」
「そんなにです」
「神々も魅了する。恐ろしきかな地球。いや、日本か」
神々の空間
「あの車格好いいな」
「あの仕掛けが良い。車名は何だ?」
「アストン・マーチンか?」
「俺は「二度死ぬ」の白い奴も良いな」
「運転手とお嬢様の乗る高級車も良いぞ。フロントグリルから機関銃がな」
「俺の世界でNCA-1701Zでも作らせるかな」
「やっぱ、可変翼は良いな」
「思兼殿、是非このドラマを我に」
「いえ、そんな奴後回しでかまいませぬ。わたくしにこのアニメを」
勘弁してくれ。思兼神は思う。俺はサーバーじゃないんだぞ。
「思兼、いいじゃない。減る物でもないし」
「天照様、お気楽ですな」
「太陽神がお気楽でなければ、世が暗くなってしまうわ」
「しかし、こう忙しいと」
「道真でも呼んで手伝わせれば」
「おお、そうですな。早速呼ぶとしましょう」
「豊受姫様、このスイーツは良いですね。是非持ち帰りたいのですが、よろしいでしょうか」
「ええ、かまいませんとも。作り方もお教えしましょうか?」
「是非お願いします。うちの厨房担当に渡します。これで食べ放題ですね」
日本の神々は忙しかった。
そんな中、どの世界のどの地点に転移させるか、議論は続いていた。
「だから、天照大御神は、地続きは面倒だと申し上げている」
「なぜいやなのですか。移動が楽で良いではないですか」
「こちらから楽と言うことは逆も真なり。向こうからも楽だ」
「なぜ嫌がるのですか」
「それはだな。外敵の侵入が面倒だからだ」
「はあ?」
「面倒?」
「そんな理由で」
「悪いですか」
「いや、なんというか、皆さん移動が楽が良いと言われますが」
「安全第一、心に緑十字」
「はあ」
「日本は800年ほど前に大陸から侵攻されてな、それ以来、地続きが嫌になったようだ」
「しかし、便利ですぞ」
「止めてくれ、それ以上強く推されると天照様が引きこもってしまう」
「引きこもる?」
「そう、前科はある。またやらないとは言い切れない」
「太陽神が引きこもるとは」
「どうなりました」
「世の中暗闇」
「どうやって出てきてもらいました?」
「宴会をやって、天照様をハブにした」
「ハブにした?」
「そう、天照様が参加できない宴会を、天照様が引きこもっている岩戸の前でやった。盛大にな」
「出てきたんですか」
「出てきたんだな。寂しくなって」
スッパーン 張り扇がきつい
「天照様」
「寂しくなったからではない、気になったからだ」
「はいはい、そういうことにしておきましょう」
そうしていくつかの世界が候補に残った。
「ではここでどうでしょうか」
「ふむ、この世界は」
「どないだす?」
「うお!いきなり変な方言もどきでしゃべらないでください」
「すんまへんな」
「まだやってるよ」
「どうでっしゃろ」
「もういいって」
「ほうこれでいいと」
「違う、そういう意味では「はい、決定。ポチッとな」な・・」
「おいいい」
いい加減疲れてきた担当神は、そうだ「いい」と言わせれば良いのだ。よし、お笑いを参考にしよう。まさかこちらが使うとは思っていないだろう。
「非道いな」
「もう面倒くさくなって」
「決められてしまったから、仕方ない。これで良しとしよう」
「ありがとうございます。その世界の神と代わります」
「代わりました。転移と聞いて楽しみです」
「後は少しくらい追加はいいよね」
「追加と多少の加工くらいでしたら」
「ここの島をデカくして、ここに島を作って、この島もデカくしよう」
「ああああ」
「如何したの。良いでしょ、俺のセンス」
「なんだかな」
「ここの海だけどどういう感じの海?」
「西にデカい島があるじゃないですか。その海岸沿いにかなり強い暖流があるんです」
「そこに日本を放り込んだか」
「多分、元の日本海やオホーツク海と変わりませんよ。ただ、東シナ海相当の海が平均水深400メートルくらいありますし対馬の北側も水深500メートルはあります。対馬海峡西水道が広くて深いので海水の流入量は多いですね。日本海になる海は平均水深2000メートルです。最深4500メートルです。それと暖流が強いです。南から対馬海流以上の暖流が来ます。津軽海峡と宗谷海峡はかなり潮の流れが強くなりますね」
「日本海側が少し暖かくなる?」
「島根・鳥取辺りは、冬でも暖流の影響で暖かい可能性もあります。男鹿半島、いや、津軽海峡くらいまで影響は有るかもしれません。でもそのデカい島上空は北からかなり冷たい気流が流れています。ドカ雪は変わらない可能性も」
「ベーリング海は」
「地球と同じですね。厳しい海です。カムチャッカから三陸沖まではすごい漁場になる可能性もあります」
「いいね」
「日本海に大和碓くらいの奴を3個くらい作ってしまおう.最高でも海面下40メートルにしておけば大型船でも問題無いだろう。40メートルなら陽光も届くから最高の漁場になりそうだ」
「ユーコン川とアムール川から養分の多い冷たい水が流れ込みます。良い漁場ですね」
「沖縄は自給自足でいけるように大きくしたよ。四国より大きいぞ」
「このデカい新たに作った島は?」
「資源島として作った」
「ひょっとして?」
「もらった資源の4割がある」
「残りは」
「台湾に2割、デカくした島々に3割分振り分けで、残りは本土だ」
「じゃあ絶対に台湾と新しい島は取られたくないですね」
「いわゆる本土だけでも50年くらいは持つけどな、今の使用量なら」
「資源は均等に?」
「いや、かなり偏らせた。だって均等なんておかしいだろ」
「こんな島用意した段階でおかしいでしょうに」
「気にしたら長生きできないよ」
「後5万年くらいありますよ。世代交代まで」
「おお、先輩でしたか。失礼な口の利き方で申し訳ありません」
「気にしない、気にしない」
「ありがとうございます」
「こちらも良い暇つぶしが出来てうれしいよ」
「忙しそうですが」
「ルーチンワークが忙しいだけで、本来中級神でも簡単にできることだよ。暇すぎてやらせてもらっているだけさ。半分寝ててもこなせる程度の物ばかりだよ」
「日本の神々で暇そうなのを見つけて手伝わせましょうか。お世話になるわけですし」
「そうしてくれるとありがたいな。こちらの神にも良い刺激になれば良い」
「転移まであと一ヶ月です。そちらの世界の勉強をさせて欲しいのですが、どなたか教え役になって頂けないでしょうか」
「それだったら、何人か見繕っておくよ」
「ありがとうございます」
「教師役のエイドリアンです。風を担当しています」
「同じくシンドラーです。土を担当しています」
「同じくサラサです。水を担当しています」
「同じチョウヒです。火を担当しています」
「質問、桃園の誓「あの張飛とは違うから」い」
「そうでしたか」
「他には」
・・・・・・
「無いのかよ。俺だけかよ」
「いえちょっと名前に聞き覚えがありまして」
「日本と接触して[三国志演義]読んだ奴は、みんなそう言うよ」
「なんか申し訳ない」
「もう慣れた」
「風水地火ですか。この世界ではそれだけなのですか?」
「いえ、代表的な存在として教師役に選ばれました」
「他にもあるのですね」
「他にはですね、光・闇・時空・雷・氷、変わったところで龍があります」
「龍ですか」
「龍は属性と言うよりも、個人が生まれついて持っている物だけで後天的に持つことは出来ません」
「まさか龍に変化できる?」
「程度によりますよ。肌にうろこ程度から完全に変身するまで」
「ここの神様何考えてんの」
「面白そうだったから、と聞いています」




