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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
10.富士の巻狩り編
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1191年6月 時政の誤算

駿河国・守護館


北条時政は富士で御家人の混乱を整理してきた後、一人で怒りをぶちまけていた。


「奥州の痩せ狐にまんまと使われたわ!」


富士の巻狩りを失敗させ、あわよくば頼朝も殺せればいい。それが時政の計画だった。

もし、頼朝が死ねば、嫡男の頼家はまだ九歳だ。戦どころではなくなり、幕府の運営も重臣たちによる合議制になるしかない。時政としては、未亡人となった政子と北朝の力を利用しながら、一人ずつ政敵を葬っていくつもりだった。


「な~にが、見返りを求めない、じゃ! どさくさに紛れて攻めてきおって。火事場泥棒め!」


北朝軍が攻めてきたことにより時政の計画が狂い始めた。時政は駿河国の守護として巻狩りの混乱の収拾をせねばならず、また西国豪族は裏切りの危険性があるため、帰国させる段取りを任されたのだ。


「どさくさと言えば梶原と比企もじゃ!」


時政が駿河国で寝ずに働いている間に、頼家の乳母夫で後見役の梶原景時と比企能員が、今は緊急事態として合議制を取らず、九歳の頼家を補佐する形で両名が御家人の指揮を採ると決めたのだ。


覆そうにも頼りの政子は頼朝が倒れてからは、泣き続けていて使い物にならなかった。


「北朝に勝てば比企と梶原が強くなり、負ければ幕府の地盤である東国を失う。どっちに転んでも損しかないわ! 忌々しい!」


部屋の外から家人が声を掛けてきた。


「お館様にお会いしたいという者が門の前に来ております」


「今はそれどころではない。追い返せ」


「琴の占い師と言えばわかると――」


「何じゃと! それを早く言わんか!」


時政は自ら門まで出迎えに行った。



「流石は凄腕の占い師じゃ。わしが占いを欲していることまでわかるとは――あん? 誰じゃ、おぬしは?」


「琴の占い師とは知り合いでね。名を使わせてもらった」


男は編み笠を上げて顔を見せた。


「チッ、優介か。早く入れ! 人に見らたら、謀反と疑われる」


部屋に入ると優介は編み笠を取った。


「鎌倉に潜入したかったんだけど、隙が無くてね。駿河に時政殿がいてくれ良かった」


「良かぁないわ! わしは忙しい。手短に言え」


「北条家の天下取りに力を貸したい」


「ふん! 痩せ狐といい、おぬしといい。奥州者は甘言ばかりじゃ」


「泰衡と繋がっていたのか?」


「わしは人が良いからのう。悪いやつばかり寄ってくるのじゃ」


「毒を盛るような人間が良く言うよ」


「ん~? 何のことじゃ?」


時政はポカンとした顔をした。


「芝居が上手いね。人を見抜く天才の頼朝でも騙されそうだ。けど、俺は少しばかり占いができる。時政殿は源頼家を傀儡にし、幕府の中心を重臣による合議制に移そうと考えている。その合議制を支配すれば実質、天下を獲ることになるからな」


「――外れじゃな。おぬしの腕は琴の占い師におよばぬ」


「そんなことはない。北朝のせいで当てが外れたと思っているだろうが、まだ挽回する方法がある。時政殿の発想を一回り大きくすればいい」


「何じゃと?」


「幕府の合議制に北朝の人間を参加させればいい。そうすれば戦わずして奥州を吸収できる。もちろん実力相当の人数を合議に参加させなくてはいけないから、合議で主導権を取ることは難しくなるが――」


「戦ではなく謀略で天下を争うというわけじゃな」


「得意だろう?」


「乗った! じゃがどうやって戦を止める? 北朝軍を辞めたおぬしが」


「何とかする。だから、時政殿は鎌倉へ急ぎ、重臣を説得してくれ」


――――――――――――――――――――

鎌倉周辺


北朝軍十万は鎌倉に攻め続けていたが、鎌倉への侵攻ルートは「切り落とし」と言われる守りに有利な隘路が多く。大軍の利を生かせないままでいた。


前線指揮を採っていた平教経が本陣に戻ってくる。


「敵は味方の半分程度だが、守り方を心得ている。何より戦意が高い」


「なぜだ? 頼朝が倒れて動揺しているはずだ」


「はじめはそうだった。だが、この一戦で負けたら所領が無くなる、その恐怖で幕府がまとまりつつある」


「一所懸命というやつか。家人たちは奥州合戦で所領を失った下野国や常陸国の豪族の悲哀を間近で見ていたからな。力攻めではなく、調略で行くべきだったか……。だが、もう遅い。教経、鎌倉攻めを薦めてきたのは、そなただ。鎌倉を落とせぬとは言わせぬぞ」


「三日で落としてみせる――たが、幕府軍は死兵になっている。犠牲は覚悟してくれ」


「無論だ。私は優介とは違う。どれぐらい死なせることになる?」


「少なくとも北朝軍の半分。五万は死ぬ」


「それほどまで……」


「そうか? 源平合戦や養和の大飢饉ではもっと死んだ。大したことはない」


「わかった……。戦に戻ってくれ……」


泰衡は「この戦馬鹿が!」と、怒鳴りたい衝動を必死で抑えた。前の奥州合戦では北朝軍の犠牲はわずかだったはずだ。

しかし、泰衡自身が総大将として指揮を採った途端、この有様である。大戦の経験の無い泰衡は、五万の命という重みに立っているのも苦しくなってきた。


「奥州の民がすり潰されるように死んでいく。亡き父上は許してくださるだろうか――」


教経が血相を変えて本陣に戻ってきた。


「泰衡! 大変だ! 浄土宗徒が戦場から離れて行っている」


「どういうことだ!」


「優介の仕業だ。やつが戦いを止めろと演説している!」


「おのれ、優介! いつも私の邪魔をする!」


泰衡は本陣を飛び出すと、優介の元へ向かった。

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