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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
10.富士の巻狩り編
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1191年6月 黒幕動く

駿河国・日本海沖


奥州へ向かう船に北朝の人間が多く乗っていたので、優介はなぜいるのかを問いただした。すると、山伏の姿をした男がうれしそうに言った。


「昨夜、我らも行商人となり、軍営全体に毒の面をばら撒いたのです。幕府軍の死者は万を超えるでしょう」


「なんてことを……。なぜ俺に黙っていた!」


「そ、それは藤原様が、優介殿の刺客の邪魔にならぬよう、密かに手伝えと」


「やってくれたな! 泰衡!」


山伏は何で優介が怒っているのかがわからず戸惑っていた。


―――――――――――――――――――――

奥州平泉・伽羅御所


優介たちが伽羅御所に戻ると、深手を負っていた曾我五郎は安堵した。


「ハァ、ハァ……。やっと医者に診てもらえる」


「泰衡! 泰衡はどこだ!」


「あのう、医者は……」


優介は泰衡を探し回ったが、呼べど叫べどどこにもいない。それどころか伽羅御所の雰囲気もいつも違っていた。


「誰もいないよー」


庭から大姫の声が聞こえた。


「大姫。みんな、どこに行ったんだ? って、おい! なぜ鎧を着けている」


「姫も戦に行くのー。木曽の女だもん」


「そうか。病弱だったのに、すっかり元気になって。俺もうれしいよ――じゃない! 戦だって?」


「優介、さっきからうるさいよー。泰衡が帝やみんなを連れて父さまの国をやっつけに行ったの」


「あの野郎! 大姫、その馬を俺に貸せ!」


「やだー、姫の馬だもん」


「だったら、力づくで!」


優介が馬に近づこうとすると、曾我五郎が優介の袖を怖ろしいほどの力で掴んできた。


「頼む、医者を……」


「あああ! もう!」


「じゃあねー、優介」


大姫は馬に鞭を当てると伽羅御所を出て行った。


―――――――――――――――――――――


医者に五郎を治療してもらっている間、優介は心の中で怒っていた。


――俺が戦を止めたいのを知っていながら、泰衡は逆に利用した。富士で幕府軍が混乱するのを見計らっての進軍。北朝軍は勝ち続けるだろう。だが、幕府軍が立て直した後は大軍同士の戦になる。


「人が大勢死ぬぞ!」


「お静かに」


「そんな大声出されたら、驚いてオイラがおっ死んじまうよ」


「すまん……」


流為がやってきて、優介を外に呼び出した。


「……伝令に会って」


回廊に出て行くと、庭に山伏姿の男が跪いていた。


「なぜ俺に?」


「火急の報告ですが、どなたもいらっしゃらないので、どうしたら良いものかと……」


「わかった。聞こう」


「富士の巻狩りの最中、頼朝は夜襲を受けました――」


「知っている。当事者だ」


「続きがございます。夜襲を退けた頼朝は、安堵して杯を取りました。そして、酒を飲んだ後――倒れました。杯に毒が塗られたと噂されております」


「本当か!」


優介や曾我兄弟には毒を仕込む余裕は無かった。

それができるのは頼朝の側に近づける者だけだ。


「だとすれば怪しいのは時政だ」


頼朝が死んだのなら、幕府軍は戦どころじゃなくなる。

泰衡もいずれ頼朝の死を知るだろう。そうなったら――。


「鎌倉が危ない!」


優介は五郎のいる部屋に戻ると、五郎は包帯でグルグル巻きにされていた。

薬箱を片付けている医者に聞く。


「治療は終わったんだな」


「はい。後はゆっくりと養生して――」


「なら行けるな。五郎、立て」


「嘘だろ!」


「人手が足りない。男なら根性見せろ」


「根性って……、師匠もあんたも狂ってる!」


―――――――――――――――――――――

奥州・日本海沖


「ありえない……。今日、平泉に着いたはずなのに、オイラ、また船に乗ってるよ……」


「そうだ。ありえないんだ。頼朝が死ぬなんて」


「ハァ!? 殺すために襲ったんだろ? 意味わかんないよ」


優介は歴史には修正力があると考えていた。だが、年々、史実との幅が大きくなってきている。本来なら富士の巻狩りの襲撃は失敗し、頼朝の死は八年後に訪れるはずだった。


「未来は変えられる。素晴らしいことだ。けど、俺やキララにとっては危険なことなのかもしれない」


優介は人差し指を五郎に魅せた。


「あ、あれ。優兄ぃの指が透けて見える。どうなってんだ、これ?――あっ、元に戻った! 幻術か? オイラにも教えてよ」


「違う。タイムスリッパーの呪いさ」


「また、意味わかんないこと言ってらあ。会話になんないよ」


五郎は呆れると、甲板に寝っ転がった。

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