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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
9.大姫入内編
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1190年12月 船出

平安京・白粉御殿


キララと静御前が話している後ろで、侍女のアユとナミエがせっせと行李を運んでいる。


「優介も奥州に行くのね」


「大姫が奥州に慣れるまでは向こうにいるって言ってた。吉次さんに甥っ子を見せたり、北朝の政を確認したり、やることもいろいろあるんじゃない?」


「大姫の一件で、関白様の失脚も無くなったものね」


大姫呪詛事件は朝廷に大きな衝撃を与え、朝廷内部のパワーバランスも変化させた。

頼朝の後ろ盾を受け、朝廷の多数派を形成しかけていた土御門通親は、大姫入内を薦めたことを公卿たちから批判されて支持を失いかけていた。その後、関白九条兼実が大姫の呪詛は誤解であることを証明して、頼朝と通親に恩を売る形になったのだ。


「とはいえ、関白とおじゃる丸の力関係は五分五分ってとこよ。大姫の問題の前に、ちゃっかり、自分の娘の在子を入内させてるしね。勝負はいったんお預けよ」


「次の勝負は?」


九条任子(トーコ)ちゃんとクネクネ女(土御門在子)の、どちらが皇子を産むかってとこだけど――今はそれどころじゃない。見てよ、これ!」


白粉御殿の壁を埋め尽くすように行李が積まれていた。


「在庫の山よ。結局、頼朝上洛で一番損したのってあたしたちじゃん。ガラガラのステージの後、シズ☆キラはオワコンって言われ出して、売り上げは半減。頭が痛いわ~」


「ねえ、キララ。そろそろシズ☆キラも潮時じゃないかしら?」


「え!? ちょっと、どうしたのよ?」


「一年前から定家に婚姻の申し込みをされていて……。わたくしももう二十四でしょ」


「結婚した後も続けられるじゃん。テイカーが反対してるの?」


「違うわ。夫の出世を支えたいの。赤ちゃんも欲しいわ」


「マジか~」


キララは在庫の山を見て頭を抱えた。シズ☆キラ解散となれば、今までのようにイケイケの商売はできない。特に美容品販売はビジュアル担当の静御前の力が大きかった。男役のキララではカバーできそうにない。


「ごめんね」


「ううん、シズカの幸せを邪魔するつもりはないわ。よし、解散ライブをしよう!」


「キララ、ありがとう!――すぐに認めてくれるなんて思わなかったわ」


「あたしら仲間じゃん! そうでしょ?」


「グスッ……、そうね、仲間よね」


静御前はうれしさで涙を流した。


――――――――――――――――――――

平安京郊外・特別ステージ


一カ月後、シズ☆キラの解散ライブが行われた。

人気は落ちてきたとはいえ、一世風靡した二人である。観客は八割方は入っていた。ライブも大盛り上がりで、終盤では静御前は感極まって泣いていた。


キララが最後の挨拶をする。


「シズ☆キラは今日をもって解散します。でも、それは日本でのことです!」


観客がどういうことだと騒めく。


「シズ☆キラは世界の舞台で勝負します!」


「「「「おおおおお!!!」」」」


会場を大きなどよめきが包み、ライブが終わった後も観客たちは興奮していた。


――――――――――――――――――――

平安京郊外・特別ステージ 楽屋


「ライブも盛り上がったし、在庫の山も解散グッズとしてさばけたし、良かったわ~。大成功よ」


楽屋に戻ると静御前はキララに詰め寄った。藤原定家や九条良経も側にいる。


「一人で悦に入ってないで説明してくれるかしら? 世界ってどういうこと!」


「落ちた人気を取り戻すには、観客をアッと驚かさないとね。いい、シズカ。あたしたちは南宋に行ってバズって、世界的なスターになって凱旋するの」


「わたくしと定家の婚姻はどうなるの!」


「そうだ! 南宋に行けば数年は戻ってこれない! 絶対に認めんぞ!」


「何を言ってるの、テイカー。あなたも行くのよ」


「は?」


定家は髪をくしゃくしゃにしている手を止めた。


「良経にお願いして、テイカーの南宋留学を認めてもらったわ。テイカーは今から中国語を猛勉強してね。あたしたちの通訳をしなきゃいけないんだから」


「私に秘密で決めたのか!」


良経が気まずそうに言う。


「すまない。キララがいきなり言って喜ばそうというから、つい――定家、南宋で政を学べば、戻ってきたときに必ず出世の役に立つ。これは、悪い話ではない」


「そうそう、シズカも新婚旅行が南宋なんて最高じゃん」


「でも、異国の地なんて、わたくし――」


「あたしら仲間じゃん! そうでしょ?」


「グスッ……、そうね、仲間よね……」


静御前は不安で涙を流した。


――――――――――――――――――――

摂津国・大輪田泊


キララは侍女から会長代理に昇進させたアユに言い聞かせる。


「三年で戻ってくる。それまで商いをお願い。あなたたちならできる。何かあったら九条家を頼って。良経もお願いね」


「ああ。任せてくれ。キララの商いを絶対に潰させはしない」


「ありがとう。良経。いつもわがままいってゴメン」



奥州と南宋との貿易船にキララ、静御前、藤原定家が乗り込むと、良経やアユに手を振った。


「絶対、バズって帰ってくるからね!」


「南宋の知識を持って帰った暁には、公卿への推挙を!」


「違う水で赤ちゃんできるかしら……」


三者三様の思いを乗せ、船が出航した。

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