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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
9.大姫入内編
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1190年11月 入内阻止

平安京郊外・優介の家


出かける準備をしている優介を赤子を抱いた流為が止めていた。


「……頼朝、危険」


「心配いらない。キララたちや奥州も力になってくれる」


優介は赤子の鼻をちょんとついた。


「じゃあ、行ってくる。諭吉、泣いて母さんを困らせるなよ」


―――――――――――――――――――――

平安京・京都守護館


頼朝が宿所にしている館の前で優介が名乗ると、たちまち武士たちが殺気だった。それを安達藤九郎が制止する。


「待て! 手を出すなあ。にっくき男だが今日は兄貴の客人だあ」


「藤九郎、俺が送った大エゾシカの骨兜、似合ってるじゃないか」


「感謝しねえぞ。熊の骨兜を割ったのはおめえだからな。兄貴が待ってる。ついてこい」



藤九郎に案内された部屋には、頼朝と大江広元が座っていた。


「そなたは物忘れがひどいようだな。和議が成ったとはいえ、白河で余を殺そうとした男が、よく顔を出せたものだ」


「お互い様だ。俺も伊豆では殺されかけた。だけど、水に流そうじゃないか。今日はめでたい話を持ってきた。大姫を安徳帝の后に迎えたい」


広元が膝を進める。


「優介殿、大姫様は後鳥羽帝に入内することが内定しています」


「大姫は嫌がっている」


「帝への入内は政。好悪より優先すべきものです」


「後鳥羽帝にはすでに九条任子が中宮としていて、さらに土御門在子も入内する。乗り気じゃない大姫が帝の寵を得られると思うか? 皇子を産めると思うか? それに引き換え、安徳帝はまだ后を迎えていない。どちらが帝の男子を産みやすいかは馬鹿でもわかる」


「笑わせる。ていのいい人質ではないか」


「違う。大姫が安徳帝の子を産めば、奥州はお前の子が支配することになる。鎌倉より西を支配するのは嫡男の頼家だ。戦をせずとも、お前の血を受け継ぐ者によって、全国が統治される」


「奥州との戦が無いとは限らぬ」


「仮にそうなったとしよう。奥州が勝てば北朝が南朝を吸収する。そうなれば、統一王朝の帝はお前の子だ」


「奥州が勝つだと? 話にならぬ前提だ」


「なら鎌倉が勝った場合の話をしよう。奥州から安徳帝とお前の孫を手に入れた後、後鳥羽帝から孫に譲位させればいい。奥州が滅ぼせば、お前に逆らえるやつなどいないはずだ」


「――なるほど、悪くない話だ」


「公方様!」


広元を頼朝が手で制した。


「ただし信じられる相手ならだ。そなたは嘘を操る妖怪。とく帰るがよい」


「お前は断ることはできない。今すぐ受けるか、三日後に最悪の状況で受けるか、好きな方を選べ」


「最悪の状況だと? 何を考えている?」


「残念だ。できれば、やりたくはなかった」


「答えろ! 優介!」


「三日後にもう一度来る」


広元が立ち上がる。


「その必要はありません。優介殿には三日後までここに留まっていただきましょう。公方様、この男の好きにさせてはなりません。安達殿はいるか!」



優介は藤九郎に縛られると牢に入れられた。


――――――――――――――――――――


三日後。怒りに震えた頼朝が藤九郎を連れて、優介のいる牢にやってきた。


「やりおったな! 優介!」


「受ける気になったか?」


「大姫に後鳥羽帝を呪詛する祈祷をさせたな!」


「へえ、驚いた。知らないなあ」


「とぼけるな! 今朝、検非違使から知らせがあった。山中に呪詛のための護摩壇を焚き、大姫が祈りをささげていたという。そなたの仕業に決まっている!」


「そんなことかあったのかあ。祈祷と言えば修験者じゃないのか?」


「……検非違使が踏み込んだときは、大姫しかいなかった」


「そうなんだー。けど、これで入内は無くなったな。朝廷も帝を呪う儀式をしていた姫を后に迎え入れるわけにはいかないもんねー。っていうか、大罪だ。これは」


「よくも余の姫を! 藤九郎! こやつを叩き斬れ!」


「おいおい、濡れ衣はやめてくれよ。俺はずっとここに閉じ込められてたんだぞ。冤罪もはなはだしい。それに俺を殺すと姫の行き場所が無くなるぞ。女性は死罪や流罪にはならないが、徒罪として投獄は免れない。大切な姫をそんな目に会わせたいのか?」


「おのれえええ!」


「大輪田泊に大姫を迎え入れるための鉄船を泊めている。急いだほうがいい」


「藤九郎おおお!!」


「優介、覚悟しな!」


藤九郎が太刀を振りかぶった。


「違う! 大輪田泊まで大姫を護衛しろ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

一週間前。平安京・白粉御殿


優介が政子と大姫に安徳帝への入内計画を話すと、大姫はかぶりを振った。


「優介、姫は後鳥羽帝が嫌なんじゃない! 后が嫌なの!」


「わかってるって。形だけのことだ。奥州へ行ったら好きにしていい」


「ほんと!」


「ただし、鎌倉のようなわがままはできない。連れて行く侍女も仲の良い者、数名だけだ」


「え~」


「大姫は清水義高の許嫁だったんだろ。木曽の女は戦うし馬にも乗る。義高の母親の巴御前なんて男の武士をバンバン倒してたんだから。一人で何もできない弱っちい身体だと死んだ義高に笑われるぞ」


「そうね! 木曽の嫁にふさわしくなんなきゃ」


「優介どの、姫は身体が丈夫では無いのです。あまり無理は……」


「名目だけでも后は后です。鎌倉にいる侍医に劣らない者をつけます。信用してください」


「優介どのが誠実なのはよくわかっていますが……」


――ストレスが無い生活と、適度な運動。これで大姫が健康になるかどうか様子を見るつもりだ。



「呪詛の儀式はやらなければならないのですか?」


「頼朝、いや公方様が断ったらの話です」


「姫もやだよ~。怖いよ~」


「呪いは返ってくるともいいます。どうか、それだけは――」


「それっぽくするだけです。キララが舞台作りをお願いしている工人に想像で作ってもらい。修験者もいた風にするだけで実際には祈祷はしません。姫はそこで思いをつぶやき続けてればいい」


「後鳥羽帝の后になりたくない、って」


「そう。死んで欲しいとか、病気になれなんて願わなくていい。大姫を見つけた者は、そのつぶやきと儀式の状況で勝手に勘違いしてくれる」


「そんないい加減では見抜かれないかしら?」


「呪詛の儀式は秘法です。俺も知らないし、検非違使なんかじゃわかりませんよ。第一にまず、帝の呪詛という大それたことを、偽物でやるとは思いつかない」


「それはそうですが……」


「姫が奥州に入ったら、関白様を通じて修験者に調べてもらうようにします。そうすれば偽の儀式とわかるでしょう。姫の名誉も回復し、罪も取り下げられますよ」


優介の言葉にようやく政子は愁眉を開き、大姫も納得したのだった。

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