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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
9.大姫入内編
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1190年9月 在子

平安京・白粉御殿


キララと静御前はシズ☆キラ商会の使用人、ドルチとガバナの双子から、土御門家について調べた話を聞いていた。


「ドルガバ兄弟、土御門の娘はどんな子だったの?」


「もうバインバイン! なっ!」

「うん。ボヨンボヨン! ねっ!」


「キララ、この子たちは何を言っているのかしら?」


「巨乳ってことじゃない? 在子は乳オバケだった?」


「「うん!」」


「他には?」


「いい人だったよ。香花もいっぱい買ってくれたし」

「ねー」


キララは幼子のドルガバ兄弟に香花の訪問販売を任せていた。この子たちも貧民窟上がりである。春はジンチョウゲ、夏はクチナシ、秋はキンモクセイの花を山から取ってきて、有力貴族の奥方に売り歩く。儲かりはしないが、女性たちの意見を知るためにやっていた。キララはそれを元に商品開発をしていたのだが、今は諜報としても使っている。


「物見には幼すぎるんじゃない? もう少し大きな子を使ったら?」


「ダメダメ。貴族の奥さんや娘の雑談から普段聞けない情報を得るのが目的なの。ちっちゃい子だからこそ、聞かれても平気と思ってヤバい話までするんじゃん。ねえ、ドルガバ兄弟。土御門屋敷の男たちは、在子をどんな顔で見てた」


「ニヤニヤしてた」

「デレデレしてた」


「ブスでもなさそうね。ナイスバディの美人ってとこかしら」


「あと、ヨーエンって言ってた」


「妖艶ね。エロエロだわ。トーコ(九条任子)ちゃんの強敵になりそうね」



頼朝の初上洛が近づくにつれ、朝廷では大姫と土御門通親の養女・在子が入内するのではないかという噂が流れていた。


「でも、気が早すぎるんじゃない? 後鳥羽帝はまだ十歳よ」


「二、三年も経てば思春期よ。中学男子なんて猿と同じじゃん。セクシーお姉さんが誘ったらイチコロよ」


「でも、九条様が反対しても難しいのでしょう? だから、キララにこんな依頼を――」


静御前は「公方上洛記念ライブ」と書かれた紙を指す。

キララが嫌々、作った資料だ。


「まったくやんなっちゃう。頼朝の心が九条家から離れないように楽しませてくれなんて。頼朝はあたしを殺そうとした男だよ」


「仕方ないわ。反対勢力が増えているもの。これで鎌倉に見放されたら、関白派の貴族は雪崩を打って土御門派に流れてしまうわ。関白様も必死なのよ」


「必死なら自分が動けっちゅーの! あたしがアドバイスしても、いっつも――」


「『なぜこうなった。解せぬ。解せぬ』でしょ」


静御前は兼実の声真似をした。


「関白が頭を下げれば味方になる貴族もいるんだって! でも、藤原摂関家は帝にしか頭を下げないなんて言ってさ。どーかと思うよ、あの態度。スポンサーじゃなかったら、あたしも九条家なんて願い下げよ」


「――関白が失脚したら、法然上人の立場も危うくなるわ」


「うん。だからやるしかない。でも、頼朝の好みって言ってもねえ。前にあたしとシズカが鶴岡八幡宮で舞ったときは、頼朝をキレさせてるし」


「八幡太郎義家のお題はどうかしら? 頼朝の先祖が奥州征伐した話だし、喜ぶんじゃなくって」


「奥州征伐かあ。お兄ちゃんがボコられている気がして嫌だなあ……」


二人がライブの内容について悩んでいると、ドルガバ兄弟が窓の外を見て言った。


「牛車が来た!」「土御門の紋!」


「何ですって? キララどうする?」


「あたしの敵よ。ドルチ、塩撒いて追い返してきて――いや、待って。ガバナ、男装用の服を用意して」


牛車から土御門通親が降りた後に続いて、巨乳の女が降りようとしていた。


――――――――――――――――――――


洋風にあつらえた応接間で、土御門親子とシズ☆キラになった二人はテーブルを挟んで座った。


「土御門卿、どれだけあたしが会おうとしても避けていたのに、今日はどういう風の吹き回し?」


「キラ殿。それは誤解でおじゃる。京の人気者のそなたと会いたくないわけがない。鎌倉公方の上洛を控え、麻呂は人と会うことが多くてな。心ならず、断っていたのでおじゃる」


――言葉が上手い男ね。敵を作ろうとしない。関白にも見習ってほしいぐらい。


ニコニコと話す、通親を見てキララは思った。


「今日はお願いがあってやってきた。上洛記念ライブをやめてほしいでおじゃる。シズ☆キラの歌は激しく人の心を揺さぶる。気の荒い坂東武士一万が興奮して暴れ出したら、京の治安が危うくなるでおじゃる」


「依頼主は関白様です。頼むのならそちらでは?」


「シズ殿の言う通り、何度も説いたでおじゃる。しかし、関白殿は聞き入れようとせぬ。政の司る者とは思えぬ言葉だ。シズ☆キラ殿は九条家と昵懇だが、そろそろ考えた方が良いのではおじゃらぬか?」


「は~ん、それが本当の狙いね。土御門卿、あたしを舐めないでくれる? 九条家は恩人なの。裏切るわけないじゃん。それに――裏切ったら関白に『恩を知らないのは禽獣に他ならない』って言われちゃう」


ニコニコしていた通親の表情が固まると怒りで震え出した。関白に通親が罵られた有名な言葉だったからだ。


――キツイ言葉だよね~。関白の人気が無いのは、口の悪さもあるんだよね。


「――残念でおじゃる。麻呂はここで失礼する」


「お義父様ぁ」


通親が立ち上がると、その袖を隣に座っていた在子が掴んだ。


「ああ、そうでおじゃるな。キラ殿、娘は貴殿に憧れていてな。それで今日は連れて参ったのでおじゃる。ほら、握手してもらいなさい」


「キラ様ぁ~、ずっと好きでしたぁ~」


在子が体をクネクネしながら手を握ってくる。


「え、ええ。ありがと」


「キラ殿、手を握られたからといって、在子に惚れてもらっては困るぞ」


「ハァ?」


「在子はぁ~、構いませんけどぉ~」


「コ、コラ! 在子が一番好きなのは誰でおじゃるか?」


「後鳥羽帝?」


「そうだ! 次に好きなのは?」


「お義父様。うふふ」


「そうでおじゃる。そうでおじゃる。だから、キラ殿。口説いても無駄でおじゃるからな。では失礼」


通親は在子の手を握ると、「帰りは何を食べようか」などと話しながら、白粉御殿から去っていった。

見送った静御前が戻ってくる。


「――変わった親子ね」


「何なのよ! もう!」


キララは椅子を蹴った。

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