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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
8.奥州合戦編
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1189年4月 白河の戦い・前

奥州白河・白河本願寺


物見櫓にいた優介は、遠くの山から狼煙が上がるのを見てガッツポーズをした。


「晴兵衛、教経が勝ったぞ!」


「二万も預けたのです。負けてもらっては困りまする」


安倍晴兵衛はうかれるなと言わんばかりに冷静に答える。

優介は幕府軍五万に対し、奥州軍三万を次のように分けていた。


東海道軍 敵一万に対し、味方二万 大将は平教経

北陸道軍 敵一万に対し、味方八千 大将は藤原国衡、副将に弁慶

大手軍  敵三万に対し、味方二千 大将は優介、副将に安倍晴兵衛


大手軍に対しては浄土宗徒一万を武士に偽装させて、白河本願寺に入れていた。



「幕府軍が後背を襲われるのを恐れて、退いてくれたらいいんだけどね」


「残念ながら逆のようですぞ。山砦に兵を向かわせておりまする」


「あ~、仕掛けがバレちゃうね。今後も使いたかったのになあ」


山砦が一夜でできたのにはわけがある。山砦は簡単な骨組みに紙を貼って作ったハリボテで裏側には何もない。それをあらかじめ置いておき、夜に山砦を隠していた木々を伐採して出現させたのだ。


元ネタは秀吉が小田原征伐のときにやった一夜城で、その簡易版を優介はやった。兵を多く見せるための策で、これなら兵を使わず、木こりに金を渡すだけでいい。


――――――――――――――――――――


山砦には兵が一人もいないため、半日も経たないうちに山砦すべてが破壊された。それでも途中に仕掛けている罠でいくらか損害は与えられたようだった。


「殿、敵が退くどころか、闘志を増しておりまする……」


「マズイな。教経が来るまでに落とす気だ。最低二日は耐えないと――晴兵衛、宗徒を配置につかせろ」


戦国時代の石山本願寺なら数日耐えることなど余裕だろう。そう思い、優介は大きな寺を造った。しかし、鉄砲がない。弓矢も武士しか扱えない。投石とシャベル、竹槍がメイン武器となると防御力は大幅に落ちる。


幕府軍が大量の長梯子を掘をまたぐように土塀にかけ、一斉に渡ってきた。鉤縄を投げて登ってくる武士や、丸太を浮かせて堀を越えてくる武士もいる。寺の周囲でたちまち激戦となった。坂東武士の雄叫びと南無阿弥陀仏の声が白河本願寺を包む。


「流為! 武士団を連れて北へ!」


「……わかった」


優介は櫓から救援の支持を出す。宗徒が大半の白河本願寺では、二千の武士が頼りだった。

土塀を登りきる敵が増えてくる。そうなると坂東武士は強い。宗徒が次々と倒されていった。しかし、南無阿弥陀仏の大合唱が一種の狂信状態を生み、宗徒は退くことはなかった。


「だけど、アウトレンジからの攻撃が痛い」


白河本願寺の堀の外側から強弓を放つ武士が増えてきた。梯子で渡って戦うより、首稼ぎできると思ったのだろう。土塀の上で守っている宗徒が次々と射落とされていった。



日が暮れるころ、ようやく敵の攻撃は収まった。優介は城内を周って味方の死者を確認すると、今日一日で千を超えていた。狂信は死を恐れなくなる分、命を落としやすくなる。


「殿、落ち込まないでくだされ。敵は倍は死んでおりまする」


「それを聞いて喜ぶ俺だと思っているのか。もっと頼朝が退却を考えるような策を練るべきだった……。明日も多くの人が死ぬ」


――――――――――――――――――――


次の日、優介は櫓の上に登ると目の前の景色が変わっていた。


「堀の水が無くなっている……」


「殿、あれをご覧なされ!」


阿武隈川と白河本願寺の堀をつなぐ水路が死体の山で堰き止められていた。


「頼朝め、何てことを!」


「罵るのは後でございまする。敵が押し寄せてきますぞ!」


幕府軍の攻撃は昨日よりも激しくなった。土塀を登りきる敵も増え、敵味方がひしめき合い、同士討ちを恐れて強弓による攻撃も止むほどだった。


「流為、南門に武士たちを集めろ。騎乗して待機していてくれ。後から俺も行く。晴兵衛、俺が打って出たら、宗徒に鎧を捨てて北門から逃げるように命じろ」


「殿! 敵は減ったとはいえ大軍。白河本願寺に籠れば守り切れまする!」


「そうだ。だけど半数は死ぬ!」


「それがなんです。これは戦なのですぞ!」


「死者が多い戦いは負けと同じだ!」


「殿~!」


「晴兵衛、みんなに例の物を渡しておいてくれ。いいな」


「殿、絶対に死んではなりませぬぞ!」



優介は敵の攻撃が変化するのを待っていた。死者で水路を堰き止めた頼朝だ。白河本願寺にも非情さを見せるはず。


すると土塀の上にいる宗徒の上を火矢が飛んでいくのが見えた。優介はこれを待っていた。櫓から降りて南門へ向うと、大声で叫ぶ。


「開門!」


上げていた吊り橋がガラガラと音を立てて倒れる。


「左大臣優介、参る!」



南門の攻撃指揮を採っていたのは、安達藤九郎盛長だった。


「久しぶりだなあ、優介。おめえは馬鹿だ。そんな小勢じゃ、この囲みを抜けることすら――」


「簡単にできるさ。じゃあな、藤九郎」


騎馬隊が藤九郎の横を駆け抜けて行く。


「な! 畜生。オラも馬に乗って――って、持ってきてなあい!」


幕府軍は二万五千。四方を五千ずつで囲み、本陣が五千という配置なのはわかっていた。囲んでいる兵は城攻めのため徒歩だ。騎馬隊二千もあれば、徒歩の五千ぐらいは簡単に引き裂ける。


「弓隊、優介を狙うんだあ!」


火矢が騎馬隊に放たれたが、本来、人を狙うためのものではなく、油を含ませた布を先端に巻いているため、騎馬隊の後方に落ちて野草を燃やすだけだった。


「ダメだあ! 止めろ! 本陣が見えねえ!」


優介が藤九郎の囲みを抜けたとき、白河本願寺の退き鐘が鳴り響いた。

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