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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
7.合戦前夜編
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1188年7月 琴占い

平安京郊外・六波羅 京都守護館


北条時政は京都守護館の一室にキララを連れてくると人払いをした。


「キラと言ったな。わしが天下人の相というのは真か?」


「なんで聞くの? さっきはあんなに怒ってたじゃん」


「怒っている振りじゃ、振り。幕府では粛清の嵐が巻き起こっておる。少しでも野心を持たれたら義父と言えどもこれじゃて」


時政は手刀で首を斬る真似をした。


「だが、気にはなる。わしを見てどう思ったか。話してみよ」


「あたしは琴で占いをするの。やってみようか」


「おお、頼む。ところで女子のような話し方をするのう」


「お、女子ばかりのところで育ったからかな。さあ、占うわよ」


キララは琴を弾きながら、優介に教えてもらった史実を思い出そうとした。しかし、すぐには時政に関係する事柄が浮かばなかった。



「まだか。早う申せ」


「み、見える! 見えるよ~。あなたは若い奥さんを愛している」


「うむ」


「その奥さんはわがままでしょ」


「そこがまた可愛いのじゃ。じゃが、これが占いか? 鎌倉にいる者なら、わしの愛妻ぶりは大抵は知っておる」


「えーと、見える。見えるよ~。女難の相もあるわ。身に覚えがない?」


「おお! 政子に静御前にキララ。鎌倉では女子に関わると碌なことが無かった。当たっておる。当たっておるぞ!」


「でしょ! でしょ! だから天下人の相も間違いないわ」


「じゃがのう。わしには野心などないのだ。できれば、大倉御所に関わらず隠居して、妻と悠々自適に過ごしたいと思っておる。そんな男が天下を取るか?」


キララは再び歴史を思い出す。細かいことでもいい時政の気が引けるようなことがないか。


「あっ!」


「どうした! 何か見えたのか?」


「見える。見えるよ~。奥さんは妊娠しているわ」


「真か! もう子は出来ないものと諦めていたが……」


「男の子よ」


「なんと! なんと! 天下取りよりもよほど嬉しい。おお! 嬉しさで我が身が震えておる。キラよ、六波羅で歌うことを許す。幸せを告げてくれた礼じゃ」


――――――――――――――――――――

平安京・九条兼実邸


静御前は毎日のように九条良経の元へ通い詰めていた。表向きは定家の恋歌を受取ることだが、それは二の次で本当の目的は九条良経と会うためだ。


「キララが六波羅へ行ったと聞きましたが無事ですか?」


「無事どころか時政を手玉に取ったって喜んでいましたわ」


「凄い。彼女は何でも己でやろうとする。僕も見習いたいものだ」


「無謀なだけです。真似すれば良経様が危険にさらされますわ。御国のための大事なお身体ですのに」


「静御前は優しいですね。でも、僕は国や民のために何もしていない。朝議でも父上のすることを黙って見ているだけ。今は和歌や書を学ぶことすらむなしい……」


「そう、お気を落とさずに。将来は関白として政を行うことが約束されているのですから」


静御前が慰めても良経の気は沈んだままだった。良経が気晴らしに外に出ようとすると、静御前もいっしょについていこうとした。


「静御前は定家の歌を取りにきたのでしょう? 定家が怒りますよ」


静御前は良経を見送ると、急いで定家がいる部屋に入った。


「恋歌はまだ? 早く詠みなさい」


「恋歌は急き立てられて詠むものじゃない。心から湧き出る慕情を詠むのだ。借金のように急き立てられては慕情もわかぬ」


「それなら簡単よ。定家、わたくしをまっすぐ見て」


静御前は優しく微笑む。定家は改めて見る静御前の美しさに息を飲んだ。


「慕情が湧いたでしょ?」


「あ、ああ……。何首でも詠めそうだ」


――――――――――――――――――――


定家が詠んだ恋歌を受取ると、静御前は足早に館を出て行った。


「おい、急いでどこへ行くのだ」


「良経様に会いに行くの。場所はわかっているわ」


「私も行こう。女子の一人歩きは危険だ」


「――好きにしたら」


そう言った静御前だったが、鎌倉武士の数が増えてくると、定家を連れてきて良かったと思い直した。琴の音が近づいてくる。


「あれは、キララもいるな」


「シッ! 隠れて」


「ん? 追ってきたのではないのか?」


二人は大柄な武士の後ろに隠れた。


――――――――――――――――――――


琴の演奏が終わると、キララは籠に入れられた良経の書を手に取った。


「ありがたいけど、あなた大納言なんでしょ。ふらついていていいの」


「僕は父上のおまけだ。いなくても朝議は進む。こんなことを言ったらまた君に叱られるかな」


「いいんじゃない。あたしも学校サボってたし」


「確かに詩を学んでいるような歌詞ではなかった」


「馬鹿にしてるの?」


「逆だよ。技巧を凝らさずとも、民や武士の心に響いている。シズ☆キラを初めて聴いたときからそう思っていた」


「ならいいけど。あたしも今日はサボっちゃおうかなあ。書ももらえたし。良経、まだヒマ?」


――――――――――――――――――――


キララと良経が移動するのを、陰から見ていた静御前が定家の袖を引く。


「定家、後をつけるわよ」


「物見の真似などせずにいっしょにいけばいいだろう。痛いっ!」


静御前が定家の耳を引っ張っていくのを、大柄の武士は不思議そうな顔をして見ていた。



キララたちは河原に出ていった。静御前が二人の後をつけていくとボロ板を立てかけて作ったような小屋がいくつも現れた。定家が静御前に聞く。


「ここは何だ――」


「……貧民窟よ」


静御前は不機嫌につぶやいた。

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