表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
7.合戦前夜編
65/143

1188年5月 北朝会議

奥州・蝦夷の里


一年に渡る奥州調査の旅を終えた優介は、蝦夷の里へ戻った。

ここには丸木で造った質素な館がある。通称、木隠御所(こがくれごしょ)。北朝の朝廷だ。


優介の身体の所々にある傷跡を見て吉次は驚いた。


「流為、優介を守れなかったのですか!」


「……無理。自分で怪我をするもの」


「流為は悪くない。獣道や崖を調べようとして自分で落ちたんだ」


「……何度も無茶をした」


「ハハハハ、だから一年もかかってしまった。みんなは揃っていますか?」



木隠御所では藤原秀衡、安倍晴兵衛、平教経、弁慶が安徳帝を中心に左右に並んでいた。


「秀衡様、お身体はお変わりないですか?」


「ああ、薬師のおかげで前より頑健じゃ。人気が落ちて元気は無くなったがのう」


秀衡は恨めしそうに優介を見た。去年までは奥州中に秀衡のポスターが貼られていたが、今では左大臣と奥州浄土宗・法主を兼ねる優介のポスターに張り替えられていた。一年も経つと民衆も秀衡の時代が終わったことを感じ、秀衡は過去の英雄として扱われるようになっていった。


「ポスターに描くなら、帝じゃろうが!」


「帝の顔を世間に知られるのは危険です。いずれ秀衡様のポスターも復活させますから」


優介は秀衡をなだめると、平教経に軍の調練について聞いた。


「ああ、ちゃんと集団戦法を教えている。法然から送ってもらった小難しい兵書も読んだ。だが、性に合わぬ。軍の先駆けをさせろ。戦の最中に奥でじっとなどしておれぬわ!」


「じゃあ、歩兵の調練は国衡殿にお願いしよう。豪族の信望もあるしね。教経には騎馬隊の調練を任せる。その代わり戦になったら大軍に突っ込んでもらうぞ」


「そうこなくてはな。我に任せろ」


晴兵衛からは浄土宗の布教が終わったことと、白河の関で完成した寺について報告された。


「日本一の大きさの寺ができました。浄土宗の象徴の造営に加わりたいと、宗徒が手弁当で手伝いに来ているので、国費にかかる負担はございませぬ。して、殿。寺の名は何といたしましょう」


「もう決めてある。白河本願寺だ。引き続き工事を頼む。弁慶、宣旨の効果はどうだ?」


「西国では鎌倉に従わない豪族が反乱を起こしている。だが、東国では宣旨に応じた者が反乱を起こす前に誅殺された。参河守・源範頼、遠江守と下総守を兼ねている安田義定。それから――」


幕府の大物の名前が出てきたので、皆が騒めいた。秀衡が唸る。


「むぅ。範頼といえば頼朝の弟で平家追討の大将ではないか。安田義定は甲斐源氏の筆頭格で所領の大きさでは群を抜いていた。反乱が成功すれば鎌倉も無傷ですまなかったじゃろう」


「惜しいな。連携すれば鎌倉に勝てた」


「教経、そうじゃないよ。無実の罪を着せられて殺されたんだ。義経のように」


史実では奥州を征伐して幕府の敵がいなくなると、源範頼と安田義定は些細なことで誅殺されている。違うのは、数年早まっていることだ。


「頼朝の気性から、きっかけさえあれば粛清をするだろうと思っていた。そして、その間は奥州へ攻めてこられない。だからこそ、俺は安心して奥州を周ることにしたんだ」


「流石は殿! 反乱が起こりそうにもない東国にまで宣旨をばら巻いたのは、頼朝に利用させるためでござったか!」


「でも、こんなに手早く粛清を終わらせるとは思わなかった。この分だと頼朝はすぐに攻めてくるかもしれない。吉次さん、武器のほうは揃っていますか?」


「そのことですが――」


吉次は遠慮するように秀衡に視線を送った。


「わしが話そう。泰衡に武器造りを任せていたのじゃが、これまで作ったほどのない量じゃ。すいぶんと遅れておる」


「鍛冶場の規模は俺も知っています。できない量じゃない。あいつは俺のことが嫌いです。きっと嫌がらせをしているんでしょう。泰衡を担当から外してください」


「そう厳しく申すなな。泰衡も奥州のために働こうと頑張っておる。あやつにはわしから言っておく。だから続けさせてやってくれ」


優介は渋々承知した。


――今、秀衡と不仲になるのはまずい。だけど、放っておくのも気がかりだ。


「なら、ユーリを泰衡の側から離してください」


「おお、たやすいことじゃ。というか、ユーリは姿を消して久しい」


「そうなのか? 弁慶」


「ああ。探したが見つからなかった。山へ隠れたか奥州の外へ逃げたか」


――ユーリは泰衡を見限ったのか? それとも泰衡に命じられて何かをしようとしているのか? 



「晴兵衛。浄土宗を奥州の外へ拡げてくれ。他国の民は文字を知らない。布教するときは絵で伝えるようにしろ」


「戦の前に坂東の民を味方にするのでございまするな」


「吉次さん、蝦夷の精鋭を貸してください」


優介が蝦夷を使った作戦を話していると山伏が飛びこんできた。

弁慶がたしなめる。


「朝議の最中だぞ」


「京からの急報です! 源頼朝がこの夏に征夷大将軍に任じられるとのこと!」


「「「「なにぃ!」」」」


全員が瞬時に意味を理解して立ち上がった。


――準備万端で来るってわけか。予想より早いが、受けて立つしかない。


「稲の刈り入れが終わったら頼朝が来る! 備えを怠るな!」


「「「「おう!」」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ