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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
6.奥州獲り編
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1187年4月 思惑

奥州平泉・藤原泰衡邸


藤原泰衡は訪ねてきた晴兵衛に対し不機嫌な顔を隠さなかった。泰衡の隣には由利維平が座っている。


「我が殿が御兄弟の融和を進言したことが御不快で?」


「一族の問題に口を挟んできおって! 坊主は念仏だけ唱えておればいいのだ」


「今はただの坊主でも、我が殿は浄土宗を奥州の比叡山にするやもしれませぬ」


「優介め。政の責を負わずに口だけ出すつもりか」


「まったくでございまする。私もこれには愛想が尽き申した。泰衡様、私を家人にしてもらえませぬか? これまで天下人の臣になれると思い、優介に仕えておりましたが、情けないことに坊主になり果てました。泰衡様、晴兵衛はまだ欲も野心も捨てとうありませぬ。坊主ではなく奥州の次の王の元で働かせてくだされ」


「ふふふふ。優介を捨てて私を選ぶと申すのだな」


それまで黙っていた由利維平(ユーリ)が鼻で笑った。


「旦那は人が良い。こいつはあの優介の家人だぞ。物見ならばどうする」


「ユーリ殿、信じてくだされ。そ、そうだ。土産もございまする」


由利維平は太刀を抜くと晴兵衛に突き付けた。


「つまらぬものなら首を落とす」


「も、もちろん! 土産は浄土宗徒です。布教は法然や優介がやっておりまるが、宗徒組織はこの晴兵衛が作りました。ですから、一声かければ数万の宗徒がドドドっと動きまする。さすれば、国衡様の勢力など相手にならぬかと」


「優介が宗徒を渡すわけねえだろう」


「天台の僧兵に優介と法然を始末させまする。天台宗徒は法然を嫌っておりますゆえ。その後に泰衡様が浄土宗を丸ごと奪えば良いのです」


「舐めすぎだ。奴は源平合戦を戦い抜いた男だ。流為という用心棒もいる。僧兵どもに殺せるタマじゃねえよ。旦那、優介は俺様が殺る。兵を借りるぞ」


「待て! 優介に手を出すと父上にお叱りを受ける」


「僧兵の恰好をさせればいい。旦那も新しい親父が国衡なんてゴメンだろ?」


「それはそうだが……」


「優介を片付けた後は国衡を浄土宗と共にぶっ倒す。そのまま秀衡も――」


「父上に対して何と大それたことを!」


「いい子ちゃんぶるなよ。爺さんの小言にはうんざりしているんだろ?」


泰衡はしばらく考えた後、かすかに聞こえる声でつぶやく。


「……父上もご高齢だ。お身体を考えて隠居していただくのも良いかもしれぬな」


「ふっ、建前は旦那に任せるさ。俺様は奥州軍の頭になれりゃあそれでいい――晴兵衛、僧兵の元へ連れていけ」


――――――――――――――――――――


優介が泰衡の館を見張っていると、晴兵衛が由利維平といっしょに出てきた。


「……ユーリと。なぜ?」


「裏切ったんだよ! 寄りによって泰衡を選ぶなんて、俺への当てつけだ」


「……待って。調べる」


「必要ない。流為も見ただろ!」


晴兵衛には宗徒の組織作りを任せていた。いなくなったとなると、優介が代わりをしなければ、生まれたばかりの組織は崩壊する。優介は布教をしている場合ではなくなった。


「流為、鉄船の手配を頼む。俺は戻って法然上人と話す」


――――――――――――――――――――

奥州のとある学校砦


一週間後、優介は法然に何度も頭を下げていた。


「すみません。後少しで奥州全土を周れたのですが……」


「船の都合なら是非もない。南無阿弥陀仏」


法然が法衣を払い、民衆の前に立つ。奥州で最後の説法だ。

だが、法然の法話はその途中、民衆の悲鳴によって遮られた。


「法然! 奥州に邪法の寺を建てることは許さぬ! 天台宗が打ち払ってくれる!」


「あれは天台の僧兵。優介よ、問題が無いと言ったのは嘘か?」


「すいません。上人に余計な心配をかけたくなくて」


――だが、何かおかしい。揉め事が起こっていたのは、布教後、学校砦を寺に作り替えたときだ。


「上人、お下がりください。ここは俺が――」


「待て。太刀を抜けば憎しみの螺旋が始まる」


法然は僧兵に向かって、歩いていった。


「天台の僧よ。誤解があるようだ。宗論を交わし、互いの理解を深めたい」


僧兵たちの勢いが止まった。法然の声と立ち振る舞いには威厳がある。


「理解? いらねえな。てめえが死ねば解決するんだよ!」


「上人、危ない!」


優介は法然を抱きかかえて転がった。見上げると優介の知った顔だった。


「お前はユーリ! 流為、上人を連れて逃げろ!」


「野郎ども! 囲んで逃がすなよ」



周りを見ると百人以上の僧兵がいた。中には六角棒ではなく太刀を持っている者もいる。おそらく頭巾を剥がせば武者の伸びた髪が現れるのだろう。


「ユーリ! 俺を殺せば秀衡様が黙っていないぞ」


「俺様は僧兵の助太刀にきただけだ。法然の側にいると誤って斬っちまうぞ」


言葉とは裏腹にユーリの太刀は優介目掛けて振り下ろされた。

かろうじて受け止めるが、太刀を受けとめた手がしびれる。


――迂闊だった。まさか天台宗を隠れ蓑に俺を葬りにくるとは。


流為も血路を開けないようだった。


「ユーリ! 俺の命はくれてやる。だから流為と上人を助けてくれ!」


「……優介、ダメ」


「フハハハ! 流為、俺様も同感だ。逃げるのはダメ!ダメ!ダーーーメ!! てめえらはここで死ぬんだよぉ!」


「それもダメだな。優介、こんな下郎に押されるな。貴様に負けた平家が弱く思われる!」


「誰だ!」


由利維平が振り向いた先を見ると、僧兵の首が宙を舞っていた。


「平能登守教経、見参!」

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