表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
5.義経没落編
46/143

1185年5月 腰越状

平安京・源義経邸


「毎日、毎日、静御前はしつこいのう。いっそ叩きのめそうか」


館の外から聞こえる歌声に弁慶は顔をしかめた。キララが首を振る。


「ヨッシーの評判を下げるだけよ。ただでさえ英雄になった途端、恋人を捨てたって噂になってるんだから。ここで暴力をふるったら、クズ男としてバズっちゃう」


「しかし、耳目を集め続ければ、義経様の正体に気づかれるやもしれぬ」


「だったら、こっちが避けるしかないわね」


――――――――――――――――――――

平安京・静御前邸


「殿、書き物ばかりしておらず、妙案を出してくだされ」


パンッと洗濯物を鳴らすと晴兵衛は物干し竿に小袖をかけた。

優介は隣にいる流為に紙を渡す。


「キララを連れだすにしても、本人にその気が無ければ難しい。流為、いつも通りキララが一人になったときに打ち込んでくれ」


「説得の矢文でございますな」


「違うよ。予言みたいなものだ。知っていれば回避できる危険もある」


義経邸を追い出された後、優介は手紙に史実を書いてキララに送っていた。


――これから義経に訪れる不幸を知れば、キララも考えを変えるかもしれない。


優介たちが話していると静御前が血相を変えて戻ってきた。


「何、呑気に座ってるの。奸臣! 義経様がいなくなったわ! いいえ、それだけじゃないわ。デクの棒たちもいない。もぬけの殻よ!」


「それなら心配いらない。一カ月もすれば帰ってくる」


「なぜわかるのかしら?」


「行き先は鎌倉だ。捕虜にした平宗盛を頼朝に見せに行くのさ」


――キララは史実通りに動くことを選んだか。


静御前が俺の顔をじっと見てくる。


「いつも自分だけがわかっているみたいな顔をしているわね。気に入らないわ」


「まあ、多少は知っているつもりだけど」


「うぬぼれね。賢ぶってると、いつか足元を救われるわよ」


後日、優介は静御前の言葉を苦い気持ちで思い出すことになる。


――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

相模国腰越・満福寺


二週間後。鎌倉への入り口である腰越の満福寺でキララたちは足止めを食らっていた。猫面を被ったキララは頼朝の代官として来ている大江広元に長文をしたためた書状を渡す。史実に名高い「腰越状」である。


大江広元。鎌倉政治の中枢である政所別当であり、頼朝の知恵袋と称されている。物静かでアクの強さの無い、薄い顔立ちをした男だった。


「鎌倉殿へお渡しするか否かは、梶原殿の書状と照らし合わせて決めます」


「だーかーらー。それはキモ親父の讒言だって言ってるじゃん。よく聞いて。あたしたち兄弟の仲が悪くなれば、鎌倉にとって損よ。知恵袋って言われているならそれぐらいわかるでしょ」


「すべては鎌倉殿が判断されることです」


「もう! さっきから思っていたけど、あなたって表情が全然変わらないのね。人形みたい――ちょっと、どこ行くのよ!」 


大江は立ち上がると、キララに背を見せた。


「判官殿の話が終わったようなので」


「勝手に決めないでよ!」


大江は返事もせず、満福寺を出ていった。

弁慶が荒い足音を立てながら駆け寄ってくる。


「首尾はどうだ?」


「お兄ちゃんの読み通りだったわ。あの人形男に頼んでも無駄ね。弁慶、鎌倉に知り合いはいないの?」


「我らはよそ者扱いだったからのう……」


キララと弁慶が黙っていると外から騒ぎ声が聞こえてきた。弁慶が舌打ちをする。


「また、あの阿呆か」


「誰なの?」


「我らを見張りにきた御家人だ。鎌倉殿の弟分などと威張ってくるから、つい喧嘩になってな」


「揉め事はやめてよ。これ以上、頼朝さんとこじれたら――ちょっと待って! 今、弟分って言ったわよね。弁慶、少しの間だけ、ヨッシーを辞めるわ。数日の間、あたしの不在を隠して」


そう言うと、キララは猫面を外した。


――――――――――――――――――――


満福寺の外では、奥州武士の胸倉をつかみ上げている御家人がいた。

キララはその背中をポンポンと叩く。


「久しぶりね。骨兜さん。地獄の藤九郎だっけ? 五年前、伊豆で頼朝さんに口説かれたキララよ」


「覚えてねえなあ。死にたくねえなら消えろ」


「それじゃあ、弟分失格ね。これが証拠よ」


キララは歌札を取り出して見せる。


「――確かにこの筆は兄貴のもの」


「わたし、頼朝さんが恋しくて会いに来たの。案内してくれる?」


「チッ、面倒な。何でオラのところに……。」


安達藤九郎盛長は肩を落とすと大きくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ