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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
4.源平合戦編
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1185年4月 壇ノ浦の戦い・中

長門国赤間関・壇ノ浦


四月二十五日、早暁。

源氏水軍八百余艘が彦島へ向かっていることを察知した平家は、全軍の五百余艘を彦島から進発させた。そして半刻後、両軍はお互いに船影が見える位置にまで到達する。


「キララ隊、先陣行くよ! 弁慶、一番槍はお願いね。わたし、目立つのは好きだけど、怖いの苦手だから――あれ? わたしたちを追い抜いていく船がある。あっ! キモ親父が乗ってる!」


小早で編成された一団が高速でキララの乗船を追い越していく。


「ガハハハ! ハゲ大将がノロマなので追い越してしまったわい。軍令違反の罰は後で受けよう。この梶原景時が先陣つかまつる」


「罰を決めるのって、キモ親父の仕事じゃん! ズルい!」


梶原景時が作戦を無視したことで、他の御家人も「それならば!」と、我先に敵陣へと突っ込んでいった。


「ちょっとみんな!」


平家水軍は陣形を組み、猪突する源氏水軍を迎え撃つ。

壇ノ浦の戦いは序盤から激しさを見せつつあった。


「どうするキララ? こっちはバラバラだ」


「言ったって聞かないでしょ。これだから男子って!」


「そうだな。本船は混戦に巻き込まれぬよう後退する」


「ねえ、あれを見て。おにいちゃんが平家にあげた宮城丸に大将旗が上がってる」



他の船も気づいたらしく、御家人の船が宮城丸を目掛けて群がっていった。

平家軍は宮城丸を包囲する鎌倉軍をさらに外から半包囲する動きを見せる。


「鉄船は守りに強い。早く落とさねば、逆に囲まれるぞ」


「どうしよう、弁慶」


「囲まれぬよう、陸からの遠矢と合力して左翼に攻撃を仕掛ける。急げ!」


―――――――――――――――――――


午前八時。

宮城丸を落とそうとやっきになっていた源氏水軍だが、乗っている兵の多さに手こずっていた。そのうち、源氏水軍は防戦にまわらざるを得なくなり、逆に大きく押し込まれた。キララがその様を見て文句を言う。


「坂東武士ってバカばっか! あのキモ親父、まだ宮城丸を囲んでるよ」


「ずいぶんやられたが、これからは少しは楽になる」


「どういうこと?」


「海峡から押し出されたせいで、船数の差が生きてくる。平家としては狭い海で決着をつけたかったはずだ。見ろ。囲みの糸はほぐれて隙間ができてきた」


弁慶の予想通り、源平の戦況は五分五分に戻りつつあった。

船数の差もあったが、平家水軍の攻勢が明らかに弱まっていた。


―――――――――――――――――――


そして午前十時。

平家水軍の一部が紅旗から源氏の白旗に変わった。


「弁慶、あれって」


「裏切りだ。勝負あったな」


―――――――――――――――――――


平家を裏切った阿波重能という豪族が小早に乗ってやってきた。


「宮城丸には平宗盛も帝もいないだと!?」


「はい、あれは知盛の計略です。帝がいるのは、あの唐船です」


「――まんまと策にかかったということか。皆に知らせねば」


弁慶が伝令を飛ばそうとすると、キララが止めた。


「何のつもりだ。皆に早く教えねばならぬ」


「ヤダ! 梶原のキモ親父がまた邪魔しにくんじゃん。バズれなくなる」


「あのなあ……」


「もう勝負あったんでしょ。危なくないって。キララ隊、唐船に向かって進めー! 一番乗りよ!」


キララ隊の船が脇目もせずに、平家水軍の中を突き進む。裏切りが出た平家軍は混乱しており、大した抵抗も受けずに唐船に近づくことができた。


「ほら、言ったでしょ。キララ隊だけでやれるって――」


ゴウッという突風がキララたちの横を通り過ぎた次の瞬間、船の帆柱がメキメキと音を立てて倒れた。


「見つけたぞ、義経えええええ!!!」


源氏の船から船へ飛び移りながら、教経が鬼の形相で迫ってきた。


「あれノリくんじゃん! ブチ切れてるよ。もう、危なくないって言ったじゃん」


「申したのはおぬしだ! 某にあの勢いを止められるかどうか……」


「……逃げて」


流為がキララの背中を押す。


「嘘でしょ! バズりが目の前なのにーーー!」


「あきらめろ。全軍に集結するように知らせる」



銅鑼が鳴り響く中、教経とキララの追いかけっこは始まった。


「卑怯者! また逃げるか!」


「もう戦いは決まったじゃん! あたしを殺しても意味ないって!」



逃げるキララの目の隅に次々と海へ飛び込む女官の姿が目に入った。


「えっ、なんで……、自殺するの……」


弁慶が叫ぶ。


「キララ! 足を止めるな! 流為、教経を射ろ!」


教経が太刀をキララに振り下ろす。キララの猫面が割れた。


「ちいっ! 矢が邪魔せねば、仕留めたものを。だが次は――」



右手を射抜かれた教経の目が見開く。


「――そなた、狂巫女ではないか! 義経はどこだ!」


「もう死んじゃったわよ! ねえ、もう戦いは終わりよ。死ぬ必要はないの。ノリくんも止めてよ! お願いだから!」


「そうか……」


教経の体からは殺気が消え、次々と入水する平家一門を眺めていた。



「狂巫女。頼みがある。敦盛のように、浄土への旅を見送ってはくれないか」


「ノリくんも死んじゃうの?」


「義経を道連れにと思ったが、女連れでは閻魔に笑われる」


教経はそう言うと鎧を脱いで海へ飛び込んだ。



キララは青葉の笛を取り出すと、敦盛が作った曲を吹いた。

悲哀を込めた音曲と平家一門の自死は、手柄に逸る御家人たちに憐れの心を呼び起こし、それからは無駄な殺戮は行われなかった。



正午。壇ノ浦の戦いは源氏の勝利で終わった。

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