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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
4.源平合戦編
39/143

1185年3月 屋島の戦い・中

讃岐国屋島


平家軍は源氏軍の兵の少なさに気づくと、屋島を奪還しようと軍船を岸に近づけてきた。優介は水際で上陸を防ぐべく、御家人を叱咤する。


「船の敵は無視しろ。陸に上がろうとするやつだけを狙え。騎馬の速さで数の差を補え! 敵の矢はキララ様が囮になって引き付ける! お前らも坂東武士の勇気を見せろ!」


「お兄ちゃん、マジで言ってるの! 怖いよ!」


「俺が守る!」


優介が弓から盾に持ち替えていると、弁慶が奥州の武士、佐藤継信・忠信の兄弟を連れてきた。優介はその名前で平家物語を思い出し、弁慶が口を開く前に断った。


「護衛なら必要ない。俺と流為がいれば――」


「二人で守り切れるわけがなかろう! あの矢の数を見ろ」


「――佐藤が死ぬかもしれない」


佐藤兄弟が憤慨する。


「戦では当たり前のこと! 我らに覚悟無いとお思いですか!」


「違うんだ、そう意味じゃない」


兄弟と押し問答をいていると、キララめがけて矢が降り注いできた。

優介が舌打ちをして馬を走らせる。矢を懸命にかわしていると、優介の持っていた盾が砕け散った。


――この強弓の持ち主はあいつしかいない。


「見つけたぞ! 義経!」


「教経だ! マズイ、誰かキララを!」


「邪魔だ! 壁ども!」


キララをかばうように佐藤継信が前に出ると、教経の弓鳴りが聞こえた。

次の瞬間、継信の体を深々と矢が貫く。だが、継信は胸を張って叫んだ。


「平家の弱矢の一本や二本でこの継信を倒せると思うな!」


「言うたな! 下郎!」


――くそっ、史実でわかっていたのに、佐藤継信を死なせてしまう。


「流為! 行くぞ。教経を止める!」



優介は馬腹を蹴って、教経に向かった。


「……あいつ強い」


「知ってる! キララを狙っている隙を討つ。流為は教経の周りの郎党を狙え。決して殺すな」


流為が教経の周りにいる郎党の足を狙って射抜いていく。

負傷した郎党は騎馬の突進を避けるように教経から離れた。

迫ってくる優介を教経は睨む。


「やはり敵だったか。だが、貴様ごときの腕で我を斬れると思うな!」


「お前を斬る気はない」


優介は馬に伏せると太刀で、教経の強弓の先をかすめるように切った。バチリという音と共に弓が逆に反り返る。


「やってくれたな! 優介!」


「お前の郎党はまだ死んではいない。脚を怪我をしているだけだ。だが、放っておけば、彼らは逃げ遅れて殺される」


「おのれ……」


教経が歯ぎしりしていると、優介の後ろから馬蹄の響きが聞こえた。

優介が振り向くと、怒りの形相で佐藤兄弟の弟・忠信が弓を引き絞っていた。


「兄者の仇!」


教経の郎党の少年が盾となって忠信の矢を受けた。


「教経! 早く撤退しろ! 兵の命を守るのが将だろう!」


「命、命と賢し気に吠えるな!……者ども、船に戻る!」


――――――――――――――――――――


一刻ほどの戦いの末、平家も攻め疲れたのか沖へ引き上げていった。


「優介、佐藤継信は立派に死んだ」


「助けることができなかった……。弁慶、この子もいっしょに弔ってくれ」


「忠信が射抜いた教経の郎党ではないか」


「だからって少年の遺体を放っておくのか! 死ねば敵も味方も関係ない!」


「わ、わかったから、そう怒るな。優介も少しは休め」



不眠と大勢の死を見たせいで、優介は不機嫌だった。


―――――――――――――――――――


その日の夕方、一艘の小舟が岸へ向かってきた。

弁慶が優介の頬を叩く。


「起きろ、優介、キララ。平家の使者かもしれぬ」


「船に乗ってるのは?」


「美しい女と老人だ」


弁慶の話を聞いて優介はピンときた。


――ああ、扇の的の話だな。なら、やることはわかっている。


「あれは使者じゃない。挑発だ。弁慶、那須与一を探してくれ」


「うん? 与一は屋島に来ておらぬぞ。船に乗ろうとしたとき、おぬしが、やる気がないなら帰れ、と叱った武士がいただろ」


「あれが与一なのか!」


「ああ、ふてくされて船に乗らなかった」


――どうする? いや、待て。扇の的の故事が無かったとしても、あれは余興のようなものだ。歴史に影響はないはず。


優介が無視しろと言おうとしたとき、キララが目を輝かせてやってきた。


「お兄ちゃん、聞いたよ! 扇の的に当てるやつでしょ」


「そうだ。でも与一がいないんじゃ、無視するしかない」


「あたしにやらせて!」


「はぁ?」


「超バズるエピソードじゃん! 絶対やる!」


キララは肩をぶんぶんと回し始めた。

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