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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
4.源平合戦編
38/143

1185年3月 屋島の戦い・前

摂津国・渡邊津


湊に優介が着いたときは、まだ軍船を集めている途中で、御家人たちは暇をもてあましていた。そのせいもあってキララを遠巻きに見に来る御家人が絶えなかった。


「あれが猫将軍か」

「見ろ、あの頭を。本当に出家している」

「一ノ谷のときと雰囲気がガラリと変わったな」

「仮面の下は化粧をしているそうな」



優介は計画通り、御家人を集めて宣言した。


「源雲母(キララ)様は船がすべて集まる前に先陣として出発する」


「そう慌てずとも船が集まってからでも良いではないか」

「大将が先陣する必要はない」

「そうだ! 手柄を独占するつもりか」


ざわめく御家人を無視して優介は続ける。


「キララ様はすぐにでも平家を打ち滅ぼしたいと考えている。そのためには討ち死にも辞さない御覚悟だ。出家して今世との縁をお切りになったのもそのためである。だだし、おのおの方が船を探してついてくるのは勝手だ。キララ様は止めはしない」


―――――――――――――――――――――


優介の宣言後、御家人たちは活気づき、郎党を置いてでも先陣に加わろうと船の取り合いがはじまった。しかし、出航を予定していた日に暴風雨が起こると、皆、尻込みをした。それはキララたちも同じだった。


「お兄ちゃん。やばいって! すっごい風だよ」


「本当に行くのか? 船頭たちも拒んでいるぞ」


「……嵐の海。怖い」


「い、行くしかない。あの船で」


優介は高速船の小早を指した。

小さい船なので大波に揺られてひっくり返りそうになっている。


「鉄船で行くんじゃないの? あんな船。絶対、沈むってば!」


「は、速さが命なんだ。だからあれに乗るしかない」


「お兄ちゃんも足が震えてんじゃん! やめようよ!」


――俺だって行きたくない。だけど、史実がそうなっているんだ。文句があるなら義経に言ってくれ。



優介たちが揉めていると、立派な弓を持った御家人が話しかけてきた。


「あのう……」


「今、取込み中だ! やる気がないなら来るな!」


「そんな言い方しなくたって……」


御家人はしょんぼりして戻っていった。

優介はキララに向き直って説得する。


「ライブとかでも雨の中のほうが伝説になったりするだろ? バズるためには、ドラマチックな状況が必要なんだ。たぶん……」


「お兄ちゃん、目が泳いでるってば!」


「弁慶、船頭たちを脅してこい。出航しなければ殺すって。さあ、行くぞ!」


「いやあああああ!!!」


優介は泣き叫ぶキララを引きずりながら小早に乗り込んだ。

五艘の船に同伴したのは奥州からついてきた武士と命知らずの御家人百五十騎だけだった。


――――――――――――――――――

阿波国・椿浦浜


優介たちを乗せた船は二十八時間の地獄の航海を終え、四国・椿浦浜に着いた。漂着と言った方が正しいかもしれない。


「うう……。キララ、大丈夫か?」


「胃の中のものが全部出ちゃったみたい。お兄ちゃんも顔色悪いよ」


「酷い揺れで眠れなかったからな……。皆、無事で良かった」


「無事って言えるの? あれ見てよ」


御家人が海岸でへたり込んでいる。

優介はふらふらになりながら、計画が書いてある紙を読んだ。


「皆、立つんだ。すぐにこの土地の豪族を攻める。ぶっ倒したら、そのまま屋島まで突っ走る。徹夜しないと着かないので、今日は寝れない。さあ、行くぞ」


「鬼か!」「殺す気だろ……」「戦う前に死にそうだ」


――まったく同意見だ。義経の計画はイカれてる。


「お兄ちゃん、少しだけ休ませて……」


「大将がやる気を見せないでどうする。弁慶、キララを馬に乗せろ」


「いやあああああ!!!」


――――――――――――――――――――


義経軍の急襲でこの地を束ねている豪族の館はあっさり落ちた。四国の豪族の中心人物が討たれれば、平家方の動きも鈍くなる。その隙に義経軍は屋島へ迫っていった。


「……優介、起きて。屋島」


「ああ、ごめん。流為の馬の扱いが上手すぎて寝てしまった。みんな止まれ!」


優介は御家人たちを集めると、どの顔も不眠で不機嫌だった。


「味方の数を多く見せるために民家に火をつけながら進み、大軍に見せかける。もうすぐ干潮になるから屋島へも馬で渡れる。これまでのイライラを平家にぶつけろ! 暴れろ! 手柄を取れ!」


「「「「おおうっ!!」」」」


屋島への急襲が始まった。暴風雨のこともあり、まったく油断していた平家軍はたちまち混乱に陥り、我先へと船へと逃げていく。


その様に弁慶は拍子抜けしていた。


「あっさりしたものだな」


「武士だけなら、簡単にはいかなかっただろう。平家は幼帝と女官をまず逃がさなければ、安心して戦いに集中できない」


「お兄ちゃん、眠いよ……」


「よくやった。寝てていい。何かあったら起こす」



海上の船の動きに目を凝らすと、五艘ほどの船がこちらに向かっていた。どうやら、こちらの軍勢の少なさに気づいたようだ。


「弁慶、ここからが大変だ。源氏軍本隊が来るまで敵を食い止めなければいけない。キララ、起きる時間だ。おはよう」


「嘘でしょ! 全然寝てないよ!」


「眠気なんて殺気で吹っ飛ぶさ。敵は一番にキララを狙ってくるからね」 


「いやあああああ!!!」



屋島の戦いの第二ラウンドが始まった。

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