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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
3.英雄義経編
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1184年2月 変転

一ノ谷の合戦後、鎌倉軍を率いていた二人の大将のうち源範頼が鎌倉へ帰還し、残った義経が京の治安維持を担うことになった。


義経をはじめとする鎌倉の諸将は、今や京中の人気者だった。

餓狼のような木曽義仲軍を滅ぼして平家にも大勝。その上、米まで持ってきてくれたのだ。歓迎されるのも当然である。


しかし、義経は勝利の美酒に酔うことも無く、凱旋後に病に倒れ、六条の屋敷で静養していた。


――――――――――――――――――――

平安京郊外・大寺院 宿坊


「法皇の呼び出しにも応じられぬほど悪いらしい。あれほど褒めたたえていた人々も、平家の祟りだと言って怯えている。民とは勝手なものです」


吉次は残念そうにつぶやくと、祝いの品だけ渡してくると言って出かけていった。


「ヨッシーが心配だわ」


「この時期に義経が病になったという記録はない。大したことは無いさ。今はゆっくり静養するんだ」


「もう大丈夫。いつまでも泣いてたら、アッくんに笑われるもの」


キララは敦盛の形見の「青葉の笛」を取り出した。


「笛でバズってみせるわ。アッくんといっしょにね」


――――――――――――――――――――


優介がキララの笛を聴いていると、吉次が息を切らせて戻ってきた。


「優介、キララ。義経様がお呼びだ! 急いでくれ!」


優介は吉次の馬に、キララは流為の馬へ乗って平安京を駆けていく。


「吉次さん、お尻が痛い。なんでそんなに急ぐんですか?」


「義経様が危篤です。遺言を聞くことになるかもしれません」


「そんな……」


優介は胸の動悸が早まるのを感じた。


――――――――――――――――――――

平安京・源義経邸


六条の屋敷につくと、弁慶が義経の病床に案内してくれた。

回廊を歩きながら優介が病状を聞く。


「病ではない。鵯越の逆落としを仕掛けたとき、落馬なされた」


「信じられない。ヨッシーは馬の扱いは得意なはずよ」


「その通りだ。だが、あのときは上の空だった」


「断崖絶壁を降りるっていうときにか!?」


「今までの義経様とはどこか違った。戦が始まると異常なほどに集中する御方が、此度の戦に関しては違っていた。時折、苦しそうな顔で悩んでおられた」


「あたしのせいよ……。あたしが戦の前にあんなこと言ったから!」



部屋に入ると柱に背をもたれながら、白の小袖を着た義経が待っていた。


「ヨッシー、ごめんなさい!」


「せっかくバズったのになあ……」


「元気出して、まだまだヨッシーはバズるんだから」


「そうかな。キララは虚言を使うからね。惑わされてしまったよ」


「うん。頼朝さんのことは虚よ! 傷つけてゴメンね」


「だろ? 兄上が僕を殺すはずがない。僕ら兄弟はキララたちに負けないほど仲が良いんだから」


義経はうれしそうに笑った。


「これからバズるのも虚言だろ?」


「そんなことないわ。ねっ、お兄ちゃん」


「そうだ。義経は手柄を上げ続け、後世に名を残す」


「ふっ、やっぱり虚言だ……。折れた骨が僕を内から殺していくのがわかるんだ。もう僕は戦えない」


義経の目に涙が光る。


「悔しいよ! やっと英雄になったのに! 皆に力を示せたのに!」


「こうなったのは、あたしの責任よ。何でもやるわ」


「なら、僕の願いを聞いてくれ」


「京で一番、いいえ、日本で一番の医者を連れてくるわ」


「そうじゃない。僕の代わりに、義経の名をバズらせてほしい」



義経が目配せをすると、弁慶は義経の鎧を持ってきて、キララに付け始めた。


「え、なに!? どういうこと?」


「僕の魂を渡す。源九朗義経になるんだ。そして、日本中に! 静御前に! 兄上に――」


そこまで言ったとき、義経は大量の血を吐いた。


「義経は英雄だったと証明してくれ……」


「ヨッシー!」「義経様!」「義経!」



皆が叫ぶ中、優介の頭の中を不安が埋め尽くしていく。


――義経が死んだ。俺の知らない歴史だ。屋島の戦いは? 壇ノ浦の戦いはどうなる?


史実の知識というアドバンテージが無くなる恐怖に優介は怯えた。


―――――――――――――――――――――


「静かに! 泣くのも禁ずる! 弁慶、誰も部屋から出すな!」


吉次が厳しく言い放つと、弁慶が部屋の出口に立った。


「流為、義経様の影武者の遺体を清めなさい。庭へ埋葬します」


「吉次さん、影武者って!?」


「義経様の魂はすでにキララに移った。この遺体はもう義経様ではありません」


「――本気で言ってるんじゃないでしょうね」


「奥州が義経様にどれだけつぎ込んだか。ようやく鎌倉軍で大きな存在になったのです。ここで死なれたら、すべてが泡になります」


「金が惜しいから死者を冒涜するのか!」


「私は民の税を無駄にはしない。死者の想いもです」


「キララはどうなる!」


「――お兄ちゃん、あたしやってみるよ」


「なっ!?」


優介には鎧兜を着けたキララが一瞬、義経そのものに見えた。

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