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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
3.英雄義経編
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1183年2月 静御前

神社での乱闘騒ぎはすぐに京中の噂になった。キララの絵が描かれたポスターを優介が舞台に撒いたことで、民衆の好奇心に火をつけたのだ。


「見たことある。狂巫女だ」

「狂巫女って、昨年の舞台で大暴れした女か?」

「静御前から平家の公達を奪ったらしい」

「いや、平家に喧嘩を売ったらしいぞ」

「あれは気が触れた女子だ」

「いや、仏のような女だと聞いた。貧民を何万人も救ったそうだ」


―――――――――――――――――――

平安京・旅宿


優介たちは宿に潜伏し、今後について話し合っていた。ただ、義経だけは落ち着きがなく、目を離すとすぐ京の街へ出て行った。そしていつも落ち込んで帰ってくるのだった。


「僕の名前なんて誰も口にしていない。キララの噂ばっかりだ……。僕もポスター作ってもらおうかな」


「超バズる男が、セコイ事言わないの」


「自信が無くなってきたよ。優介は僕が英雄になれると思う?」


「なる、なる。だから、今はおとなしく帰ろう。な!」


「嫌だ。今、静を助けなければ僕は後悔する」


「そのことなんだけど、アッくんにも協力してもらおうと思うの。アッくんは源平が仲良くしたらいいと思っている優しい人よ。この機会にヨッシーも友達になっちゃえば」


「お断りだね。平家は討ち果たす敵だ」


「ちっちゃい男ね! ならわたしも協力しない! お兄ちゃん、ヨッシーなんか放っておいて帰ろうよ!」


「……わかったよ。キララ無しでは静は助けられないからね」


――――――――――――――――――――

数日後、平安京・平教経邸


屋敷から管弦の音が聞こえてくる。門の前には敦盛とキララ、義経と弁慶がいた。

優介は離れたところで馬を二頭曳いて待機している。


「狂巫女が静御前に詫びをいれにきた。そうノリくんに伝えて」


門番は「あー、噂の」と言うと、すぐに取り次いでくれた。

四人が中に入っていくのを見て、優介は馬にまたがる。


しばらくすると屋敷の中から怒号がし、弁慶たちが門から飛び出してきた。すぐ後ろからは武士が追いかけてくる。その中には教経の姿もあった。


優介は二人を馬に乗せると平安京の外へ向かって逃げ出した。


――――――――――――――――――――


平教経は馬上から敦盛を睨みつける。


「義経と繋がっていたのか?」


「し、知らないよ。門の前で偶然一緒になっただけで、教経兄の客だと思ってた」


「紛れ込んだというわけか。源氏の腰抜けめ。此度は逃がさぬ! 敦盛、狂巫女の話は戻ってからだ!」


教経が郎党を連れて屋敷を見送ってから、敦盛は静御前の元に行った。


「静御前、この方が君と話したいそうだ」


「――前に敦盛様と組んでいたキララさん?」


「ここから先は僕はいないほうがいい。後は二人に任せたよ」



敦盛が去ると、女が被っていた被きを取った。


「まあ、あなたはこの前の――」


「義経だ。君を助けにきた。もうあんな奴に乱暴はさせない。僕と行こう」


静御前は敦盛の姿が見えないことを確認すると、義経の手を振り払った。


「馬鹿言わないで! やっと平家の公達に近づけたのに。栄華の道を邪魔しないでもらえるかしら」


「――え? 神社で嫌がっていただろ?」


「あれは教経様の気を引くためのお・し・ば・い。まあ、わたくしが上手すぎるから勘違いされるのもわかりますけど」


静御前は得意げに言った。義経は静御前の手を取る。


「平家は栄華の道じゃない。僕が滅ぼす。そして僕は日本一の英雄になる。その暁には君を妻に迎えたい」


「ご冗談にも程がございます。お気は確か?」


「たった今、僕は平教経を出し抜いた。僕には戦の才がある。二年、いや一年だけ時をくれ! 必ず君を日本一の嫁にする。君は美しく才能も豊かだ。平家の公達程度じゃふさわしくない」


義経がまっすぐ見つめ続けると、静御前の目の色が変わった。


「――本気のようですね。ええ! そうよ。そうですわ! わたくしほどの白拍子。平家の公達ぐらいじゃ満足できなくってよ!」


「よし! 身を隠せる場所に案内する」


義経は再び女姿の戻ると、静御前の手を引いて、屋敷の外へ向かった。


「――静、待っている間、これを僕だと思っていて」


義経は恋歌が書かれた歌札を静御前に渡した。


――――――――――――――――――――


平安京から数里離れた山の中で弁慶を降ろした後、優介たちは大輪田泊へ向かっていた。義経に変装したキララが言う。


「あの二人、上手くいくといいね。お兄ちゃん」


「屋敷から抜け出せさえすれば、奥州所縁の尼寺が静御前を匿ってくれる」


――奥州が名馬の産地で良かった。奥州馬でなければ、馬術に慣れない俺は追いつかれていただろう。


「アッくんとヨッシーが仲良くなって、源平の争いが無くなるといいのにね」


「難しいな。二人は陣営のトップじゃない」


「……なんとかならないかな、お兄ちゃん」


キララが胸に手をあてる。優介は知っていた。そこに敦盛の歌札があることを。そしてキララが何を思っているのかも。


「……行くよ、キララ。義経が戻り次第、奥州へ帰る」

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