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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
3.英雄義経編
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1183年1月 再会

日本海・鎌倉沖


小早を宮城丸に寄せてきた義経は、優介が許可する前に鉤縄を使って船に乗り込んできた。


「……鉄船は簡単に昇れないように造っているんですがね」


「隙を見つけるの得意だから、僕」


義経は四方の海を見渡す。


「見晴らしがいいね。戦場全体がわかる。優介、僕にも造ってよ」


「船足が遅くて戦には使えません。平和の船です」


「大きくて鈍足。囮には最適だ。馬鹿な敵は喜んで寄ってくる。僕が敵だったら、この船をどう落とすかなあ――」


こちらの話なんて聞いちゃあいない。義経は鉄船をどう戦に利用できるか、攻略できるかを分析しはじめた。恐ろしい男だ。


「あげませんよ。鉄船には大金がかかってます。これから稼がないといけませんからね」


「つまんないな。あ~、退屈でたまんないよ。戦に出るのは御家人ばかりで、僕は全然戦えない。兄上は御家人に気を使いすぎなんだよ」


「心配いらないって。ヨッシーは英雄になってバズりまくるんだから」


「ありがとう。キララだけだよ。そう言ってくれるのは」


この時期の頼朝は関東統一のため平家以外の源氏とも戦っており、自ら大将として出陣することも多かった。義経が表舞台に登場するのはまだ先になる。



「京へ行くのなら、僕も連れていってよ。どうせ鎌倉にいてもヒマだしさ」


「義経様が鎌倉から消えたのがバレたら、騒ぎになりますよ」


「へっちゃらだって。みんな僕のことを部屋住みの弟ぐらいにしか思っていない。バレても、兄上は優しいから許してくれるよ」


「あの頼朝がですか?」


「様ってつけてよ。初めて黄瀬川で会った時、兄上は泣きながら喜んでくれたんだよ。悪い人のわけがない」


「嘘泣きじゃなくて? 本当に涙を流してました?」


「しつこいなあ。もう兄上の悪口はやめてくれ。僕たちも優介とキララに負けないぐらい兄弟仲がいいんだ――お~い、弁慶。お前もこい!」



義経が小早に向かって声をあげると、荒法師が鉤縄を伝って登ってきた。


――あれが弁慶か。でかい。熊のようだ。背丈が七尺ぐらいある。


「武蔵坊弁慶と申す。おぬしのことは吉次殿から聞いている」


「というと、弁慶も奥州から?」


「ああ、秀衡様の命を受けた一人だ」


義経が頼朝の元へ向かう際、秀衡は奥州の若武者数人を従者としてついていかせた。秀衡の好意の裏には、鎌倉の内に奥州シンパを作るという下心がある。


「平家に見つからないようにしてくださいよ」


「心配無用さ。くやしいけど、まだ僕は小物だ。顔も知られていない。さあ、出航だ!」


「弁慶、いいのか?」


「止めても無駄。そういう御方だ」


――甘やかしてんなあ。後で怒られてもしらないぞ。


こうして、義経と弁慶を加えた一行は摂津に向かって船を進めた。途中、何度か海賊に遭遇したが、彼らの船では宮城丸を襲うことはできず、遠巻きに眺めているしかなかった。


―――――――――――――――――――

摂津国・大輪田泊


湊につくと、すぐに河船への積み替え作業が始まった。

といっても、優介たちはオブザーバーなので、実際にやるのは泰衡の代官だ。武器を平家に受け渡してから戻ってくるまでは数日かかるという。優介たちはその間に京へ行くことにした。


「優介、その紙の束をは?」


「奥州のキャンペーン、っていうか。えーと、良いところを伝える紙です。効果があがれば、秀衡様が俘虜を解放してくれます」


「ふーん、でもなんでキララの絵が描いてあるんだい?」


「フフフ。それはキャンペーンガールだからよ。去年は狂巫女でバズったけど、今度は正統派美女でバズってみせるわ。打倒・静御前よ!」


「へえ、キララより目立つ女子がいるのか。会ってみたいなあ」


――――――――――――――――――――

平安京


優介たちは平安京に入ると裏通りにポスターを貼っていった。

義経が京の変わりように驚いている。


「都は七年ぶりだけど、活気が無いね。人が少ない」


「まだ飢饉は続いています。皆、糧を求めて去ったのでしょう」


「ねえ、お兄ちゃん。なんで、わかりにくいところに貼るの?」


「平家に見つかれば、すぐ剥がされるかもしれないだろ。これが本当のステルスマーケティング、なんてね」


「つまんない」


手分けをして貼っていると近くの神社から笛の音が聞こえてきた。


「!? この笛、アッくんのだ!」


「それって、キララが京で組んでいた平家の御曹司?」


「うん、会いにいってくる!」


「僕も行こう」「では、某も」


「おい、ちょっと待て! コラ、弁慶まで!」



優介が紙の束を抱えて、神社の境内まで行くと、キララの叫ぶ声が聞こえた。


「ありえない! ありえないんですけどー!」


「ぜえ、ぜえ……。大声出すな。目立つだろ。ん? あれは――」


優介が見たのは、平敦盛の笛で舞う静御前だった。

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