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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
2.奥州奮闘編
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1182年11月 蝦夷ヶ島

奥州平泉・優介邸


鉄船造りが行われている間、優介は前から見ておきたいと思っていた蝦夷ヶ島(北海道)へ行ってきた。


「えー、いいな! 婚前旅行じゃん」


「今の北海道は観光地じゃない。函館に和人の住む地域があるから見てきたんだ」


優介は羨ましがるキララを誰もいない部屋に連れていった。


「……移住の可能性を探りにいった。住んでいる人は狩猟と昆布漁が中心の生活だったが、稲作できそうな土地もあった」


「えっ、お兄ちゃんは奥州を守るんじゃないの?」


「攻め込ませないようにはする。けど、戦になったら逃げる」


「それってダサくない? カッコ悪いよ」


「ダサくてもいい。人命優先だ。頼朝が大兵力で攻め込んできたら防ぎようがない」


「学校砦があるじゃん」


「あれは秀衡様へ言い訳するためのものだ。本当は砦の機能なんか学校に持たせたくなかった。砦で粘っても、戦が長引くだけで勝ち目は無い。結果、死者が増え、農地も荒れる。民が苦しむだけだ。そうだろ?」


「……なーんかモヤモヤする」


「その点、北海道は海で隔てられているし、頼朝も北海道までは攻めてこなかった。今、造っているのはいわばノアの箱舟だ――これは誰にも言っていない。俺とキララだけの秘密だ。いいな」


史実では鎌倉幕府対奥州藤原家の戦いは、一カ月足らずで終わっている。

藤原家や奥州の豪族にとっては残念なことだが、民からすれば戦に巻き込まれる期間が短いほうが良いに決まっている。優介はそう信じていた。


―――――――――――――――――――――

奥州・石巻湊


何度か失敗しつつも、年が明けるころには鉄船の一隻目が完成した。

全長20m、横幅12m。三階建ての矢倉があり、櫓の数は百丁。荷物を乗せなければ六百人は乗れる船だ。優介は船の名前を東北六県から取ることにし、「宮城丸」と名付けた。


進水式には、藤原一族を招待した。

秀衡が鉄船について質問する。


「まるで、海に浮かぶ黒鉄(くろがね)の城だ。速さはどれくらいになる」


「木造船の半分です」


「櫓の数も多い。これだけ人手がかかっては常の商売には使えぬ。馬鹿げた船だ。そなたしかこんな船を造ろうとは思わぬだろうよ」


「鈍足ですが危ない場所でも商いに行けば、利を独占できます」


「戦にも使えるのか?」


「藤原家の支援無しで造った俺の船です。戦に使う気はありません。もし、奪おうとなされるのなら、俺の手で沈めます」


「ハッハハ! 根に持っておるわい。案ずるな。欲しければ藤原家の金で造る」


秀衡の横にいた泰衡がイライラした様子で言った。


「優介、今すぐ船を貸せ! 武器を積み次第、出航する」


「強制労働している民の解放が先です」


「チッ、奥州の民と同様に扱う。それでいいだろう。平家がこの春に大規模な戦を考えている。早く行かねば商機を失う」


「相手は北陸の木曽義仲ですか?」


「――船造りをしていた貴様がなぜ知っている?」


「俺も密偵を雇っていますから」


もちろん、密偵など雇っていない。そんな金があれば鉄船造りに回している。

史実を知っているだけだ。


「泰衡よ、優介は商いでも成功しそうだ。仲良くしてみてはどうだ?」


「いいえ、こやつとは性に合いませぬ」


「良い家人になると思うんだがのう……」


「私は奥州人しか信用いたしません」


――秀衡の笑顔が曇ったのを、泰衡は気づいているのだろうか。それとも気づいていてわざとスネているのか?


「泰衡様、俺には鉄船を造った責任があります。乗せてもらいますよ」


「勝手にしろ。ただし船に何かあったら、貴様を海に投げ捨てるからな」


――――――――――――――――――――


秀衡たちは鉄船に満足していたようだが、優介は違っていた。


――もっと、もっと人を助けられるようにしないと。


船大工たちを集めて言った。


「よくやってくれた。この鉄船を五隻造ってくれ。次は倍の大きさを目指せ。時間がかかっても構わない。みんなで方法を考えてくれ。お前たちなら伝説を作れるはずだ」


「伝説? 船大工でも後世まで語り継がれるってことですか。そいつは愉快だ」


難しい要求を前向きに捉えられるのは、夢を持った若者の特権だ。船大工たちは文句を言いながら、どうすれば造れるのか、すぐに話し合いを始めた。


―――――――――――――――――――

数日後、日本海・鎌倉沖


武器を満載にして出航した宮城丸には優介とキララ、晴兵衛も同乗していた。


「もうすぐ鎌倉沖だって。告ってくれた頼朝さんは元気にしてるかなあ」


「告白じゃなくてナンパだ。あんな奴の名前を出すんじゃない」


「まだ殺されかけたのを根に持ってるの? あれは誤解だって」


「い~や、違う」


「――あれ、船が近づいてきたよ」


小早と呼ばれる小型船が数隻、近づいてきた。大きさは三分の一以下だが、高速なので宮城丸に簡単に追いつく。小早に乗っている武士たちは物珍し気に鉄船を見ていた。現在、奥州藤原家には平家から源頼朝の追悼の綸旨が来ているが、秀衡は受けたふりだけをして頼朝と敵対関係をとってはいなかった。


「気にするな。手を出してはこないよ。頼朝は平家と木曽義仲を気にしている。ここで奥州まで敵に回すほどバカじゃない」


「でも、こっちに向かって手を振ってるよ。うん!? あれってヨッシーじゃん! 元気してたー!」


小早の上で源義経が笑っていた。

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