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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
2.奥州奮闘編
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1182年3月 模擬戦

奥州平泉から数里離れた草原


平泉から数里離れた草原で模擬戦が始まった。

藤原泰衡が観衆のいる方向を指す。


ユーリ(由利)、見物人が思ったよりも多い。優介を殺すのは――」


「ビビってんのか? 遠くて見えねえよ。旦那は民に手でも振ってりゃいい――野郎どもいくぞ!」


由利維平が馬腹を蹴ると、泰衡の護衛十人を残し、九十の兵が後に続いた。

馬上で模擬戦用の先を丸めた矢を取り出し構える。


すると、固まっていた優介軍が竹の束を前に出してきた。

竹の壁で優介軍が隠れる。


「チッ、盾か。いくら俺様でもこの矢じゃ貫けねえ」


由利は弓を諦め、馬の横に付けていた棒に持ち替えた。


「敵は亀のように丸まっている臆病者だ。包み込んで潰せ!」


陣地の近くまで来たとき、兵の悲鳴が聞こえた。


「ユーリ殿! 空堀です! 次々と兵が落ちていきます」


「何ぃ! なぜ草原に堀がある!」


竹の束が動き、落ちた兵に覆いかぶすように投げられる。

優介軍はその上からシャベルで叩いていた。


「ふざけやがって! だが、亀の甲羅に隙間ができた。落ちてない者は集まれえ! 俺様が矢となり、敵陣を貫く!」


由利の馬が空堀を飛び越えると、優介の陣が下がった。


「退いたところで、騎馬からは逃げ切れねえよ!――チィッ! また堀か。うっとおしい! 知っていりゃ、こんなもん――どうした!?」


馬が棹立ちになる。堀から数本のシャベルが突き出していた。

陣地から優介が叫ぶ。


「ユーリを狙うな! 馬の胸と足を狙え! 今晩はやつの愛馬で鉄板焼きだ」


「伏兵か。戦の真似事で、家族を失ってたまるか!」


由利は馬から降りると棒を構えた。

泰衡軍の他の兵は空堀を飛び越えようとしたところに、伏兵にスネを思い切り叩かれ、空堀に落ちていく。


竹の束を持った兵が、由利を囲み、輪をジリジリと狭めていく。

由利がいくら棒をふるっても竹に跳ね返された。


「ユーリ、お前の剛力でも、もう無理だ。参ったと言え」


「もう勝ったような面してやがる。気に入らねえ、気に入らねえなあああ!」


太刀を抜いた由利が竹を縛っている縄を断ち切ると、囲んでいる竹の束が崩れていった。


「優介、ここからが本番だ。クズが何十人いようが俺様の敵じゃねえ」


「みんな、下がれ! やつは太刀を抜いた。本気で殺す気だ」


「オイオイ、ケチ臭いこと言うなよ。こっちは鬱憤が溜まりまくってんだ。少しは斬らせろよっ!」


由利が踏み込んで刀を振るうと、たちまち二人が斬られた。


「大将は俺だ! 兵を狙うんじゃない!」


「いい度胸だ、優介。だが笑えねえ。そのシャベルで俺様に勝つつもりか!」


由利の斬撃をかろうじてシャベルで受けると、ふらついた優介は堀に落ちた。追うように由利も堀に降りる。


「この堀を貴様の墓穴にしてやる。今さら逃げんなよ。後ろを見て見ろ。だんだんと細くなっているじゃねえか。もう行き止まりなんじゃねえのか。あー、やっぱりそうだ。笑わしてくれるぜ」


優介は立ち止まると、シャベルを槍のように構えた。


「何だその目は? 最後までイラつかせやがる。シャベルで太刀に勝とうなんざ!」


由利は太刀を振ろうとしたが、狭い堀のせいで堀の内壁に太刀が刺さる。

次の瞬間、優介のシャベルが由利の腹にめり込んだ。


「これしきのことで……」


「終わりだ。ユーリ」


由利の脳天にシャベルが叩きつけられた。


――――――――――――――――――――――


模擬戦は優介軍の勝利に終わり、観衆の喝采の中、優介は秀衡に迎えられた。

不服そうな顔の泰衡と由利が後ろに続く。


「父上! 優介は戦の前に空堀を用意しておりました。約定破りです」


「泰衡様、戦は軍を交える前から始まっている。ユーリがそう教えてくれました」


「何かしたのか、由利!」


「――挨拶がてらに何人かぶちのめした」


「余計なことを!」


秀衡はため息をつくと、戦場を指した。


「一週間前にここで戦うことは告げてあった。そなたは何もせず、優介は何ができるかを考えた。それに優介の兵が二人、斬り殺された。詫びをいれるのはそなたではないのか」


「な、なぜですか、私は奥州藤原家の嫡男ですよ」


「それがどうした! 戦に負けた時もそう言うつもりか!」


「ヒッ!」


「――もうよい、下がれ」


「優介。約定通り、さらに千の俘虜を解放しよう」


「ありがとうございます」


「その千人で軍を作るのだ。侍大将になれ」


「――お断りします。俺に戦は向いてないです」


「民はそうは思ってない」


秀衡が優介の手を持って高々と上げると、丘の周辺に「「「優介! 優介!」」」と、民の興奮した声が響き渡った。


――――――――――――――――――――


皆が去った後、泰衡は吉次と二人だけになった。


「吉次、泰衡は凡才だ。それでもわしはあやつが可愛い、見捨てる気にはなれん」


「親として当然のお気持ちかと」


「だからこそ、泰衡を補佐できる才を他国にまで求めているのだ。それをあやつはわかろうとせぬ――」


「心労お察しいたします。いずれ、泰衡様にもわかる日がきましょう」

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