3話 〖詳細不明〗
「アッハハハハハ!」
俺が森でゴブリンエリートにやられてきたことをユウに話すと、ユウは腹を抱えて爆笑していた。
ちなみにここはユウの店で今営業を停止している。
今思うとあのゴブリンエリートは完璧なカウンターを決めるためにずっと誘っていたように見えた。そしてその誘いに乗った俺はカウンターをくらって死んだというわけだ。急いでたから完全に釣られた。
「そんな笑う必要なくね」
「だってだって、ログイン初日でいきなりゴブリン達を虐殺して、ゴブリンエリートのところに突っ切って逃げようともしない奴なんてやばいよ」
「そうかな?夢中になってたから分からないよ」
「ふう、とにかく今度はちゃんと装備を整えてから行けよ」
「装備って言われてもなにを選べばいいか分からない」
「うーんじゃあ、これやるよ」
ユウはそう言ってインベントリから装備一式を出してきた。俺が付けている初期装備より強いだろうとは思った。とりあえず確認してみる。
「へぇーなんか強そうだな」
「当たり前だろ、これ〖特級〗の武具だからな」
「……………………はい?」
このゲームの装備や武器の価値はランク付けされており〖下級」〖中級〗〖上級〗〖最上級〗〖特級〗〖伝説級〗〖神級〗〖詳細不明〗と職業と似たような設定になっている。〖下級〗から〖最上級〗は高くするが店に置いてあることも珍しくない。
しかし〖特級〗から上はお目にかかることすら出来ない。レアなボスを倒したり、ランクの高い生産職の人に作ってもらうことなどしない限り手に入れることはできない。
なのにこいつは〖特級〗の装備一式を盗まれる心配もなしに俺に見せつけている。
「これ俺に見せていいの?盗まれたりしないの?」
戸惑いを口にする。
「これ?ああレンあげるのはこれじゃないよ。これは間違えて出しちゃっただけ」
「間違えて出すなよ。〖特級〗を持ってることがばれたら盗賊スキルを持っているやつに狙われるかもしれないぞ」
「もう狙われたよ、返り討ちにしたけど」
マジか。そういえばこいつ半年前にやり始めたって言ってたから相当強いかもしれない。
「で、くれるものってなんだ。装備か?」
「正解!まあ装備って言っても武器だけなんだよね」
ユウが渡してきた武器は初期の刀より長い刀だった。抜いてみると刃から柄の部分まで黒く綺麗な刀でなぜか見とれてしまった。
「気に入ったか?」
「ああ、もちろんだ」
「そりゃ良かったんだが一応説明欄を見てくれないか」
ユウに言われた通り説明欄を見てみると、とんでもないことが書いてあった。
【黒い刀】
等級〖詳細不明〗
装備補正
職業【武士】なら筋力上昇
「おい、なんだよ〖詳細不明〗って。押し付けじゃないか!」
襟を掴み問いただす。当たり前だ〖詳細不明〗の装備は珍しいが、人気がない。なぜなら〖詳細不明〗の装備は『解放』という、武器が〖上級〗以上のランクに進化することがある。その装備は他人に盗まれないようになり、しかも『解放』したプレイヤーにあった能力を持つようになり、かなりすごい等級なのだ。
なら何故人気がないのかそれはいつ『解放』するか分からないということ。すぐに『解放』する物もあれば永遠に『解放』されない物もあるそうだ。
「いいじゃん、レンは職業が『武士』なんでしょ?僕は刀とか扱いにくくて困ってたし。レンも綺麗だとか言ってたじゃん」
「はあ、分かったよ。貰っといておくよ、これならあのゴブリンエリートにリベンジできるかもしれないし」
「あとこれ『回復のポーション』あげるよ、必要だと思うから」
ユウがお詫びとばかりポーションをくれた。
「サンキュー、じゃリベンジに行ってくる」
「がんばれー」
そして俺はまたあの森に向かって歩いていった。
やっと黒が出てきた。