明るい未来が待っている!
2013年 髪を切りに行った時のお話
いつも通っている床屋がおもむろに言い出したのだった。
「アタマ用の電気マッサージ器買ったんだけど試してイイ?」
どうやら頭皮に関する色々な商品を購入しては客に試しているらしい。床屋も生き残るために色々な努力をしているのだ。いいよ、と言うと床屋は電気マッサージ器を使いながらサラリと聞き捨てならないことを言うのだった。
「ハゲにも効くらしいよ」
ちょっと待て、それは私の頭頂部がハ、、、いや、そんなはずはない!
しかしおでことは違い頭頂部のハゲは自分では気がつきにくい。誰かに指摘され、初めて気がつくのだ。それは学校の教室かもしれない、会社の会議中かもしれない、夕食後にくつろいでいる時かもしれない。その瞬間はいきなりやってくるだろう。
「あれ?薄くない?」
なんという破壊力だ!すでに涙目だ。戦意喪失だ。人は備えがあればある程度の衝撃には耐えられるものだが、いきなりの奇襲では防戦一方にならざるを得ないではないか。
「う、薄かねぇよ!何ってんだよ!!」
ああ、そんなことを言ってしまったら、敗北が決定してしまうではないか。ではなんと言えば良いのか。
「ふ、ちょっとキリスト教に傾倒してな、聖フランシスコ・ザビエルをリスペクトしているのだよ」
しかしたとえ何かに転化し、かわす事が出来たとしても、ハゲ始めている(かも)という圧倒的現実の前には、一時の時間稼ぎにすぎない。気にしていない風を装って、後頭部を手で確かめている時点で敗北は決定している。既になす術はなく、残っているのは悲惨な敗戦処理だけである。奇襲攻撃を受けてはいけない。その時点ですでに詰んでいるのだ。
なす術がない。
そう、世の中のハゲを見ると、一様に被害者意識を持っているように見受けられる。受身だ。俺は何も悪いことをしていないのに、なぜこんな目にあうんだ!その意識を一言で表わせば次の言葉になるだろう。
「ハゲられた!」
まるで「卑怯にもハゲの野郎が闇討ちしてきやがった!」と言わんばかりではないか。
その時点ですでに防戦どころか背水の陣である。本土決戦だ。玉砕覚悟の戦いだ。そうなる前に対処すべきではないだろうか。そうだ攻撃だ!攻撃は最大の防御なのだ!
ここに「大日本薄毛推進連合」が結成された。
合言葉は「ハゲられたのではない、ハゲてやったのだ」だ。
今、全人類男性を前にした世紀の演説が始まろうとしている!
諸君ッ!我々は堂々とハゲねばならない!これは全ての男性の希望となる思想である。胸を張れ!頭を光らせよ!世の中の価値観を変えるのだ!ハゲる事はカッコ良い事だと全ての国民に知らしめるのだ!さすれば我々には明るい未来が待っている!
ハゲを隠そうなどとは思うな!卑屈になるな!カツラを買うなとは言わん。しかし守りのためのカツラではない、攻めのカツラをかぶるのだ!スタイルの違うカツラを7個買うのだ。毎日服に合わせてカツラを変えるのだ。そうだ、これはファッションなのだ!おしゃれさんなのだ!ハゲを隠しているのでは断じてないッ!
だが、いくらハゲがそう叫んでも人々はさげすんだ目で見下げてくるだろう。
「だってハゲてるんだろ?」
その一言で形勢は逆転されるのだった。
だからこそ!ハゲる前から率先して頭を剃り、あるいはカツラをかぶる文化を世の中に浸透させる必要があるのだ。
立てよ諸君!今こそ君達の力が必要なのだ!
さて、次回から2回、女性向に書いた(オマエにそんなものが書けるのか?という疑問はともかく)お話になります。
次回「カレー、それはブラックホールの如く!」
お楽しみに!




