帰ってきたウンコとの4日間戦争
このお話をレビューを書いていただいた ひだまりのねこ さまに捧げます
2019年 過去最大の戦いを生き抜いた時のお話
私の体は燃費が悪い。
いくら食べても体は大きくならず、剣道では当たり負けるのが常だった。どう頑張っても体脂肪率は1桁、、、おっと!太りやすい体質の方から猛バッシングを浴びそうだが、それはそれでリスクを抱えているものなのだ。
ある日、友人7人が私の家でカレーを食べることになったのだった。もちろん作るのは私だ。私は焦った。7人分の白飯を用意するだと!?
当時の私は1食で3合の米を食べていたのだった。それが7人来る!24合の白飯をどうやって用意すれば良いというのか。焦った私は友人に炊飯器を借りまくり、何とか全員分の米を炊き上げたのだった。
ところがカレーを振舞ってみれば、皆1合しか食べないではないか。どういうことだ、遠慮するにもほどがあるぞ。ほら食べろよ、食べろって!しかし次第に解ってくるのだった、普通の人は1合しか食べないことを。
かくして14合の白飯を抱えた私が途方にくれたのも今は良い思い出だ。
たくさん食べるが血肉にはならない。では食べた食物はどこへ行くのだろう。
「ウンコ」
そう、ウンコがでかいのだ。
フードファイターを見るとき、私は同情を禁じ得ない。なぜなら彼らも食べた分だけ、ウンコになっているはずなのだから。誰か、彼らのウンコ事情を取材してくれないか。
彼らほどではないが、私もウンコには困っている。外出時にトイレを詰まらせ逃げたことは数知れず。高校生で痔を覚悟した。長いウンコは自然にとぐろを巻くことに感動し、ひとり、記録の更新に励んでいた。引っ越し先でまず行うのは公共トイレの水圧調査という始末。
そう、私はいつもウンコと戦ってきたのだった。今や食事量も減り、かつてのような強大な敵と対峙する機会も少なくなったが、そんな私が過去最大の戦役に身を投じたのはいつのことだっただろうか。
その戦いはいつものように始まった。
職場のトイレでウンコが流れなかったのだ。しかしそんなことで焦ってはいけない。私にとっては日常茶飯事、すでに根回ししてラバーカップ(スッポン)もトイレブラシも準備済みなのだ。私をなめるな、そこにいたのはプロの誇りと風格を備えた男だった。
トイレブラシで硬いウンコを潰して水を流す。おっと!水が逆流して便器からあふれそうになるが落ち着け!タンクの水は便器1杯分、あふれることなどありえないのだ。何度も押し込み、水を流し続けるとついに便器からヤツの姿は消え、水も透明度を増してきたのだった。ふふん、他愛ない、大したことはなかったな。
ところがどうも様子がおかしい。ヤツの姿は完全に見えなくなったにもかかわらず、水の流れは悪いままだ。水を流せば便器いっぱいまで水がたまり、じわじわと引いていく。中の配管で詰まったのか、往生際の悪いヤツめ。こうなるとラバーカップの出番である。
ラバーカップを便器に入れ、ゆっくりと押し込んだ後に引っ張ってみる。多少のしぶきが跳ねかかるが見くびるな。プロはそんなことでは動じないのだ。2度、3度と行うが状況は改善せず時間だけが経過する。
まずいな、今は勤務時間中、そして私は責任ある立場なのだ。トイレに行ったまま帰ってこない責任者を心配して誰かがやってきたらどうするのだ。私は「ウンコマン」の汚名を着せられるのではないか。私の部署は「ウンコ部署」か。これはいけない、一時撤退だ。
こういうこともあろうかと、私は常に人の来ないトイレで用を足しているのだった。抜かりはない。放置しても見つかる危険性は少ないはずだ。トイレの清掃員がやってきたら、、、その時はシラを切り通すのみ!
その日、私は時間を見つけてはトイレに立ち寄り便器を覗き込む羽目に陥った。
毎回、確かに流したはずなのに、戻ってみると便器の穴からヤツが顔をのぞかせている。帰ってくるんじゃない!誰かに見られたら、ウンコを流し忘れたと思われるではないか。なぜそんなところで私の帰りを待っているのだ。嫁か!嫁気取りか!三つ指ついたって受け入れんぞ!
その後も小競り合いは続いたが、事態は一向に良くならないままその日を終えたのだった。
翌朝戦場に戻ると、やはり便器の穴からヤツが顔を覗かせている。この野郎、敵情視察とはいい度胸だ。トイレブラシで押し込みながら水を流す。便器に水があふれてくる。待っていろ、今日中に決着をつけてやるからな!
ところが昼になると戦況は一変した。私のもとへやってきた部下が、こう言ったのだった。
「トイレ、詰まらせちゃいました、、、」
な・ん・だ・と・!
場所を聞いてみると果たしてそこは紛れもなく私の戦場だった。トイレが詰まっていることなど露の先ほども知らない部下が、その便器でウンコをしたというのだ。よりによってなぜこの便器を選んだのか。今更ながら全員に通達しなかったことが悔やまれたが、だからといって通達書類に何と書けば良かったというのだ。
まさかここにきて敵に援軍が現れるとは。それにしても部下のやつ、なぜ私に相談に来たのか。私がウンコのプロであることがバレているとでもいうのか。スパイは誰だ。後で粛清せねばならぬ。
現場を確認するとその便器には茶色い水があふれそうになっていた。しかも水が引いていく様子が全くない。もはや手がつけられない状態だ。私はやさしく部下の肩に手を置いた。
「気にするな、お前の不始末は私がつけてやる」
私は全力で部下に罪をなすり付けることにした。しょうがないなぁ、だって部下のウンコがデカいんだもん。みんなだってトイレを使うだろ?勤務時間中にトイレに籠っているのは、みんなのためにトイレの詰まりを解消しているんだぜ?ああ、こんな汚れ仕事、部下のためでなければ絶対にやらないんだがなぁ。やだやだ。
部下の尊い犠牲のもとに、私は時間という武器を手に入れたのだった。これで ヤツとの戦いに専念できる!本気の私を見せてやるぜ!
ところが戦局は膠着したままだった。一度水を流すと便器にたまった水が引くまで2時間もかかったのだ。これでは何もできないではないか。水が引くのを待ってラバーカップを使い、水を流して確認する。永遠とも思われる戦いが始まったのだった。
翌日になると部下が泣きごとを言い始めた。
「これもうダメですよ~、業者を呼びましょう」
なんだと?ふざけるな!自分の不始末ではないか!あきらめるんじゃない!万が一業者を呼んで、詰まりの原因が部下のウンコでないことが発覚したらどうしてくれるんだ!
自分の罪を隠蔽するため、弱腰の部下を叱咤激励する。今までの努力は無駄ではない!この戦いは部下を大きく成長させることだろう!しかし部下も疲れ切っているようだ。ここで私は最終兵器の投入を決断するのだった。
「次亜塩素酸ナトリウム溶液」
漂白剤に含まれるそれは有機物質を分解し、ヤツの陣営に多大なるダメージを与えることだろう!恐れおののけ!そして去れ!帰ってこなくていいからな!
水が引いた便器に漂白剤の原液を流し込む。ウンコが真っ白になっていく様を想像しながら2時間待ち、ラバーカップで吸引したあと水を流すのだ!見よ!我が力を!奴らがバラバラになって浮いてくるではないか!
ところがやはり水が引いていかない。便器にはバラバラになったヤツらと共に茶色い液体が満ち満ちていた。そんな事でひるむと思ったら大間違いだ。なめるなよ、連続攻撃をくらえ。便器の汚水をひしゃくでバケツにくみ取り、漂白剤を投入して2時間つけおきする。私は地道な局地戦を繰り返した。
夕方、幾度かの戦いを経て水の透明度が増してきた。いける!思えば今日、何も仕事をしていない気がするがいやそんなことはない!机の上に書類がたまっているような気がするがそれも錯覚だ!人には仕事より大切なものがある。明日は最終決戦を仕掛けるのだ。今日は早く休んで英気を養うのだ。飛び散ったヤツの破片が気持ち悪くて風呂に直行したいわけでは決してない!
翌朝、私は一人戦場に舞い戻る。目の前には便器、そして一晩つけおきした漂白剤。いよいよ最後の時が来たのだ。私はラバーカップを持ち静かに便器に押し込む。明け方の奇襲は戦いの基本、ここで一気に決めるぜ!
ガボッ!
確かな手ごたえと共に配管が貫通した気配が漂う。やったか?恐る恐る水を流すと水はあっけなく流れていった。とめどなく流れる水のきらめきに部下の顔を思い出す。やったぞ、お前の仇は私がとった。
4日間にわたる長き戦いが幕を閉じた瞬間だった。
改めて ひだまりのねこ さま、レビューをありがとうございました。
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さて、次回は妻をカワイイと言っていただいた「しましまにゃんこ」さまに捧げる妻とのエピソード「朝食をめぐる陰謀」です。
お楽しみに!




