day>>5 Friday
前書きは不要でしょう。
にゃっはっはー!
時は世紀末!
辛くも生き残ったチーム山吹は、襲い来るゾンビどもを薙ぎ倒し!
今日も世界へ繰り出すのだ!
チーム山吹にとっては13日の金曜日なんて、15日が日曜日ってくらいの意味しか持たないのだっ!
日曜日だったとしてももう世界は終わっちゃってるけどね!関係ないけどね!
「なにやってんの?」
「終末ごっこ!」
「小学生かっつうの!」
「うるさいなあ。ユイはいちいち細かいよ。」
「そうか?そんなつもりはないけど。」
汚れたリュックを背負ってユイは拠点を出る。
「ソラ、ご飯探しにいくよ。新しいスーパー見つけたから、保存食くらいならあるかも。」
「待って待ってー。」
ある日突然終わってしまった世界で、当たり前みたいに生きる、二人の話。
「うわ。これどっからはいるのさ。」
「んー?どれどれ?このスーパーは業者用の搬入口があるはずだから、そこから入る。」
「オッケイ。崩落注意ね。」
ぶかぶかの安全靴に登山系のジャンパーを着こんだ彼女らは慣れた足取りでどんどん奥へと進んでいく。
「およ?ユイユイ。見てみ。」
「なんだいソラソラ。おぉ。駄菓子屋あるじゃん。賞味期限いけるのあるかな?」
「ソラソラってめちゃくちゃ言いにくいね。お菓子だし、ふ菓子系以外なら大丈夫じゃない?」
「いやぁ、なんせ『あれ』から二年くらいだからなぁ。お、キャラメルなら大丈夫じゃない?」
「飴も大丈夫でしょ!あとまだ一年と七ヶ月だよ!」
「なんか塩っぽいの欲しいな。っていうか、こんな世界で日付数えてるの、ソラくらいじゃない?」
「いいねぇ。お漬け物貰ってこようか!」
ユイがお菓子をリュックに詰め終えた頃には、もうソラは背負い直して歩き出していた。
「日付、さ、数えてないと悲しくなっちゃうから。私たちがどれくらい生きたかも分からないまま死んじゃうのは、いやだから。」
「そうかもな。」
「あと誕生日が分かる!私18歳ー。」
ソラは子供みたいににこーっと笑みを浮かべる。
「私さ、金曜日生まれなのー。確かマザーグースだと…なんだっけ。」
「え?なにが?」
「ヨーロッパのマザーグースだよー。月曜日生まれは器が大きくて~♪みたいなやつ。」
「なんじゃいそりゃあ。私がなんでも知ってると思うなよぉ?」
「うーん。もやもやするなあ。」
「そもそもマザーグースとは何ぞや。」
「マザーなグースだから、子守唄みたいな?」
「グースは童話じゃなかった?」
「え?」
「だから、英語でGooseは童話って意味じゃなかったかなって。あんまり覚えてないけど。」
「じゃあ、お母さんの読み聞かせ絵本みたいな感じかな?さっすがユイ、あったまいい!」
「まあ、近いんじゃない?あ、カッターの刃、補充するから取ってきて。」
「ふぉいふぉい。あー…全部錆びてるや。錆び取る?」
「いやいいや。今日は食べ物だ。」
食品売り場の棚には、もう既に何も残っていなかった。
「あちゃあ。誰かとってったなぁ。仕方ない。」
「あぁー。もう。ユイのせいでお漬け物がたべたいっ!」
「私のせいにするなっ!はぁ。とりあえず手分けして探そう。何かあったら笛で。」
「ふぉーい。」
こうして、チーム山吹のリーダーソラはお漬け物を探しに、助手のユイは刃物と研ぎ石をかいにいきました。
…まあお金持ってないから勝手に持ってくけどね!
ソラはるんるんで倉庫へ向かいました。
るんるんるんるん♪…
薄暗い倉庫だって、なんか湿っぽい空気でも、ひんやりした風が吹いても、今日が13日の金曜日でも全然、全然全然全然平気だもん。
倉庫の奥には黒い箱があって、明らかに怪しい。しかしながら一度気になってしまったらもうあとには引けない。見るしかない。上にかかっている黒いビニールをそっとめくります。
「……ちらり。」
ん?白い細長いのが一杯…………
「何してるの?」
「ぴぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!」
「あわわわわ!?大丈夫!大丈夫だから!」
どうどう。と言っているのを見てみると、普通の男の人でした。
お化けなんて思ってないよやだー。取り乱してもないよー。
「もやし覗き込んで、何してたの?」
「もやし?これもやしなの?」
「そ。暗くしないといけないからね。」
「ふうん。まあ知ってましたけどね!!」
「へえ。知ってたのかぁ。じゃあわざわざ説明しなくてもよかったね。ごめんごめん。」
「……」
この人には冗談が通じない見たいです。
「君、名前は?」
「え、えぇと。チーム山吹の月宮です。月宮ソラ。」
「そうかー。俺は金森ユウ。…チーム…なんだろな。」
「なるほど。チームなんだろなさんですか。心に止めておきます。」
「うーん。まあいいや。ちょうどいい、せっかくだしうちの拠点来なよ。」
つっこんでくれない……
うれしいお誘いでしたが、私は断ります。
「すみません、私はこれからお漬け物を探してユイを拾って帰らなきゃ行けません。」
「漬け物…糠漬けならあるけど。」
ぐりんっ!
私は帰ろうとした頭をひねって振り返ります。
「お酒、ありますか!」
「ちょっとならね。」
「ならば行きましょう!未成年とか!こんな世界に意味をなしません!今日は13日の黄金時代ですぜぃ!」
13日の金曜日っていうのは別に殺人鬼の日じゃなく、キリスト受難の日らしい。
まあつまりキリスト教じゃない私には関係ないってことだけど…そこは『旧』日本の良いところ、他文化の取り入れということでご愛嬌。
「そもそも13日は一番金曜日になる確率が高いとかだっけ…」
お。錆びてないカッターあるじゃん。
その時、後ろから足音が近づいてくる。
ソラか。
「あー。漬け物見つかった?……!」
ソラじゃない!?
既に手の届く範囲にまで近づいているその男。前髪で視線を隠している。
とっさに足を払って腹を掌底で距離をとりつつ錆びた鋸を手に取り一足で距離を詰め…!
組み敷くような形で鋸を首に当てる。
「誰だお前。」
「………」
相手は無言。
「答えろよ。」
「……………」
不思議に思ってよく見ると、死ぬほど脂汗をかいていた。ほんとに滝のように。
そうすると彼は一言。
「………殺さんとってください…」
あ、こいつは普通の、害のないやつだな、と。
気づいてから、すごく気まずくなった。
「っあぁ~♪美味しいー!最高やぁ~」
「楽しんでくれたら何より。おやつもらっていい?」
「いーよー」
「キャラメルって意外と賞味期限長いなー。知らなかった。」
シェルター、と説明する他ないような半球状のドームの中、40人ほどの人が暮らしていた。
「チームなんだろなの方々の拠点は大きくて静かですねー。」
「君の拠点は?」
「私はユイと一緒に暮らしてて………ユイ!忘れてたよ!」
「勝手に忘れないでくれ。」
「おわっ!ユイ!なぜここに!」
「それはこっちの台詞だって。私はこの子につれてきてもらったの。」
「わお。目がないね。」
すると前髪の長いその子は
「目はあるわ」
とつっこんでくれた。
「ユウ…こいつこえぇよ…」
「ん?なにがあった。」
「じつはね………」
「だからぁ。悪かったって!にしても、生き残りがこんなに居たのか。」
「まあな。君らもここに住むか?」
「その方が良さそうだね、そうしよう。ソラー。荷物取りに行くよー。」
こうして、二人はしばらくここで過ごすことになりました。
チームなんだろなとチーム山吹、この44人が中心になって新暦の世界を作っていくのは、かなり先の話。
御一読感謝いたします。
この物語はフィクションですっ!
……だよね?