甘美な溶ける牢獄にて
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この『聖なる夜には灯火を』を読むのをオススメします。
「もうそろそろ暖かくなるのかな……」
部屋が寒いせいか思わず口に出してしまっていた。
もうそろそろなんて言ってもまだ2月の中旬ましてや今日は
“バレンタインデー”だ。
私はいつも通り制服に腕を通す。
部屋と同様、制服までもが冷たくなっており寒さがより一層際立った。
いつもは下ろしている髪を今日はあの人のことを思って結わえる。いわゆるポニーテールと言うやつだ。
学校へ行く支度なんてのは昨日のうちにやっておくようにいつもはそうしているけれど今日だけは違う。
私はキッチンへと向かった。
冷蔵庫を開け、今日のために作った特別なものを取り出す。
私はそれを一度胸に抱き、鞄の中にしまう。
そして私は、
「いってきまーす」
いつもより少し大きい声でいってきますを言って私は学校へと向かう。
──────
「あっ、そういえば今日バレンタインって覚えてたか?」
一緒に登校している白峰大城が、急に言い出した。
俺はため息混じりに、
「覚えてるよ。いつもこの時期になると朝のニュースでも取り上げてるくらいだろ。あっ……一般常識だろ」
「別に気を使わなくていいぞ」
「ごめん」
何気ない会話の中に俺は触れてはいけない、いわゆるタブーと言うやつに触れてしまった。
あれはクリスマスだったか、うちの学校の生徒がクラスメイトが一人死んだ。朝のニュースでは毎回と言っていいほど取り上げられ、割と田舎の方の学校にも関わらずマスコミやらが多く来ており、先生達も対応が大変そうだった。
結局犯人はうちの学校の生徒指導の先生だった。なんでも自首したそうだ。
先生と慧斗君?だったかなとの接点はあまりあるようには感じなかったので俺は少し不思議に思っていた。
その死んだ慧斗君の親友がこの白峰だって言う話だ。
それから、あまりニュースの話はお互いにしなくなっていた。
「それでさ、幸樹は誰かくれそうな相手いるのかよ?」
「さーな」
口ではこういったものの男、上村幸樹は一人だけ気になる女子がいる。
その子の名前は松下四葉。
クラスが始まってからずっと気になっていた子だ。
身長は俺より低く、150cm後半だった気がする。髪はミディアム?とかいうそうだが、そう言うとイメージがつきやすいだろうそれでいて茶髪だ。茶色い髪は地毛らしい。いつも下ろしていて、一度彼女がポニーテールにして学校に来た日は正直死ぬかと思った。性格はおとなしが、友達はおとなしい子ばかりではなくかなり活発な子が多かったりする。
松下さんと距離を縮められたのは学校であった夏期講習で隣の席になったことが一番でかい気がする。
クリスマスにこそ誘えなかったけれど、初詣に松下さんも合わせて男女数人で行けた。
今ではよく話す仲になっている。だから、本命は無理だとしても義理だけでも期待していいよな……
そんなことを考えながらも白峰と話していたら学校には着いていた。
少し期待しながら下駄箱を開ける。
当たり前だと思うが、中には何も入っていなかった。
すると白峰から、
「まぁ、そうガッカリするなよ。まだバレンタインは終わったわけじゃないんだし」
「慰めなくていいぞ。別に落ち込んでなんかないし」
なんて言うが内心かなり落ち込んだ。
(でもまぁ、下駄箱に入っているものなんて食べたくないし……)
なんて思って心を紛らわす。
靴をはきかえ、教室へ向かおうとすると後ろから声が聞こえた。
「あ、あの……おはようこうき君」
松下さんだった。
その隣には松下さんといつも一緒にいる一崎美希がいた。
彼女一崎美希は金髪のショート。前までは黒髪で染めてはいなかったが、夏の初めの頃にあった林間学校が終わったくらいに染めていた。うちの学校の校則はかなり緩いくあまりにも酷いものでない限り大抵許される。
身長は俺と同じくらいなのかな?白峰よりは小さく、160cm前半くらいだろうか。
性格は男女問わず仲良くしてくれる普通にいい人である。
松下さんの次に白峰といることが多く、多分付き合っているのだろう。俺はそういうのにはかなり疎く、気づくことはほとんどないが長い時間一緒にいればわかるものだ。
「おはよ大城」
「ああ、おはよう美希」
何気ない挨拶だったが、俺の中では少し羨ましかった。
(ん?でも今確か松下さんはおはようって)
しっかり返さなくてはと思い、
「ま、松下さん……おはよう」
多分震えていただろう。何故だろういつもなら簡単に出来るのに今日は違うみたいだ。
俺はその場に何となく居られなくなってしまい、
「さ、先行ってるね。行くぞ白峰」
「わかったよ」
じゃっと小さく手を出し、教室へと向かった。
この時俺はふと思った。
(今来たってことはまだチョコを貰える可能性はあるってことか?)
顔に出ていたのか分からないが、
「大丈夫。きっと貰えるよ」
白峰では無い誰か女の子の声がした。
その子は、二宮咲音さんだった。
「え?な、なんの事だよ」
「なんでもないよー」
前髪で少し隠れる瞳でウィンクをして答えた。
彼女は先に教室へと入っていった。
「二宮さんは謎が多いよな」
笑いながら白峰が言う。
確かに彼女は謎が多い。
分かっていることなんて視覚情報だけだ。青みがかった黒髪ショート。どこからか溢れてくる天使のような笑顔、成績はかなり上の方だった気がする。
確か慧斗と少し仲がよかった印象があったがそれは今では確かめるにも確かめられないものになってしまった。
そんな彼女に続き俺達も教室へと入る。
──────
私の声も震えていたけれど彼の声も震えていた。
その震えを止めるように私は鞄の中に入っているものをそっと確かめるように優しく握る。
「大丈夫。バレンタインはまだ終わってないよ」
「で、でも……」
「んーなら放課後に渡すってもう決めとけば?」
「なんで?」
「いつまでもいつ渡そういつ渡そうなんて思っているよりも、決めた方が楽でしょ?」
「そうだね」
みきちゃんに言われた通りに私は放課後に渡すことに決めた。
私にとっては彼とは“最後のバレンタイン”だから、ちゃんと渡さなくちゃ。そして私の想いも伝える。
さっきは髪型に気づいてくれなかった。彼はいつも私のことを真っ直ぐ見てくれるのに。今日は真っ直ぐ見てくれないのかな。
私は見ているよあなたのことを真っ直ぐにね。
「何考えてるか分からないけど、ぼーっとしてると四葉遅刻するよ」
そう言っているみきちゃんはもう既に靴をはきかえ、少し離れ歩いていた。
私はそれを急いで追いかけた。
教室に入るとちょうどチャイムがなった。
席に座り少し離れたこうき君の方に目をやると彼は、何故か上を見上げていた。
幸いしろみね君と席が近かったので聞いてみることにした。
「し、しろみね君」
「ん?どうしたの松下さん」
「こ、こうき君何やってるだろう……」
こうき君を指さして言う。するとしろみね君は少し笑い、
「松下さんからのチョコを待ってるんだよ」
「え?!なんで、なんでしゅってるの!」
思わず噛んでしまった。そして声が大きかったらしく、担任の先生から注意を受けてしまった。
「なんで知ってるの……」
「普段の君たちを見てれば何となくね。あいつ割と心弱いほうだから上げないなら何も言わないで、もし上げるんだったら何か言った方がいいよ」
「わ、わかった」
その間も彼はずっと上を向いていた。
きっと今度は
──────
(やっぱ貰えないのかな)
なんて思いながら上を見上げていたら、聞き覚えのあるチャイムが聞こえてきた。
そのチャイムでホームルームが終わったのは分かったが、何となくまだぼーっとしていたら、左後方から聞こえてくるものに俺の神経は全て持っていかれた。
「こ、こうき君……」
先程の体制のまま、彼女の顔を見る形になってしまった。
数秒考え、とんでもないことをしているのに気づき、立とうとしたが足を滑らせ椅子から落ちる。
ガシャンとでかい音を立てると同時に俺の背中に衝撃が走る。
「いったぁ!」
思わず大きい声で叫んでしい、教室中の視線を集める。
近くに松下さんもいるのになんだか居た堪れなくなってしまい彼女に、
「ご、ごめん。また後で」
「え?こ、こうき君?!」
俺はとりあえず屋上へと向かった。
この学校の屋上は他の学校とは違って、常に解放してある。
飛び降り自殺の事件なんて最近ではよくある話なのにそんなんで大丈夫なのかと思うが、それ以上にロマンがあるからいいのかななんて思っていつも考えるのをやめている。
手すりに両腕をのせ遠くを見つめる。屋上からは学校近くの海が見え、そこそこいい景色だ。夏なんかはここから花火大会も見れる。
(あっ、そういえば去年はみんなで行ったっけ……)
今になって思い出したが、松下さんと……いや松下さん“達”と去年一緒に神宮花火大会という夏祭りを行った。
この夏祭りはこの街、木薩で最も大きな行事で、地元民はもちろんのこと他の地方から来る人も多く居る。
そんな懐かしいことを思い出していると、後ろから声が聞こえた。
「おーい、幸樹」
白峰のようだ。やつの手元を見てみると、何か2つ物を持っているようだった。
まさかと思い聞くと、
「お、おいその手に持ってるものはなんだよ」
「ん?これか?っていうかそんなつまんないこと聞くなよ」
「え?」
「一限現文で図書室だって。急ぐぞ」
何故だろう。手に持っているものが、何かの小包に見えてしまい分かっていながらも聞いてしまった。
「チョコ持ってんじゃないのか?」
「なんでだよ」
白峰はかなり不思議な顔をしていた。
なんてよく分からないボケをかましていると、チャイムがなった。
「やばい!急ぐぞ」
「お、おう」
2人駆け出した。
──────
(ごめんまた後で、か……もしかして他の女の子に呼び出されてる?!)
なんて考えて廊下を歩いていたら後ろから頭を叩かれてしまった。
「いたっ!」
「大丈夫だよ、いつもあいつのこと見てるんでしょ?」
みきちゃんだった。その後ろにはさきねちゃんもいた。
確かに彼の事はいつも見ている。でも彼のことを思う人は全く目に入ってはいない。だからこそ私は怖いんだ。
私がみきちゃんに声をかけれても不安そうな顔をしているとさきねちゃんも声をかけてくれた。
「大丈夫。四葉ちゃん私もちゃんと気持ちは伝えられたし、今でも仲良くできてるし」
「みきちゃん、さきねちゃん……私頑張るよ!」
「うん!その意気だよ」
次の授業が終わったらちゃんとこうき君に伝えないと。
そう考えていたらチャイムが聞こえてきた。
「やば!急ぐよ2人とも!」
みきちゃんが先頭に立って走り出した。
私達が教室に着くとこうき君達も遅れてやってきた。それとなく先生に謝って適当な席に座る。
ほとんどの授業は男女別で行うけれど、この現代文の授業はひとつのグループでお気に入りの本を紹介する授業だって先生が言っていた。
グループのメンバーはこうき君としろみね君、さきねちゃん、みきちゃん、慧斗君とあと私の6人グループ。
知ってる人ばかりで私は凄く嬉しいし、こうき君に私のことを知って貰えると考えると心が踊った。
今日はまだ調べ段階で、図書室の本を使っている人も多くいるので図書室での授業になったらしい。
先生の指示でみんな作業に取り掛かり始めた。私もそれに続き、作業に入る。
──────
「幸樹はなんの本にするんだ?」
こいつはいつも変な時に話しかけてくる。近くに松下さんがいるので俺は少し声を小さめに話し、本を見せる。
「これだよ」
俺が選んだ本は実写映画化されるくらい人気の恋愛ものの小説だ。
冬休み中にちょうど読んでいたので、これから新しい本を読むのも面倒くさいのでこれにした。
「ふーん」
「なんでそんなつまんなそうな反応するんだも」
「松下さんと同じ班なのに大胆だなと思ってな」
「あっ」
完全に忘れていた。
こんなの俺がこんな感じの恋がしたいなって直接伝えているようなものじゃないか。
(本を変えるべきか変えないべきか……)
そんなことを考えていると松下さん達の声が聞こえてきた。
「四葉はなんの本にするの?」
そう一崎が聞くと松下さんは“これ”っといって俺の耳に彼女の本の名前は届かなかった。
本の名前は届かずとも本命は届くといいな、なんて思っていると、不意に俺の本を取り上げられた。
取り上げられた先に視線を送るとそこには二宮さんがいた。
「君はこの本にするの?」
何か言いたげな顔をして聞いてきた。
「変えるけど……」
白峰といい二宮さんにまで言われてしまったら何となくこの本で続ける気が薄れていた。
「私は別にこのままでいいと思うけど……君がそう言うなら」
「それってどういう」
彼女から出た意外な言葉に驚きを隠せず思った言葉を発してしまった。
「私もその小説読んだけど女の子はそういう恋憧れると思うからね」
そうして彼女は俺の耳元まで近づき、
「四葉ちゃんのこと気になってるんでしょ?」
「えっ?」
──_──___─
「何やってるの?さきねちゃん」
松下さんの声が聞こえた。
その声はいつもとは違く、いや聞いたことの無い彼女の声だった。
少し怖くなって彼女の方をむくと、彼女は涙を流していた。俺はどうしたらいいか分からず二宮さんの方を見る。
二宮さんは何も言わず彼女に近づき、俺の時と同じような形で彼女の耳元で何かを囁いていた。
するとさっきまで流れていた涙は消え、笑顔に変わっていた。
俺は思わず胸を撫で下ろす。彼女の見たことの無い表情、聞いたことの無い声。
一瞬だったが、彼女が全くの別人に見えてしまった。
俺が気づいた頃には二宮さんはどこかへ消え、隣にいたはずの白峰も消えていて松下さんだけが残っていた。
松下さんはなにか言おうか言うまいか迷っているようだったのでこちらから聞いてみることにする。
「え、えっと……松下さん?ど、どうしたの?」
「あ……あの、きょ、今日放課後がっ、学校の裏門で……」
「お、おう……わ、わかったよ」
とてつもなくぎこちなくなってしまった。
上手く言葉を返せていただろうか……いや返せていなかっただろう。というかもうなんて返したかも覚えていない。覚えていることは“今日放課後学校の裏門で”それだけだ。
その会話をしたあと松下さんはすぐに走ってどこかへ行ってしまった。何も考えず立ち止まっていたら現文の先生に背中を小突かれた。
俺は小さく“すみません”と言って作業へと戻ることにした。
──────
『私の好みじゃないから大丈夫だよ』
──────
松下さんと約束をしたからその後の授業は比較的に落ち着いて取り組めた……のか?
今日はやけに先生に怒られている気がするが、それは気のせいであることを願う。
いつもの事だが何となく松下さんのことを目で追ってしまう。今日は多分その頻度が高かったのだと思う。
二限から三限、四限、五限、六限目とあっとゆう間に今日の授業は終わっていた。
この後にいつもなら俺は部活があるのだが、最近はめっきり行っていない。
理由なんて些細なことかもしれないが、部内政治にいらいらして行かなくなっていった。部活について少し松下さんに相談に乗ってもらってさらに距離が縮まった気がするので部活にも一応感謝することにする。
帰りのホームルームが終わり、松下さんの方を見ると彼女はもうそこにはいなかった。俺もあの場所に向かおうかななんて思って、鞄を肩にかけて行こうとすると肩から鞄がずれ落ちた。
それは自然的に落ちたものではなく、誰かによって故意に落とされたものだった。
相手は白峰だった。
「な、なんだよ」
「松下さんに会いに行くのか?」
「な、なんで知って……」
確かにさっきも思ったが、今日はほぼ松下さんのことを見ていたし、図書室のやり取りを聞いていたのだとしたらこいつが知っていても不思議ではない。
「まぁ、そうだけど」
「そうかなら……」
白峰が何か言いかけた途端後ろから誰かが近づいてくるのが見え、そいつは俺達の会話を分断するように、顔の前に何かを出してきた。
白峰に近づいてきたのは一崎で、出してきたのは何かの小包だった。
「ほーらよ大城。私からのチョコだ」
「あ、ああ。ありがとう。それで幸樹……」
「おいおい、彼女がせっかく手作りしてやったのに反応薄いな」
そういい一崎は白峰の耳たぶにかぶりついた。
「いたっ」
白峰は小さく痛がり、一崎の肩を軽く叩き彼女の口を耳から離さしなにか耳打ちをしたあと、
「引き止めて悪かったな。松下さん待ってんだろ?行ってこい」
「?あ、ああ」
(少し不思議なものを見せられたが、やっぱりあの二人って付き合ってたんだな)
俺は足早に裏門へと向かう。
──────
「さきねちゃん、もう落ち着いたから大丈夫。ありがとね」
「そう?じゃぁ頑張ってね!」
そう言うとさきねちゃんは帰って行った。図書室で、こうき君に近づいているから一瞬考えた事が本当に起こったのかと思ってすごく焦ってしまった。
でも彼は絶対に来てくれる。だって……
「松下さんまった?」
「こ、こうき君……」
──────
お互いに黙り込む。俺はただ何も言わず、彼女のことを見つめていた。
俺から何かふっても良かったのかもしれないが、生憎何も浮かばなかった。
なので彼女の言葉を待つことにした。
その間俺の鼓動は早くなって行った。
この音が
──────
この音が
______________
──────
あなたに届いて欲しい。
______________
──────
「あ、あのねこうき君これ……」
そう言って彼女は可愛くラッピングされた袋を鞄から取り出した。
俺はそれを短く“ありがと”と言って受けとる。
俺が再び口を開こうとすると彼女が、
「あの、、こうき君。じ、実は……こうき君のことずっと前から好きでした!」
え?い、今なんて?
「だから、そ、その……付き合ってください!」
あまりのことに俺は何も言えず動けなかった。
だが、言う事なんてものはもうとっくに決まっていた。
「俺も、好きだよ松下さん」
彼女は目から綺麗な宝石を落としていた。俺はそれを拾う形で、彼女の顔に触れる。
どうしても止まらないようなので、彼女を胸に抱く。
頭を撫で落ち着かせる。
そうすると彼女が俺の耳元で、こう囁いた。
「く、苦しいよ」
「ご、ごめん」
そう言って優しく、彼女を離す。
彼女がまた何か言いたそうだったので今度は問いかける。すると、
「私の作ったチョコ今食べて欲しい」
「食べてもいいのか?」
「ぅん」
俺は迷わず先程貰った袋を開け、中に入っているチョコに手をかける。
すると、彼女が
「ちょっと待って、私が食べさせてもいい?」
その問いかけに断る理由なんてなく俺はすぐに答える。
「う、うん」
今開けた袋を彼女に渡し、その中からひとつ取り出したものを口の中へと運ばれた。
とてもあまくとけてしまいそうだった
「美味しいよ松下さん。作るの上手いね」
「そんなことないよ。……あのね実は私引っ越すんだ」
「え?ほんとに?」
「うん」
せっかくきょうからつきあうというのにかのじょはすぐにきえてしまうのか?
「だからね、私そのチョコにお願いを込めて作ったんだ」
「どんな?」
『あなたが永遠に私を愛してくれますようにって』
──────
「何考えてたか知らないけど。邪魔したらどうなるか分かってるよね?」
美希が俺にそう言う。
「う、うん」
「まぁ直ぐにやめたから今回はゆるすよ!」
首伝いに赤い蛇が滑り落ちた。
END
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