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義妹と畳は新しい方がいいよね  作者: 杉村風太
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4-2 「聞いちゃダメ」 ”Don’t ask. Feel!”

「夢で私に何かしてたんですか」


母親譲りの天然にもほどがある。そんなまっすぐな曇りのない目で、そんなことを聞かないで。ウソはつきたくないし、ノーコメントは認めたのと同じだし。


「ごめんなさい。その追求は勘弁してください」

「どんなことをしていたのか、少し興味があります」


持たなくていい、そんな興味。瑞希(みずき)さんの清純な心の目が汚れる。


「わたしもお人形ではないですよ」


はい、わかってます。俺もお人形さんにキスする性癖はありません。

充希(みづき)のせいで、また、瑞希さんとの登校が気まずいタイムになってしまった。


 啓太に完敗して以来、おれは考えていた。同級生だか義妹だか彼女だかわからないあいまいな状態はよくない。順番がおかしくなってしまったが、告白し、つきあおう。

 待て。OKされること前提なんて、いつからおれはそんなずうずうしい人間になったんだ。まあ、いい。


「瑞希さん、いつもと違う経路でもいいですか」

「はい」


 うちの生徒は学校まで最短距離になるよう手前でショートカットする。生徒たちが通ることはまずない道に向かった。それでも念のため、俺は周りにひとけがないこと、野獣が潜んでいないことを確かめてから、切り出した。


「お話があります」

「どうしたんですか。急に」

「瑞希さん、好きです」

「はい」。


 おお、瑞希さんの心もほんの少しは読めるようになってきたぞ。これは、「知ってますけど、それが何か?」という顔だ。


「好きです。だから、おれとつきあってください」

「はあ? 私たちつきあってなかったんですか」

「ええっ?、いつの間につきあってたんですか」


 だって昼休みに一緒に弁当を食べたり、2人だけで出かけたりしたこともないじゃないか。キスをして、キスをされ返されたらは恋人昇格とかいうルールがあるんだろうか。

 いきなり出ばなをくじかれたが、気を取り直して。


「あの、手を握ってもいいですか」

「いいですけど」


瑞希さんはあきれたように手を差し出した。


「許可を取るんですか?」


断りもなく唇を奪ったくせに何をいまさらという意味だろうか。


「じゃあ、キスしてもいいですか」


瑞希さんははじけたように笑い出した。笑いの発作で肩がけいれんし、息が苦しそうだ。


「そういうのは、聞いちゃだめです」


 聞いちゃダメ。

レジェンドと呼ばれる偉大なコメディアンが若手にだめ出しするときの決めぜりふだ。

何という厳しい言葉だ。聞いちゃダメなら、いつどうやればいいんだ。

バカじゃないから意味はわかる。OKかどうか言葉に頼らずに察しろってことだろ。目とかしぐさとか。”Don’t think. Feel!”(考えるな。感じろ!)みたいなことだろ。

しかし、瑞希さんの心を読む術はまだ入門3日目ぐらいだ。間違えたらどうする。「イヤ」なんて言われたら立ち直れない。


 けっこう遠回りしたが何もできないまま学校の近くまで来てしまった。

まあ、いい。あせることはない。だって、これまでのことはノーカンとして考えてみろ。おれみたいのに奇跡的に初めて彼女ができたとする。手を握るまで1週間、ファーストキスに2、3カ月はかかるだろう。実力不相応に優秀な成績を修めていると余裕を持っていいはずだ。


 啓太の視界に入る前につないだ手を離した。同級生にはバレてもかまわないが、ウワサになって充希に伝わるのはヤバイ。今度はどんなかれんちゅーきゅー(注:苛斂誅求。むごく、厳しい税の取り立てのこと)が待っているか。

<きいちゃダメ>

 「ラブコメの主人公ってどうしてこうカンが働かないんだろう」と、いつも思ってましたが、自分で書くとやっぱりそうなりますね。

 きいてはいけないに決まってるじゃないですか。

「一人きいちゃダメギャグ」みたいなことはしたことはあります。いつかシーンに使うかもしれないので、どういう遊びかは書きませんけど。


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