【Prologue】はるか、アウェイクニング
【Black】
目を開けると見知らぬ場所に寝ころんでいた。
「あれ……?」
ここは、どこだ。
沈み込んでいく身体を支える茶色の革張りのソファから上半身を起こし、急に冴えた目で辺りを見回す。四角い部屋。黒ずんだ蛍光灯は光を灯すこともなく、ただ天井にしがみついている。コンクリートの壁に、申し訳程度の内装。グレーの事務机と、ガラス張りの机。中に古い茶碗や湯呑が並べられている、背の低い戸棚――それくらいのものしかない。
とりあえずここから出ようと思った。
立ち上がって、黒ずんだ茶色い木の扉へ向かう。ドアノブをひねり――開かない。鍵穴らしいものもない。試しに力いっぱいに殴りつけたり、デスクチェアを投げつけたりして見ても、扉はびくともしなかった。ここから出ていくことは、出来ないようだ。
くすみだらけで、ガムテープやマスキングテープであちこち補修された窓ガラスから差し込んでくる光が目を焼く。鍵は開かない――外の景色を窺い知ろうにも、その窓は異様に高い位置に据え付けられていて、それもかなわない。
びよん、とバネの軋む音がして、心臓が少し跳ねる。白くて円い時計の文字盤は、四時半を指していた――午前、午後? そもそも、この時計が正しく時を刻んでいるという保証は?
訳が分からない。
すると、扉が乱暴にバタンと開かれた。そこには黒い服を着た背の高い男がひとり。わたしのことを見ると、少しだけ目を大きく開き、それから溜息をついた。
「――――、目を覚ましたのか。そのまま眠っていればよかったのに」
「あの……、」誰だか分からないけれど、扉の外からやってきたことには違いない。「ここ、どこですか。いま何時ですか……」
「やっぱり、薬くらいじゃ駄目なのか」
男は質問に答えなかった。右腕を軽く振るうと、袖の裏に隠されていた何かを手に握りしめた。それは真っ黒い、液体の詰まったような何か――
「変身」
真っ黒な衝撃が狭い部屋にどっと流れ込んだ。わたしの身体を叩いたそれが、インテリアをがたがたと揺らし、蛍光灯を破裂させる。降り注いでくる破片の向こう側に、それは立っていた。
真っ黒い、鱗を何重にも重ねて、無理やり人間に押し付けて作ったような形。両腕の鋭く巨大な鉤爪と、太く伸びた尻尾。真っ赤に光る瞳、その身体に在って不自然なほどに白い牙の隙間から漏れる、灼熱の吐息が白く、しゅうしゅうと漏れる。
さっきまで男だったものが、じっとわたしを睨みつけながら襲いかかってくる。鋭い爪を振り下ろした。咄嗟に身をよじってもかわし切れず、脇腹が大きく裂けた。そこから大量の血が噴き出してくる。
何だ?
どうして襲いかかってくるのだ、と思っているうちに顔を掴まれ、固い床に押し付けられた。頭蓋骨がめりめり音を立てて、潰れていくのが分かる。立ち上がろうとしても、押し付けられる力があまりに強くて、わたしの身体はびくともしない。このままだと頭蓋骨ごと脳を押しつぶされて、わたしは死んでしまう。
死んでしまう?
そう感じたとたんに、身体の奥の方がぎゅうっと熱くなった。不意に、押し付けられる力が消え、男が飛びずさる。
わたしはちょっとくらくらする頭で、よろめきながら立ち上がった。
「おいおい、冗談だろ!」
男が声を上げた。腹部から、赤い液体が滴っている。
わたしはふと、男の視線を感じる辺りに目をやってみた――左腕、肘の辺りから皮膚を突き破るようにして、黒い刃が現れていた。先端には赤い色をした、男の血が付着している。
「ライター無しで変身できるのか! この、バケモノめ……!」
「ライター……?」
男はなおもわたしに飛びかかってくる。鉤爪を振りかざし、わたしの顔を狙ってくる。左腕から生えた刃で咄嗟に受け止めると、鈍い金属音がした。同時に、どすっという鈍い音が、わたしのお腹の辺りから聞こえてきた。
目をやる。
心臓のちょうど真下くらいの場所に、黒くて太い何かが突き刺さっていた――それは男の背骨から連なるように生えた尻尾だ。矢印のように逆立ったそれを身体から引き抜くと、身体から力が抜け、わたしは崩れ落ちていく。側頭部に衝撃が走った。男に蹴り飛ばされたのだと分かったときには、わたしは戸棚にぶつかって激しい音に包まれていた。
ガラスや茶碗の割れた破片が、身体に降り注いでくる。
「くそっ、」男が足音もあらわに、「くそっ、くそっ、くそっ! 何で俺がこんな目に合わなくちゃならねえんだ、死ね、死ね! 早く死ね!」
と、何かを憎むような言葉と共に、何度もわたしを蹴りつけ、殴り、切り裂いた。身体がばらばらになっていくのが分かる。まだ、全部繋がっているけれど、内臓もいくつか潰れて、骨ももう何本も折れている。
この人はどうしてわたしを痛めつけるんだろう。
わたしはちっとも痛くないのに。
「ハァ、ハァ……死んだかよ」
「死んでないです」ごぼっと口から何かの液体が漏れた。男は黒い鱗に包まれた顔を、その鱗ごと大きくゆがめて、よろめいた。「死んでないです、まだ……」
顔を踏みつけられて、壁に身体を押し付けられる。眼球の奥で暗黒が散った、たぶん、どっちかの眼が潰れて、破裂したのだ。
「とっとと、死んでくれよぉ……俺のために、こんな仕事、とっとと終わらせて、帰りたいんだよぉ、俺はぁああ!」
この人はわたしに、死んでほしいらしい。
でも、わたしは――
「いやだ」
何故か、死ぬのは、嫌だった。
死ぬのは嫌だ。
あれ?
身体じゅう、あちこちが――痛い。
急に。
突然やってきた。痛い。痛い。
折れた骨が痛い。裂けた肉が痛い。破裂した胃袋が痛い。潰れた目が痛い。破けた鼓膜が痛い。殴られて痛い。蹴られて痛い。叩かれて痛い。切られて痛い。刺されて痛い。貫かれて痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛
痛みで気を失っていたらしい。
目の前で真っ赤な肉と血の塊が、オフィスの床に浸透していくのが見えた。それが最初に見たものだった。身体中がべとべとして、不快だ――手が真っ赤になっている。たぶん、あの血の塊を浴びてしまったのだろう。気持ち悪い。なにより、臭い。どうにかして、これを洗い流してしまいたかった。
わたしの身体から、痛みが既に消えている。
脇腹にそっと手をやる――裂けていない。目を片方ずつつぶってみる――視力も元に戻っている。あちこち、ぜんぶ、元通りになっていた。
なんで?――と、そこでわたしの手に握り続けていたものに気が付いた。黒い液体の詰まった、ガラス瓶のような何か。血にまみれて、仄かにあたたかい。さっき、男が取り出したものとそっくりな形をしていた。中に入っている液体は、瓶のなか、三割くらいしか残っていない。絡繰り仕掛けのような金属の蓋の横に、指で押し込めるくらいのスイッチがあった。
はっと気が付いた。これがライターだ。火を点けるときに使うあの道具だ。でもどうして、こんなものをこの男は持っていて、その男が持っていたものをどうしてわたしが持っているのだろう?
ひとつ目の前にあった確かなことがあった。
扉が開いている。さっき男が開けてくれたからだ。わたしはそれをくぐって、狭い廊下へ出ると、幅は狭く、急な階段を見つけた。下へ、下へと伸びている――設計ミスみたいに張り出した大きな梁をくぐって、注意深く下って行った。どこまでも続いていくかのように思われるほど長い階段を下りきると、エレベーターホールがあった。
赤い絨毯に足を取られながら、下向きの三角のボタンを押す。鈍いモーターの音と共にケイジがせり上がってくるのが感じられる。
わたしはなぜか握り続けていたライターをもう一度見た。さっきの男は、これのスイッチを押した瞬間に、あの黒い怪物になった。わたしもこれを使えば、さっきのような怪物になってしまうのだろうか?
チン、という音と共にエレベーターが到着した。
ゆっくりと扉が開く――すると、そこには先客がいた。さっきの男と同じような、黒い服を着た男が三人。ひとりは白髪の初老の男、もうふたりは幾分か若い男だ。わたしと目が合うと、ぎょっとしたような表情をしておののいた。
「な、なんだ!」
「チッ、」長い髪を後ろで束ねた男が、「あの新入りめ、しくじったのか……! やっぱり、俺が直接出ていれば……!」
「社長、お下がりください!」もうひとり、眼鏡をかけた男が初老の男を庇うようにして前に進み出る。「ここは自分たちが!」
ふたりはそれぞれに、ポケットからあれを取り出した。黒いライター。わたしが手に握っているものと同じものだ。
「変身」
「変身!」
ふたりがそれぞれスイッチを押す。黒い炎に包まれながらケイジを飛び出し、襲いかかってくる――わたしは手に持った同じそれを握りしめた。恐ろしい形相で向かってくる男たちから身をかわそうとしているうちによろめき、かちっと、手の中で何か軽い感触があった。
身体が急にすっと冷たくなって、心臓だけがやけに熱い。身体が黒い炎に包まれて、
はっと瞬きの瞬間に、目の前の景色は一変していた。そこは血の海。三人の男の死体。
赤い絨毯がさらにどす黒く、赤い色に変わってゆく。ひとりの男は身体を三つに引き裂かれてその辺に転がり、もうひとりの男は「くしゃっ」と丸められたようにあちこちが歪にひん曲がってエレベーターの扉の隙間に引っかかっていた。何度も扉が閉じようとしては男の身体にぶつかって、また開いて、を繰り返している。そのエレベーターの中では、あの初老の男が心臓を真っ黒なナイフで一突きにされ、息絶えている。ワイシャツにべっとりと、赤いシミが広がっていって――と、思ったら、ぴくぴくと身体を震わせながらわたしを見た。
「ば、バケモノ……め……」
「バケモノ……わたしが?」
「く、そ……だからわしは言ったのだ……怪物など……魔法少女、など……」
魔法少女――
その言葉を言った瞬間だけ、彼は、わたしに強い感情を向けた。怒り、悲しみ、恐れ、恐怖……どれかは分からない。確かめようと思っても、男は今度こそ動かなくなって、白目をむいて泡を吹いていた。
それぞれの男の傍らには、黒いライターが転がっている。反対に、私が持っていたライターは既に中身が空になりかけていた。それを確かめた瞬間に、握りしめていたそれはひとりでに砕け散って、灰も残らず消えてしまった。
「魔法、少女」
その言葉が妙に引っかかった。魔法少女、わたしが、そういう存在なのだろうか。
三人分のライターを手に取り、男をケイジから蹴り出して、エレベーターのボタンを押し、扉を閉じた。真っ赤な地図状のグラデーションが生まれたケイジが、ゆっくりと下へ、下へと落ちていく。ふと、そこに黒い革の塊が落ちていた。それは財布だ――さっきの初老の男が落としたものらしい。
エレベーターは適当な階で止まった。扉が開くと、そこには誰にもいない……静かで、真っ白な廊下。歩いたそばから、真っ赤な足跡がわたしのあとを追いかけてくる。
何枚もある扉を手当たり次第にくぐり、進んでいくと、シャワールームと書かれた扉があった。わたしは取りあえず、身体にべっとりとこびりついた血を落とそうと思って中に踏み入り、ライターと財布を手荷物入れにそっと入れてシャワー室へ入った。
カーテンを開くと、水垢でくすんだ鏡がある。そこに血や、臓物で髪をべったりと濡らした、わたしの姿があった。
はるか。
わたしの名前がそこに書いてある気がした。
そうだ、わたしは、はるか。黒い髪、紫色っぽい目、血でべっとり汚れた身体……これが、はるか、だ。そう、鏡の中から言い聞かせているみたいだった。
あたたかいシャワーで血を洗い流し、石鹸で念入りにこびりついた臭いを消し、白いふかふかのバスタオルで身体を拭いた。脱衣所のバスケットに入っていた浴衣を羽織り、すっきりしたところでライターと財布をポケットに入れてシャワールームを出た。
わたしのつけた赤い足跡をたどってエレベーターへ戻る。開いた扉をくぐって、「1」と書かれたボタンを押し、閉じていく扉を見た。と、その瞬間にけたたましい警報が耳をつんざいた。思わず身体が縮こまる。
「なに? なに?」
『ただいま火災が発生いたしました、施設内の皆様は、係員の誘導に従って速やかに避難してください。繰り返します、ただいま火災が発生いたしました……』
というアナウンスと共に、エレベーターは急停止し、扉が開く。あちこちから人の悲鳴や、叫び声が聞こえてきた。けたたましい警報、人の悲鳴。
エレベーターから降りると、何人もの人がわたしの横を通り過ぎて、我先にとエレベーターに乗り込んでいく。ぎゅうぎゅう詰めになって、ぶー、ぶー、と重量オーバーを告げるブザーが鳴っても、誰も降りようとしない、むしろ、どんどん奥へ奥へと押し込まれていく。
「早くしなさいよ!」
「順番だろ!」
「お前、降りろ!」
「押すなって!」
という喧々の罵詈雑言。
ぼんやりと立つわたしの手を、小さい何かが引っ張った。
「こっちです! 急いで!」
わたしの肩くらいの背の小さな女の子が、わたしの手を掴んで非常階段へと走っていく。わたしはよろけて転ばないようにしながら、それについていった。エレベーターホールからは、まだ、さっきの声が響いていた。
非常口から出たとき、わたしは、いままでいた建物がホテルだったということ、そして火災というのは嘘偽りなく火災で、地下からごうごうと燃え盛っていることを知った。周囲の野次馬が携帯のカメラを向け、消防隊が必死に消火活動を行っている。
「危なかったですね」少女はわたしの手を握りしめながら、「災害時にはエレベーターやエスカレーターを使わず、階段で避難する。基本中の基本です」
「でも、さっきの人たちは……」
「……、ほんとうは、すぐ近くの非常階段に案内すればよかったんです。でも、ここまで火が燃え広がると、もう中には入れませんね……」
その手は震えていた。
わたしの手をぎゅっと握りしめたまま心底から悔しそうに唇をかむ少女に、わたしは言った。
「ありがとう」
「い、いえ……、とっ、当然のことをしたまでです」
毅然と答える少女は手を解くと、服の裾で汗を拭った。
「わたし、はるか。あなたは?」
こういう時は自己紹介をするものだと思った。
「麗です。日高麗」
すると、少女は急に血相を変えて耳をそばだてた。ぴくぴくと猫のそれみたいに耳が揺れる。ひゅうと、一陣の風が吹き抜けた。
「はるかさん、それじゃあ、私はこれで失礼します! また、どこかでお会い出来たら嬉しいです」
そう言って麗と名乗った少女は風のように走り去っていった。
わたしはそれを何となく見送ってから、取りあえず、今着ているよりもましな服が欲しくなったので、ひと目をそれとなく避けながら歩きだした。懐に入っている財布の中には、いくらかのお金がある。これだけあればどこかで、何かしらは買えるだろう。




