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はじまり


 多くの肉片と様々な色をした血が混じり合い、地面がドス黒く濁っている。

 そんな異質な地面を下に、上空には二つの影が浮かんでいる。


「ほんと君達ってばぶっ飛んだ思考回路してるよね」


 少しだけ幼さを感じさせる声で、魔女は言葉を紡ぐ。

 右足は既に原形がなく、左腕は二の腕から先が消え、身体中に重症をおっているにも関わらず、魔女は平然としている。


『………………、…………。』


 魔女と退治する『異質なバケモノ』は、口を開くがその声は空には響かず、魔女だけに言葉を刺す。


「あははっ、まぁ確かに、こんな状態なら普通は、もう何も出来ないよね。でも残念でした。この勝負はもう私の勝ちが確定してるんだよ」


 魔女は目の前の異質なバケモノに向かって、嘲笑うかのように口角を上げる。

 異質なバケモノは、この状態でも尚笑う魔女に対し、自暴自棄によって精神がイカれたのだと考えていた。しかし、上空に、正確にはもっと上の宇宙そらに、異常を感知する。


『…………、…………。……………………。……ッッ!』


「あ、気付いた? あはは! 君達ってばそんな顔も出来るんだね! 最後に最高の思い出ができたよ。ありがとう」


 魔女は静かに、右手を空へと掲げる。

 瞬間、二人の頭上を覆い尽くしても広がり続けるほどの魔法陣が展開される。異質なバケモノは、それを打ち消そうと対抗をするが、魔法陣の広がりは止まらず、遂には世界を覆い尽くす。


『……!! ………………!!!!』


「なんだこれはって顔をしてるね」


 魔女が、もう一度笑う。


「これはね、私達の命そのもの。君達には絶対に到達し得ない、生命の究極とも呼ぶべき魔法。対抗策は今のところ存在しないよ」


『…………、……………。………………!!』


「自爆? そうだよ? 君達を殺そうと思ってる私が、自分の命を惜しむとでも思ってたの?」


 その堂々とした振る舞いは、異質なバケモノがこれまでに感じたことのない恐怖を与え、思考を硬直させる。

 そんなバケモノを前に、魔女は自身のタイムリミットが近いことを悟る。


 ゆっくりと目を閉じ、魔女はこれまでの出来事を思い出す。

 多くの仲間がいた。

 多くの仲間が死んだ。

 辛い思い出も楽しい思い出も、全てが鮮明に思い出される。


 全ての思いを胸に掲げた手を振り下ろし、魔女は自らの名と使命を告げる。

 

「私の、私達の名は、七曜の魔女!! この世界を愛し、未来を守る者!!!!」


『……………………!! ………………!!!!』


 その言葉は空を斬り、世界中に響き渡る。


「それじゃあ、一緒に死のうか!!!!」


 魔女の発動させた世界を覆い尽くす魔法が、二人を、世界を光で包み込む。

 視界が白く染まる中、魔女は満面の笑みで光の中へと消えていく。


 この魔法が、未来を勝ち取り、新しい世界へ繋がることを信じて。

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