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第九話 ジーク君と名状しがたい○○

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。


ギリギリ!ギリギリセーフ!なんとか今日中に更新できましたーw

良かったら今日も暇潰しにお使いください。

★★★



「あれは、いったいなんなんだ?」

 

「ぬぅぅ。凄い魔力」


「武器から魔力を感じるって事は――もしかして魔剣?」


「魔剣だと!?あれがか!!……ありゃー、どっちかっていうと――」


「……棍棒?」


「……それだ!全然、見た事ねぇ形だけどな」



 急にジークの掌に現れたそれは、片方は白、もう一方は黒。どちらも手のひらに納まる大きさの物体だった。

 外側が微妙に透明なのか、中には液体(?)みたいなものが、三分の一くらいタプタプしてて、一見ポーションが入った入れ物の様にも見える。


 じっくりとジークの右の手にあるのをよく見てみると、少し表面が白く染まっており、良く冬場にお世話になるホット飲料コーナーで見かけるタイプの形状だ。確か280mlくらいのサイズだったと思われる"それ"は、ぴょこっと手足の様な部分が少し伸びて握られている。


 また、ジークの左手の方も同様で、少し表面が黒く染まってて、薄く青いラインが入っており、こっちは右手のよりも若干スマートな形で、OLさんが朝にオフィスでちょっとした果汁ジュースを飲む時に見かけるタイプ。確か190mlくらいのサイズだったと思われる"それ"が、ぴょこっと手足の様な部分が少し伸びて握られている。



 —―そう。ジークの手にあったのは、"名状しがたいペットボトルの様なもの"であり、そのどちらにも手足があるのだ。


 当然手足があるので、それらはムクっと起き上がると、ジークの手からぴょこっとジャンプした。

 "名状しがたいペットボトルの様なもの"達は大地に降り立つと、彼らは軽やかな着地で決めポーズをし、つぶらなキャップ顔を上に向ける。

 

 目がどこにあるかはわからないけれど、目と目が合っている気がしたのでジークはタレ目でニコッと笑顔を向けた。


 すると、彼らは嬉しそうにピョンピョンしだして、どっちもジークの周りを回っては引っ付いて、嬉しそうにわちゃわちゃしている。小動物みたいで可愛い動きだった。



「あー。凄いね君達。動くね」


「「「「………」」」」


 ジークはしゃがんで、ジャンプしてわちゃわちゃしてるペットボトル達の相手を楽し気にしている。

 あれかな?手も足もそこまで長く無いからジャンプの方が移動が楽なのかな?とか観察モードだ。


 一方、アイード達は――絶句。目はこれでもかっ!っと見開かれている。

 『え、なにあれ?わかる?』『………』『だよね、わかんないよね。』『生き物なのか?』『さぁ違うんじゃない?』と言葉が出ないのでアイコンタクトだけで会話している。


 そんなアイード達の様子にようやく気付いたジークは、自分の武器である彼らに挨拶を促した。


「あー、みなさんすみません。えっと、紹介しますね。彼らがボクの武器です。ほら、挨拶して挨拶。挨拶できる?うん。そそそ。はい、良く出来ました。よーしよしよしよし。」


 ジークの声に合わせて、ペットボトル達はペコペコっとお辞儀をして、それから小さいお手てで敬礼。


 ちゃんと挨拶が出来たわちゃわちゃ達を褒めてあげると、嬉しそうにジャンプしているのでこれまた愛らしい。傍にいたバ〇ンスボールとも仲良くわちゃわちゃしている。


 そんな微笑ましい姿を見て、ようやく復活したアイード達はなんとかジークに声をかける。



「ジーク君。あのそれは、ぶ、武器なのかい?」


「はい。自慢の武器です。可愛いでしょ?」


「う、うん。可愛いとは思うけど、それで戦えるの?」


「もちろん!彼らは強いですよ!」


「あの……もしダメじゃなければ【鑑定】使ってみてもいい?」


「え、それってもしかしてステータスが分かる魔法ですか?」


「う、うん。そう。鑑定魔法って呼ばれるやつ。無属性系統に属する魔法なんだけど、無属性魔法に適性がある人は比較的簡単に覚えられる魔法なの。……その子たち鑑定してもいい?」


「ほぅ、なるほど。どうぞどうぞ!」


「じゃあ、早速。そっちの黒い子から」


 黒い子と呼ばれたスマートな方がぴょんぴょんとポーフェの傍へと寄っていく。

 

☆☆☆


名前: マルク


種族: 魔剣

性別: 女の子

年齢: 0歳


特技: 魔法使うよ!


☆☆☆


「えっと……名前は、マルクちゃん、でいいのかな。魔剣みたい。あと女の子みたいだね。魔法が得意みたいだけど、細かいステータスは見えなかった」


「魔剣か……魔剣って、性別あったのか……」


「ぬぅぅ。ある。のかな。でも、可愛い」


「……げ、元気だな」


「じゃあ、今度は白い子の君も鑑定していいかな」


 白い子と呼ばれたホット飲料スタイルの方も、前転コロコロしてポーフェの傍へと寄っていく。最後には決めポーズも忘れない。


☆☆☆


名前: エキス狩り棒


種族: 聖剣

性別: 中性

年齢: 0歳


特技:ビタンビタン!


☆☆☆


「えっと……えっとぉぉぉ。(なんか問題児っぽい子がキタぁぁ)こ、この子は――あ、せ、聖剣みたいね!それで、お名前がえきすかりぼう……」


「なに!?エクスカリバーだって!!」


「おいおいおいおい!マジかよ!!」


「あの伝説の聖剣……」


「みんなごめん。私の滑舌が悪かったかな。良く聞いて、エキス・狩り・棒・ちゃん?らしいわ。この子の性別は中性……特技はビタンビタン……ごめん、何言ってるか分からないことだらけだと思うけど、鑑定を使った私が一番分からないことだらけなんだ。」


「「「………」」」


「そうかー。君がマルクで、君がエキスなんだねー。よろしくねー。はいはい。よーしよしよしよし」


 アイード達が何度目になるかわからない沈黙の中、魔剣のマルクと聖剣のエキスはジークに引っ付いてわちゃわちゃしてくるので、また撫でて可愛がってあげる。



「結局よ、一応、聖剣と魔剣なんだよな?俺には歩く棍棒にしか見えないけど、そいつら戦えるのか?」


「ガングさん、この子達は強いですよ。侮ってもらっては困ります……あー、その顔は信じてませんね。それだったら、ガングさん、戦ってみますか?」


「ほぉぉぉ、よし、かかってこい!試してやるぜ!!」


「お、おい!ガング」


「よし、じゃあ。エキス、お願いできるかな?」


「ジークくんまで……え!?二人もか。」


 止めなければ!と言うアイードを、ポーフェとメイシィが止めて首を横に振る。「好きにやらせてここは実力を見るべき」と言っているようだ。

 

 ジークがお願いすると、エキスはガングの方を向いて、手をチョイチョイと可愛い挑発を見せる。

 その視線はどちらも怪しげな光を帯びている。

 


「ちっこいのくせに威勢だけは良いみたいだな。お前は武器ってことだから、俺は当然ジーク本人を狙うぞ!それでもいいんだろう?ジーク」


「はい。もちろんです!……ですが、いいんですか?」


「ん?なにがだ?」


「下です。下。」


「下?……げっ!?」



 ガングが下を見るといつの間に近寄って来たのか分からないが、エキスがもう既に左足にくっ付いていた。そして一瞬、瞳的な部分が黄色く怪しげに輝いたかと思うと、ガングの脳内には直接何かが聞こえた様な錯覚が起こる。



(戦場において敵から目を離すとは、愚かの極み!!天罰執行!!……あと、ファミ〇キください)


(こいつ直接脳内に……てか、よくわかんねーけど!そんなもんねぇよ――おおおおおおおおお!!??)



そして、エキスはその小さな体では考えられない程軽々とガングを持ち上げ、釣り竿でキャスティングする時の様なしなりと共に、ガングを地面へと2回程連続で叩きつけ、ビタンッ!ビタンッ!と言う音を響かせた。



「ゴフッ……なん……だ。なにが……起こった……」



 持ち上げられてから地面に叩きつけられるまでがとんでもない速さで、ガングは自分の身に何が起きたのか分からなかったが、既に身体中からは鈍い痛みが広がっている。これはどう見ても重症であった。



「うわ。……エキスー。もういいよー帰っておいでー。今度はマルクお願い」



 ジークにそう言われた、エキスはガングから手を放してピョコピョコジャンプして戻ってくる。代わりに今度はマルクがガングの所へ行き、傷ついて動けない身体をぺシペシと殴っている。一見すると追撃をかけているようにしか見えないが、マルクにぺシペシされた部分からガングの傷があっという間に治っていくのが見えた。


 結局止める暇もなく決着し、呆気にとられるアイード達だったが、ガングの無事を確認するとホッと一息ついた。



「あれが、……ビタンビタンだな」


「ん。あんな酷い攻撃初めて見た。オーガに捕まれて叩きつけられる人より悲惨な気がする」


「それに……いつガングの傍に寄ったのか私には全く見えなかった。ちっちゃいから油断してたのは認めるけど、あの子やばいね。それにマルクちゃん?も範囲は広くなさそうだけど回復魔法が使える。あれ、中級下位の回復量はあるかな……あと、一番気になるのは、あの子たちってもしかして【召喚】されたのかしら?もしかしたらジーク君は【召喚士】なんじゃないかな!――どう?そうでしょジーク君!」


 ポーフェの推理にジークは微笑みつつ首を横に振る。


「いえ。ハズレです。」


「……じゃあ!君のジョブはなんなの?」


「僕は……『旅人』ですかね」


「旅人?そんなジョブあったけ?」


「聞いたことは無いな。」


「ん。適当に言った?」


「ハハ。すみません。なんでか……そう思ったんです。本当は、【魔法使い】だと思います。マルクとエキスも魔法の一種かと。詳しく説明は出来ないんですけど」


「……魔法?そっか、魔法か。まだ私の知らない【契約魔法】の一つかな……。【契約魔法】って奴隷契約とか、一族相伝のとか特殊なのが多いのよね。見た感じ君のもそれに近い気がする。」


「ほぅ……」


「その顔を見れば、中らずと雖も遠からずって感じかしら?」


「いえ、僕はなんとなく使えそうだったので、契約とかもよく分からないです。でも、勉強になりました。ありがとうございますポーフェさん」


「いえ、こっちも珍しいものばかり見せてもらって嬉しい限りよ。ガングのお馬鹿は、まぁ悪気はないし許してあげてね。」

「あれでも、君の事を心配していたんだ」

「ん。不器用で伝わり難いけど」


「はい、わかってます。ガングさんだけじゃなく、みなさん4人とも良い人です。仲が良くて見てて優しくなれました。僕は暫くソロで頑張るつもりですが、いずれみなさんみたいな気の良い仲間とパーティを組んでみたくなりました」


「……そっか。なんかそう言われると、恥ずかしいけどな。街に帰って暫くしたら、俺達は次の街に行ってダンジョンで稼ぐ予定なんだが、もしまた会った時は一緒に潜ろうな。正直、君がこんな力を隠していたのは驚いたよ。ほんとに心配は要らなかったな」


「いえ、みなさんの気持ち、温かくて嬉しいです。誘ってくれてありがとうございました。……あ、ガングさんの事すみません」


「わはははは。大丈夫大丈夫。うちの戦士はこれくらいなんてことない。なぁ、ガング!」


「……いちち、おう。もちろんだぜ!……ジーク。俺に勝っても満足すんなよ。油断だけはしてくれるな。世の中には色んな汚ねぇ奴がいるからよ」


「はい。気を付けます!」


「うし。それならいい」


「さぁ、そろそろ街に行きましょ!もうすぐだと思うわ!」


「ん。ギルドに報告してそのまま『荒くれと酔っ払い』に行く。ジークも来る?」


「何かあるんですか?」


「ガングの奢りで飯が食えるぞ!」


「あー。いいですね。行きたいです」


「がぁぁぁ、わかってるけどお前らほどほどにしろよー。特にメイシィとポーフェ、お前らウワバミが裸足で逃げ出すくらい飲むんだからよ」


「はっはっはっは、金貨の準備は出来てるかしら?」

「宵越しで持ち越せる金は無くなると理解するべき」


「こええよお!アイード!こいつら、ここぞとばかりに飲む気だよ!!」


「ガング、諦める前に試合は終了していることも有るんだ。覚悟だけはしっかりな。俺は俺で忙しいから面倒は見きれないぞ」


「お前……またいつの間にかどっかの女としけこんでドロンか!ふざけんなよ!!」


「まーまーガング、それは俺の役割の一つだっていつも言ってるだろう?情報収集は大事!俺のお仕事だ。ふへっ」


「くそー神はいねぇのかぁぁ。俺に何か怨みでもあるのかぁぁぁ」



 このパーティ内の力関係がなんとなくわかった気がしたけど、そこには触れず、ジークはこの心良き者達との出会いを感謝した。出来れば今後とも仲良く付き合っていけたらと思う。



 ――そして、ギルドへと戻り色々報告を終えて、その日はどんちゃん騒ぎとなった。


 ガングの両脇にはメイシィとポーフェが酒樽を持った状態で陣取り、ガングにひたすら酒を流し込むお酌方法を実施し、ガングはあっという間に泡を吹いて倒れてしまった。


 ガングが潰れたのを見ると、メイシィとポーフェは飲み比べを始め、周りの荒くれものたちがそれを盛り上げる。当然、その頃にはアイードは既に若い新人の子といい雰囲気を作り上げ、暫くすれば宿屋へと消え去るだろう。また、酒場の長机の一角では『新規登録』の時に見た熱血ブロンド君達のパーティが先輩冒険者達を含めて反省会や戦闘講習などやっている……意外とみんな真面目だ。その他にも――色々な事が起こったが今日は割愛しよう。


 一方、そんなどんちゃん騒ぎな酒場内の雰囲気を見て楽しんでいたジークは、ここまで付いてきてくれたスライム君にせっかくだから名前を付けてあげることを思いつき、それに頭を悩ませていた。


 バラ〇スボールみたいだから、略してバボ?そしてそれに敬称を付けて、『バ〇ちゃん』?――いや、これはなんかマズイ気がする。ダメだ。それじゃあ、ウォーターベットみたいな素晴らしい寝心地と、あの時咄嗟に助けてくれたカッコ良さを合せて『ウォーベット』とか?……あとは、普通に『すらリン』とかも可愛げがあっていいなぁ。

 

 ……んー悩む。どれにしよう。……あ、そうか。本人スライムに決めてもらうのもいいかも。


 マルクとエキスの二人に"ビール"によく似た"エール"を注がれて、グビグビと景気よく飲んでいたスライムに問いかけると、真っ赤になってフラフラしながら抱き付いてきた。何て言っているのか、声は分からないけど、なんとなく『好きに決めてぇ~♪』っと言っている気がする。


 なんか普通のスライムより人間味を感じるなぁ。


「じゃあ、君の事、個人的に気に入っている『ウォーベット』って呼びたいな!それでもいいかい?」


 酔っぱらって真っ赤になった『ウォーベット』は『良いよぉ~♪』っと言っているような感じで嬉しそうにぎゅーっとしてきた。ジークはお返しにと優しく抱きしめ返す。


 なんとなく『バボ〇ゃん』や『すらリン』よりは唯一無二感があるよね。"ター"しか略してないとか、気づいてても気づかなかったことにしてね。ネーミングセンスは良くないみたいなんだ。

 

 結局、『荒くれ共と酔っ払いの楽園』で飲んでいた面々はそのままそこで酔いつぶれ、雰囲気に酔ったジークもまた、ギルドの一角でスライムの『ウォーベット』に包まれるように、マルクとエキスと共に仲良く寝息を立てて朝まで眠った――。


 

★★★

またのお越しをお待ちしております。

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