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第八話 ジーク君とステータス

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。

★★★




 草原では見かけないはずの『ロックボア』はその大きさも相まって予想以上に強かった。

 大ケガらしいケガは負うことが無かったものの、疲労感はどっしりと足に来ている。……いや、正確に言えば、今回は運が良くなければ、今頃大けがを負っていてもおかしくなかった。とアイードは先ほどの戦いを振り返る――。



 ――序盤、戦いの展開としては悪くは無かった。メイシィの【敏捷力上昇】がかかったアイードが敵を引きつけ、その隙にポーフェが魔法で敵を仕留める。その作戦自体は完璧に成功したと言える。



 だが問題は、パーティで一番の火力を誇るポーフェの魔法の威力で、敵が仕留められなかったことだ。

 敵の硬度と咄嗟の反応と回避能力、そして知能が予想以上であった。



 一撃目で思ったよりダメージを与えられず、二撃目から『ロックボア』はポーフェに警戒を強めて、回避に重点をおき、逆にアイードをポーフェへの盾とする位置取りで敵対しだした。



 有効打を与えられるポーフェに敵対心ヘイトを高めつつも、ガングの存在を見て安易に突撃してこない賢さ、更に若干ポーフェ達を円の中心にするような動きで、土や石を飛ばしてアイードを誘導し、四人が直線に並ぶような事があれば、その隙を狙って最大の速度で突進してくる。



 さすがに腕力に自信があるガングも、この『ロックボア』の最大威力の突撃攻撃は真正面で受け止めることが出来ず、後ろの二人とは逆方向に受け流して避けるしかなかった。



 ギリギリの戦闘が続き、装備と体力がゴリゴリと消耗していく。途中、【土魔法】で落とし穴を作りだしたりしたものの、『ロックボア』自体がその魔法に抵抗レジストして【土魔法】でその穴を埋めてしまう。瞳などの急所を狙うも、的確かつ冷静に防御してくる。こんなの、はっきり言って強敵だ。



 実際、戦いがあのまま続いていたとしたら、全滅していてもおかしくは無かったかもしれない。

 

 特に最後、何度目になるかわからない『ロックボア』の全力突撃には、アイードでも反応しきれなかった。まさか、突進の際に視線の誘導を絡めての時間差攻撃、追加でポーフェやメイシィの進路を塞ぐ様に【土魔法】を使っての落とし穴、更にはフェイントを混ぜて攻撃してくるとは思いもしなかったからだ。

 

 咄嗟にアイードが指示をだし、メイシィが【物理防御力上昇】をガングにかけ、ポーフェが【風魔法】で突進の威力を落とした。それによって後衛二人の足は完全に止まり、ガングは二人の前で完全に受け止める構えだ。受ければガングが、受け損なえば他二人の誰かが間違いなくケガをする。威力を殺して尚、敵の突進はそう確信させるほどの力強さを放っていた。



 完全に戦いを決める一撃を手に入れる流れを得た、賢き『ロックボア』。


 ――だが、アイードがギリギリの回避で吹き飛ばされた後、ガング達へと向かって走る『ロックボア』の頭上、偶然(・・)降って来たたった一つの小石(・・)が『ロックボア』の瞳にポトリと当たり、一瞬だけ片側の視界を塞いだ。


 当たった反動で、足先に落ちることになったその小石は『ロックボア』の前足に踏まれると、何かで強化されていたかの様な硬度で『ロックボア』の重さで砕けず、見事に前足のバランスを崩した。その上、全力で突進していた『ロックボア』の力がそのまま伝わり、後ろへの強力な飛び石となって、まるで弾丸の如く撃ち出された"小石君一号"『命名:ヤロウブッコロッシャァァァ』は『ロックボア』の後ろ足を鋭く撃ち抜いた。


 当然の様に、片側の支えを完全に失った『ロックボア』は、ガング達の目の前で哀れにもスピンを起こし、哀れにも完全に腹を晒す状態で停止してしまったのだ。


 目の前で弱点となる腹を晒す、そんな千載一遇のチャンスに、一瞬ガングは呆気にとられるが、すぐさま気を持ち直して大剣を強く握り、全体重をかけて突進して、腹底から『ロックボア』の核(魔物の心臓部)へと向かって剣を深く突き刺した。

 

 ある程度深く差し込めたのが手応えで分かると、ガングは一旦後ろに距離をとり、そのタイミングで事前に示し合わせたかのようにポーフェが【雷魔法】で大剣を媒介にして『ロックボア』体内へと電撃を叩き込んだ。

 

 電撃によって一時的に一切の動きをキャンセルして止められた『ロックボア』へと、メイシィの【筋力上昇】がかけられたガングが、ダッシュからの蹴りで大剣を更に深く突き刺し、それをトドメと為した。


 チャンスを得てからの、これら一連の連携はまさに見事と言える。

 最終的にアイードが、『ロックボア』の完全な沈黙を確認すると、四人はそのまま大の字になって地面へと寝転がった。



「ひゃぁあああ、すっごく疲れたぁあああ!『ロックボア』強かったよぉおおおお!」


「ふぅ。予想以上」


「こりゃ低ランクじゃ相手にならねーわけだぜ」


「全くだな。まぁ、とりあえずはお疲れ様!みんな無事でなによりだ」


「「「おつかれ~」」」


「あ、でもアイード。最後ちょっと足やられなかった?大丈夫?」


「あぁ、ちょっとな」


「見せて。治す」


「お。ありがとなメイシィ。あとガング!最後、見事な一撃だったな」


「おう!当然だぜ!……って言いたいけど、あれはアイツがマヌケ過ぎなだけだろーよ!……ぷぷ、思い出すと笑っちまう」


「うんうん。稀に見るドジな転びっぷりだったね!ビックリして一瞬時が止まった様に思えたよ!」


「日頃の行いのが良かったのかもな。結果的に、大ケガ無し・ポーション類消耗品の使用無し・装備品の軽い修理のみか、ほぼ完ぺきだな。」


「ん。その上、一応は緊急依頼だから依頼報酬も高いし、帰ったらガングの奢り付き。まさに言うことなし」


「ぐはっ!……忘れてたぜ」


「「ははははは」」



 戦闘で昂った気持ちを落ち着けつつ、獲物の素材の剥ぎ取りを行う。人間で言う、心臓にあたる核(魔石とも呼ばれる)を取り出し、比較的柔らかい腹側からナイフを入れて『ロックボア』の特徴である外皮を中心に、冒険者ギルドで金になる肉や骨、錬金術ギルド、魔術師ギルドで素材になる部分もいくつか採取すると、リーダーであるアイードが【アイテムボックス】と言う機能が付いた、"木と金属が捻じれた様な指輪"を使ってそれらを収めていく。


 この指輪はダンジョン産で、このタイプだとあまり収納量が多いとは言えないものの、その希少価値はとても高い逸品である。

 実際、四人分の食料と水、衣類や装備品の予備、夜営道具や旅で必須な物と簡易的に罠を作成する道具等までこれ一つで持ち運ぶ事ができ、空いた隙間には魔物の素材も当然収納可能だ。

 これ一個あるだけで普通なら背嚢に背負って窮屈に感じる冒険も少し余裕をもって行える上に、咄嗟の反応も良くなって生存確率を高めることさえ出来る。上級冒険者には必須なアイテムだと言えよう。




「やっぱ、【アイテムボックス】って便利よね」


「ん。いずれ一人一個は手に入れたい」


「だな。今回ので金も貯まるし、売りに出てればとりあえずもう一個くらい確保しよう。帰ったらオークションにも忘れずに顔を出すってことで」


「「「了解」」」


「……お、あのガキ。いつの間にかあんなとこに。つか、スライムに乗ってるぞ」


「あ、ほんとだね。なんか気持ちよさそうに乗ってる。……でも、あのスライム大きくない?危なくないの?」


「ん。ラージスライム。普通より結構大きめ。でも危険は感じない」


「ふむ、そうかあの子。装備も何もなくて、なんの考えも無しに冒険者になったのかと思って心配してたけど……【テイマー】なのかな?」


「あー、あのジョブか。そりゃ納得だ。あの虚弱さだからな、本人が戦うより魔物の方が強えだろー」


「【召喚士】と同様に珍しく、尚且つ強力なジョブだからな。あのくらい魔物の使役が出来るなら、街の付近は安心だろう。鍛えて本人も成長すれば、ちゃんと一人前の冒険者としてやっていけそうだ。……うん。なんか気になる子だったが、要らぬ心配だったかな。これからが楽しみだよ。」


 ラージスライムの上に乗って、のんびり移動してくるジークをみて、アイードはクスっと口元をほころばせる。思ってたよりも、ジークの事を気に入っているらしい事を自覚した。


 だが、少し気になる部分もあると、ポーフェは言う。



「……ね、アイード。あの子こと持ってみた?」


「ん?あ、そう言えばここに来る途中はメイシィが背負ってたっけ?……どうかしたのか?」



 メイシィに背負われている時のジークは、嬉しそうだった覚えしかないアイードはポーフェが何を言いたいのか咄嗟にはわからなかった。


 いつも目と耳が良くて、情報通であるアイードなら気づいてもおかしくないと、そう思っていたからこそのポーフェの問いかけだったが、どうやら今回は珍しい場合だったらしい。


 そして、背負っていた本人であるメイシィと、首を持ち上げて殺しかけたから当然ガングもポーフェが何を言いたいのか理解していた。

 


「ん。あの子とんでもなく軽い。たぶん10キロくらい。普通あの子くらいなら30キロはある。これは異常と考えるべき」


「なに!?本当か!?」


「……ほんとだ、まるで赤ん坊持ってるぐらいに軽かったぜ。体もスカスカで脆弱だしよ。それにアイツ、膝が悪いのか足も時々引き摺ってやがるだろ。一見して身なりも良いし、たぶんどっかの貴族のやつだとは思ったが、なんか訳ありだろうな。もしかしたら、真面に飯すら食えてなかったのかもしれねー。そうじゃなきゃスラム出身以外で、あんな軽さにはなんねぇだろ。……あと、普通に考えれば、あんなぽけーっとした貴族のガキが、冒険者なんて危険な道を選ぶわけがねえ。アイツ、もう家にすら居場所無くて、戻れねーんじゃねーかなぁ……なんにしても世知辛ぇけどよ、あの年で苦労してやがるぜ。本人がそれをおくびにも出さねーから、全くそうは見えねぇんだけどな……」


「私の回復魔法でも、あの足までは治せなかった。きっと昨日今日のケガとかじゃない。珍しくガングの予想が外れてない……かも」


「……あ、あと、私も密かに【鑑定】使って視てみたんだけど」


「……ポーフェ……お前、俺には情報がどうのと言ってなかったか?」


「……それはそれ。これはこれよ。とりあえず聞いてよ」


「お、おぅ」



☆☆☆


名前: ジーク


種族: 人族

性別:  男

年齢: 10歳


レベル: 無   

体力:  20  (⇔通常、一般男性の平均値:50)

魔力:  10  (⇔通常、一般男性の平均値:30)


筋力:  1   (⇔通常、一般男性の平均値:10)

抵抗力: 1   (⇔通常、一般男性の平均値:10)

精神力: 1   (⇔通常、一般男性の平均値:10)

敏捷力: 1   (⇔通常、一般男性の平均値:10)


☆☆☆


 ポーフェから今まで聞いた事がないステータスの内容を聞き、3人は目を見開いた。


「……信じられない」


「ポーフェが嘘を言うわけないって、わかってるけど、これは……」


「私だってちょっと信じられないなって思う。でも、2、3回確認したから間違いはないよ」


「……どれ一つとしてまともな値がねえじゃねーの。そもそも1ってなんだ。1って。」


「赤ん坊と同じ位……」


「赤ん坊って、まじかよ……アイツはもう10歳なんだろう……」


「あ、でも、私の【鑑定】だとスキルまでは視れないから、この情報が絶対とは言えない場合もあるよね」


「それは、【偽装】のスキルがあるかもってことか?」


「うん」


「……なさそう」


「だよね……」


「だな。ま、なんにしても放ってはおけねー」


「……どうしたのガング。あの子を殺しかけたから、罪悪感?」


「そんなんじゃねー。ただ、ガキがむざむざと死ぬのとか、見たくねーだけだ。せめて自分を守って戦える力位ねーと、この稼業はやっていけねー!」


「あぁ。俺もそう思う。あの子さえ良ければだけど、暫く俺達で面倒みるのもいいんじゃないか?どう思う?」


「うん。私は良いと思う。あの子なんかぽーっとしてるしね」


「ん。賛成。」


「うし。そうと決まれば、俺がついでに立派な戦士に鍛え上げてやるぜ。……おっ、来た来た。」


「「「…………」」」



 スライムに乗って四人へと近づいてくるジークに、ガングはニヤリと笑みを浮かべる。その表情に他の三人は不安しか感じなかった。ガングとジークの化学反応からは『ジークの死』と言う結果しかイメージできない。

 しかし、なんにしてもジークがまだ何と言うかわからないだろう……と言うことで、とりあえず4人は帰る支度を整え始める。

 『ロックボア』の持って帰れない部分等は、少し勿体ないけど穴を掘って燃やしてしまった。


 暫くすると、ジークがラージスライムに運ばれてアイード達の傍へとたどり着く。

 その瞳は『ロックボア』の焚火を見て嬉しそうだ。



「みなさんお疲れ様でしたー。あー、近くで見ると大きいですねー。」


「おう。待たせたかな」


「いえ。あっという間でした。良い戦いでしたね!」


「ありがとー!応援しててくれたの?」


「あー、いえ。全く見てはいませんでした。このスライムに夢中で」


「「「「……」」」」


「でも、みなさんケガもなさそうですし、表情も明るかったので、きっと良い戦いが出来たんじゃないかなーと」


「ん。確かに。」


「あとは帰るだけですかー?」


「ああ。そうだな。今後の事は帰り道で話すとして、さっさと片づけて街に戻るか」


「……うっし!これで最後だ!アイード!準備ならもう終わったぜ。早く帰ろう!!」


「お、おおう。じゃあみんな帰るぞ」


「ガングがやる気に満ちてて怖いんですけど」

「さっきの戦いが不完全燃焼な部分が、微レ存」

「ああ。まぁ、一番はジーク君に色々教えたくてしょうがないんだろうさ」


「?……僕が何か?」


「あ、ああ。その事なんだけど。……実は――」


「おい!あ、悪い、ジーク!だったよな!お前、俺達と来ねーか?お前今日冒険者になったばかりなんだろう?俺達と来れば、冒険者のいろはってやつを手取足取り教えてやれるぜ!……あ、勘違いはすんなよ?別に親切で言っているわけじゃねえ!ただ、新人を育成するってのも上位冒険者としての使命みたいな、ギルドの評価にもなるっつーか、お前を鍛えることで俺自身をも鍛える、みてーな?ま、そんな感じだ。だから、細かいことは気にせず、お前はそこいらの魔物なんかに殺されねーように必死に頑張りやがれ!お前に今まで何があったのかとか、なんで冒険者になろうとしたのかとか、そんな細かい事は俺たちは聞き出したりしねーから安心しろ!だがな!!いつか今までの苦労が報われるような位いっぱい稼いで、いっぱい飯食って強くなって、それで幸せになる道を見つけろ!そんで――」



 急な迫力で語りだすガングの圧に思わず面食らってしまったが、その必死に何かを伝えようとしている姿はとても好ましく思える。


「(うわぁ、マッチョのツンデレって可愛くないけど、この人、凄く良い人だ)」


「うわガング。暑苦しい。……でも、ああいう奴だから、憎めないのよね」


「ほんと。気持ちは悪いけど。心根が優しいのが美点」


「ほんとな。言葉遣いだけでも普段から気を付けていれば、みんなあいつの良さに気づくはずなのにな、損な性格だよ全く。……だがまあ、俺達三人はちゃんとそれを知ってるから。」


「うん」

「そうね」


 アイードとメイシィ、ポーフェの三人もこれには口元が緩んでしまうのも仕方がないだろう。

 ジークはそんな三人に小声で問いかける。


「……あ、あのー」


「あ、すまん脱線したな。大体はガングが言ってくれたが、そんな感じだ。どうだろうジーク君。俺達『万戦不死エターナル』に加入しないか?」


「私たちも歓迎するよ」

「【テイマー】スキルのコツを教えてくれると嬉しい」


 ツンデレマッチョのガングはひたすら熱く語り。その光景をアイード、ポーフェ、メイシィの三人が微笑ましそうに見つめる。本当に仲の良いパーティだなぁと、ジークは心の奥の方がまたほっこりするのを感じた。


 彼らと一緒に戦うのも楽しそうだとは思う。けど、色々と勘違いされている部分は、まず先に訂正しないといけないだろう。どうやら彼らは魔物を使役して戦う【テイマー】の仲間をお探しのようだ。


 たぶん、今自分のお腹の下でプニプニしているこのスライムをみてそう思ったのだろうけど、この子は使役されているわけではなく、偶々仲良くなっただけなのである。


 それに、そもそも僕は動物は苦手で【テイマー】のスキルなど持っていない……気がする。

 あと、個人的にパワーレベリングはあまり好きじゃないので、暫くはソロでやっていきたいな。



「あー、あの僕。【テイマー】じゃあないですよ?」


「「「えっ……」」」


 ジークの言葉でツンデレマッチョ以外は固まる。ツンデレマッチョの方はまだ色々と熱く語ったままだ。そっちは一旦スルー。


「え、君。【テイマー】じゃないって、じゃあそのスライムは?」

「捕獲したんじゃ……」


「いえ、この子はさっきたまたま見つけて、ちょっと触ってみたかったので追いかけてみたんです。想像以上にプニプニで大満足です」 


「えっとー……あれ?それって【テイマー】として資質はあるってことじゃないの?」


「違うと思います。僕、動物は苦手です。」


「ど、どうなんだ?メイシィ?」


「ぬぅぅ。私もあまり動物に好かれない。ポーフェにパス」


「えっ!私!?……えっとー、【テイマー】もマイナージョブだからそこまで詳しくはないけど、ラージスライムがこんなに懐いているし、素質はあるとは思うけど……本人が動物苦手って言ってるし……。てか、そもそも【テイマー】じゃなかったら、君はどうやって戦うつもりだったの?」


「武器ももってないしな」


「……あっ、そうか!武器!忘れてました!僕、武器あります。なんでか今になって気が付きました!」


「「「…………」」」



 ジークが全く戦えそうに見えない三人は内心で冷汗をかく。なにしろ、背嚢すらないジークが武器を持ってるようには全く見えないし、ポーフェによって調べた彼のステータスからは、常人の半分にも届きようもない数値ばかりで、魔力量からしても魔法使いにも思えない。


 もし【テイマー】だったなら、強力な魔物を使役し戦わせることで充分に戦闘面では活躍できるし、自分は味方の後方支援としてフォローすれば色々とパーティで役に立てるから問題はないはずなのだ。


 だが、戦士職や魔法職となると話は別だ。

 彼のステータスとあの身体では、直接的に戦闘に参加するのは魔物が蔓延る中で生き延びるのが難しく辛すぎる。それこそ、仲間に掛けたくもない負担を掛けてしまう事になるだろう。


 それを許容し、仲間になる冒険者は少ない。


 冒険者はみな命がけだ。綺麗事ばかりじゃない。

 冒険者と言うのは助け合うものだが、蹴落とし合う者も多いのだ。

 酷いパーティなら、ジークを肉の囮にして魔物に食いつかせ、引きつけるだけの役割くらいにしか彼の有用性を見いだせないだろう。


 『ジークをそんな目には合わせたくない。』アイード達の思いは完全ではないが一致していた。

 ガングだけではなく、『万戦不死エターナル』は四人共がそんな珍しい程に良き者ばかりである。


 しかし、そんなアイード達の心配をよそに、ジーク本人はニコニコとしていた。

 今まで、なんで気づかなかったか分からない程、"それ"は身体のすぐ傍に感じる。

 そして、力を開放する瞬間を今か今かと待ちわびている気がするのだ。



「ち、因みに……武器ってのはどこにあるんだい?」


 アイードは何も持っているようには見えないジークにそう尋ねる。

 ジークはその問いに、待っていました!と言わんばかりの笑顔で答えた。



「はい。ここです。……【剣よ、出でよ】」



 —―その瞬間。辺りには『力』が満ちた。



「うぐっ!!」

「きゃっ!!」

「おわっ!!」

「んぅぅ!!」


 

 ジークを中心に目に見えない衝撃が広がり、アイード達は軽い悲鳴をあげる。

 辺りには、神聖な空気と混沌の魔力が渦を巻く様に解放され、一気に吹きだした。


 ジークはその渦の中心で、魔力が高く上る様を見上げる。


 まるで、再会を喜んでいるような。寂しさを叫んでいるような。不思議な感覚。


 でも、両手に溢れる温かさは、何よりも心地良い。


 深く息を吸い込んで、目を閉じ。2秒後、手に確かに"何か"の感触を感じる。


 そこには――。




★★★

またのお越しをお待ちしております。

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