労働組合参加 温度差
2人は口を揃えて、こう言いました。
「必ず成功する」
馬野と保田二人は、熱く語った。
その姿を見ていて、私は羨ましかった。
この人たちは、私のような深い悩みなど持っていないのだろう。
しかし、ふと考えた。
この組合を結成することで、私は彼らと真の仲間になれるのではないか。心からの友になれるのではないか。
こんな私を頼って何度も勧誘してくれているのだ。
その想いに応えてみよう。
当時、私の交際していた彼女は同じ会社に勤めていた。
交際して初めて喧嘩になった。
彼女から猛反対を受け口論となったが、どうにか説得した。そして翌日、私は馬野へ組合発起に加わる意思を伝えた。
ある晩、私の部屋に数名が集まった。
具体的な労働環境の改善案、その問題の集約を求めたのです。
やはり、口々に上がるのは「給与アップ」だった。基本給の底上げを要求する。
そんな中、一人の助手が声を荒らげた。
「俺と河田が同じ基本給なのはおかしいだろう」と言い出したのだ。
疑問を抱いた。
こいつは他人の給与明細を盗み見しているのか。河田が自分から提示するはずもない。
そんなことを陰でやっているのか。
河田は仕事こそ若干劣るかもしれないが、運転手としてハンドルを握ることもある。対して、不満を言った男は普通免許さえ持っていない。
そうは思ったものの、当時の彼らの状況は切実だった。
バブルの影響で、私自身は入社から数年間、毎年一万円の昇給が続いていた。
しかし数年前から会社は昇給を見送っている。ここに集まった者たちは、入社以来一度も昇給がないのだ。
結局、多数決で基本給の改善が要望書のトップに記入され、他にも年一度の健康診断の実施などをまとめた。
私は準備期間として、一人でも多く労働基準法に詳しくなるよう、各自に参考書を買うようお願いした。
少数で敵と対峙するには、知識という武器が必要だったからです。
しかし、後日わかったことだが、誰一人として労働問題に関する本を購入してはいなかった。
組合発起を頼んできた馬野さえも、一冊も持っていなかったのです。
不安がよぎる中、改善策をまとめた要望書を労働組合の支部へと提出した。
「真の友」を求めて立ち上がった一方で、周囲の意識の低さが浮き彫りになっていく。
その温度差を私は噂のことばかり考える頭で気づくことはできませんでした。
知識という武器を持たぬまま走り出した組合活動が始まりました。




