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ユニオン 新たな火種

しかしついに、この松本が退職することになった。

私は、彼は会社にとって有望な社員だからと引き止めるよう頼んだが、結局は無駄足に終わってしまいました。


せめて最後は、大勢で松本を送ってやりたかった。


彼の送別会と懇親会を兼ねて、本社の女子事務員らにも参加を呼び掛け、盛大な大宴会を開いたのです。

その席で、当時腕相撲で連勝中だった私は、皆の目の敵にされた。

次々と挑んでくる相手を退け、六人目までは楽勝だった。しかし、七人目の相手に対し、右腕に渾身の力を込めた瞬間――「ボキッ」と鈍い音が響いた。


瞬間に激痛が走り、私は負けた。

続く左腕も同じ状態になり、力なく負けてしまったのです。

その日から、両肘には消えない激痛が残りました。

グラスを持つことさえやっとで、肘を曲げるたびに嫌な音がする。

肘を屈折させると、飛び出した骨か筋かが何かに引っかかり、それを乗り越える際に激痛が走る。辛い状態だった。


あれほど自信のあった腕力は、その日から消えてしまいました。

腕立て伏せもできない。数年の間は風呂桶さえ重く感じ、筋トレもままならない。

体重は毎年一キロずつ減っていき、今では大病患者のように痩せ細ってしまった。

あの時、私の身体の何かが決定的に壊れてしまいました。


そんなある日のこと。

私の部屋に後輩の馬野と保田やって来た。


馬野は後輩といっても、年齢は私より十歳も上だった。


「話がある」


と訪ねてきた彼らの口から出たのは、思いもよらない提案でした。


「労働組合を作ろう。一緒にやってくれないか」


馬野は前の会社で組合の立ち上げに参加した経験があり、団体交渉権などの知識にも詳しかった。


私が一人で常務に掛け合い、就業規則を変更させた実績を見て、「こいつは使える」と踏んだのでしょう。


「少し考えるから、時間がほしい」


私はそう伝えて、二人を帰しました。

中堅社員としての安定、会社からの信頼。

それを手放してまで、不平不満が渦巻く「他人事」のために動くべきなのか悩みました。


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