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宗教 欺瞞(ぎまん)との訣別

休日、酷い腰痛に悩まされていた私は、ある整体院へ通い始めた。


その先生は空手の有段者で、人柄も良く、信頼を寄せるのに時間はかからなかった。

親しくなったある日、彼は私に一冊の本を貸してくれた。外国人の著者が書いた、死後の世界にまつわる物語だった。

それを読み終えると、今度は特定の宗教団体から出版された本を次々と貸してくれるようになった。

彼はその組織の熱心な信者だったのだ。


「今度、横浜で講演会があるから参加してみないか」


そう勧められた私は、一度足を運んでみることにした。

行きつけのスナックでその話をすると、霊感があるというアルバイトの女の子が同行したいと言い、二人で会場へ向かった。


会場はほぼ満員で、熱気に包まれていた。

驚いたのは、高額な席では三万円近い料金が設定されていることだった。

私たちは二階の、最も安い席に腰を下ろした。

連れの女の子が、私の耳元で呟いた。


「……後ろの右奥に、黒い霊が立っているよ」


やがて照明が落とされ、大音量の音楽が鳴り響く。

ステージに現れたのは、巨大な作り物の象に跨がった教祖だった。


そのあまりに派手で作為的な演出を見た瞬間、私の心は冷めていった。


くだらない――。


講演の内容以前に、人々の信仰心を煽るこの団体の本質に、強い疑念を抱いたまま会場を後にした。


それ以来、講演会へ行くことはなかった。


借りた本を何度か読み返してみたが、どうしても拭い去れない違和感があった。

私はその宗教の支部へ、直接電話を入れた。


「イエス・キリストは、己の足と声で宣教活動をした。なぜ、あなた方の教祖はアリーナで高額な席を作り、派手な演出で講演を行うのか」


本当に神の教えを伝えたいのなら、拡声器一つ持って野外で伝道すればいい。

そう告げた私に対し、相手はこう言い放った。


「あなたが信仰を止めるのは構わないが、その考えを他人に広めるな」


その言葉に、私は怒りが込み上げた。


「受け取り方は本人の自由だ。信仰心を銭儲けの道具にするな」


私は激しい言葉を叩きつけ、受話器を置いた。


私は思う。

宗教の始まりは、純粋に手を合わせ、祈り、願うこと。

ただそれだけであったはずだ。

今の世の中、墓石一つとってもビジネスの道具にされているとしか思えない。形などどうでもいい。

亡くなった人の写真に、ただ静かに手を合わせる。それで十分ではないか。


宗教ほど人を操り、時に大きな戦いへと繋がる恐ろしいものはない。


私は、その整体院へ通うのを止めた。

そして、買い集めていた本もすべて、迷いなく捨てた。



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