表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/40

逃走 迷霧の果て ―― 疑問

広島、岡山、島根、鳥取、山口。私は行く宛もなく車を走らせ続けた。

その夜、たどり着いたのは、かつて仲間と泳ぎに来たことのある光市の浜辺だった。

そこは故郷と同じ、真っ白な砂が広がる渚。


陽が落ち、暗闇に包まれた砂浜で、空腹も時間も忘れて海を眺めていた。この海の向こうは、初めて彼女をドライブに誘ったあの浜辺に繋がっている。

聴こえるのは、ただ波の音だけだった。


(いったいこの噂は、いつ、誰が始めたんだ……?)


初めて突きつけられたのは、あの安井二曹からの言葉だった。

だが、安井二曹は「鬼」と煙たがられてはいたが、演習中には内緒でビールを分けてくれるような、本来は心優しい人だった。

ムードメーカーだった大口陸曹もそうだ。

彼らの態度は、ある時を境に突然、急変した。


なぜ、誰もがこんな馬鹿げた話を簡単に信じてしまうのか。

それまでの俺という人間を、なぜ皆一斉に否定できるのか。

発端は後期教育隊なのか、それとも前期の頃からなのか。

思考は止まらない。

兄へも同僚にも話せなかった噂の疑念が、闇の中で膨れ上がる。

もしかすると彼女との結婚を反対された事も、別れに至ったのも、もしかしたら入隊前からこの噂はあったのではないか。

彼女の耳にまで届いていたからではないのか。


「なぜ、こんな生き方をしなければならないんだ……」


こんなことに人生の貴重な時間を費やし、なぜ死を考えなければならないのか。

俺の人生とは、一体何だったのか。

死ねば本当に楽になれるのか。

ならば死後の世界とは、どこにあるのか。


真夜中、私は山奥の道を走っていた。

濃霧が立ち込め、ハイビームを点灯しても光で反射して前方が見えない。


私は走行を止め道路の真ん中で停止した。


やがて、ゆっくりと霧が薄れていく。


目の前にぼんやりと浮かび上がったのは、乱雑に立つ細長い木と、石の先端。


墓場だった。


もしあのまま前進していたら、どうなっていたのか。

行く場所など、どこにもない。


私は逃げ場を失い、真夜中の魚切ダムへと向かった。


それから毎晩、私はただその黒い水面を見つめていた。

そこが自殺の名所だと後から知った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ