嘘と真実
「「・・・・・。」」
大きな広間に二人、花穏と幸は夕食を食べていた。
机には三つ目の料理が置かれているが、手は付けられていない。
「花穏、夢さん遅いな。」
「・・・そう、だね。」
帰ってきてからこの調子である。
屋敷に帰った幸は、夢さんの様子がおかしかったことが気になり、資料をぺらぺらとめくって過ごしていた。
花穏が帰ってきて、事の次第を報告し捜索隊を出してもらったが、連絡はまだ来ない。
「私・・・、夢が悩んでいる事に気づいてあげられなかった。」
しょんぼりと、耳と肩を落として言う。
「花穏、夢さんは必ず見つかる。だから、帰ってきたら悩みを聞いてあげよう。」
「うん・・・、そうだね。」
少し顔を上げてくれた。
カタッ。
「食事中に失礼いたしますっ。牡丹様、門が壊されました!ワヨウノクニからの攻撃ですっ!」
「兵を守護にまわせっ!」
「それが・・・全員が食中毒になっておりまして・・・。」
「なっ・・・。今日の食事は誰が作った!」
顔色を変えて花穏が問う。
「それが・・・。夢様でございます・・・。」
「・・・夢?」
花穏から血の気が引いていく。俺も真っ青になっているだろう。
「夢さんが・・・?」
「失礼しますっ!牡丹様、門が突破されました!」
「防御の術者が50人はいたはずでしょう!防術『檜の壁』で1時間はもつはず・・・。」
「そ、それが・・・術者達が次々眠りについてしまい術が解けてしまったのです。」
花穏の毛が逆立ち、耳も立ち、瞳が怒りに燃える。
「夢ね・・・!行くよっ幸っ!」
「え?」
俺は手をつかまれ、窓から外へ跳躍。
「飛術『松種』」
瞬間花穏の体が銀の火に包まれる。熱くはないが
「はっ?ここ2階だろっ!」
訪れる重力にヒヤリとする。
「あ、ごめん!さっきの術名言って!」
「『松種』!」
瞬間、俺の体は金の火に包まれ、浮遊感が訪れる。
「おい花穏!俺の色が違うぞっ!」
手を引かれつつ尋ねる。
「使用者によって術の色は変わるのよ!他の術でもそうなるの!着いたっ!」
地上に着地すると、目の前には開かれた門と倒れる獣人達。そしてこの国では見なかった洋装の敵兵。先頭の修道服の少女が口を開く。
「遅かったですね、牡丹様。」
「夢、言い訳はもう聞かないわよ・・・!」
「言い訳なんてないですよ。あ、そうそう。部屋に入って門兵の記録も頂きました。」
「いつの間にっ・・・!」
「あなたがデートしている時に。」
「もう許さないっ『赤牡丹』!」
花穏は空中から刀をだし、そのまま夢に斬りかかる。
「『タナトス』」
夢は空中から鎌を出し、受け止める。
――戦争が始まった。
次回は5月に!