届かない
「起きてください、幸様…。」
「…んー。」
もふもふ…なんかこれ暖かいな…。
「あの…お、起きてくださ…い。」
夢さんが涙目で見てるけど…どうしたのだろう?
「ん…ああ、おはよう、夢さん…。」
「はひっ、おは…ようございま…す。幸様。」
「って…ご、ごめん!夢さんっ!」
すぐさま距離を取る。
「だ、大丈夫です…。」
どうやら俺は起こしに来てくれた夢さんの尻尾をもふもふしていたらしい…。
「朝食の時間です。ついてきて下さい。」
ピシャリ。
扉を閉めて去っていってしまう。怒らせてしまったらしい…。
「待っ待って夢さん!」
俺は急いで後を追った。
✲
「どうしたの~?2人とも~。」
牡丹が黙っている俺達に聞いてくるが…。
「なん、何でもない。」
「何でもないです。」
俺は焦りつつ、夢さんは顔を真っ赤にしながらそう答えるしかない。
「…幸くん?食べ終わったら覚悟しててね♪」
「ごめんなさい、勘弁してください。」
「やだ。」
食事が終わった俺は朝の事を話し地獄を見た。
✲
「うぅ…花穏のやつ…。」
痛い…合気道怖い。
「その…大丈夫ですか…?」
夢さんが心配してくれる。優しいなぁ…あいつと違って…。
「ああ…俺のせいだしな…。」
「あの…。」
「ん?」
夢さんはこちらを見つめながら口ごもる。耳がピクピクと動き、顔は真っ赤だが…熱でもあるのだろうか…。
「その…今日はお祭りなので良ければいっ…
スパンッ
「幸〜♪町に行こ~。」
「げっ!花穏っ。」
飛び込んできた花穏に抱きつかれる。尻尾が左右に揺れている。
「ねぇ?行こ…?」
ん?珍しく無理やりな感じじゃない…可愛い?
「ああ、行くか。」
つい言ってしまった…。
「よし♪用意してくるね~♪」
俺が答えると嬉しそうに尻尾を揺らしながら去っていく。
ピシャリ。
ふぅ…珍しく苦笑いがバレなかった…。ご機嫌だったな…おっと
「そういえば夢さんさっき何て言ってたんだ?」
「へっ?ああ、はい何でもないです…。用意があるので失礼しますっ」
気のせいか?困ったように笑って去っていった。
✲
「おおっ獣人がたくさんいる…。」
屋敷の外はお祭り騒ぎ。まだ明るいので灯っていないが、提灯が通りの両脇に並んでいる。その通りを、獣耳の人々が行き交う。
「それでは私はこれで。」
あんな
「えっ?夢さんは一緒にまわらないのか?」
「はい、私は使用人ですから、お2人の邪魔になることは出来ません。」
口調が尖っているようだが…怒っているのだろうか…。
「夢さん、その…何か怒ってますか?」
「っ…。別に怒っ
むぎゅ。
「お待たせ!幸っ。」
「花穏、苦しい苦しい。」
「あ、ごめんごめん。」
「っと、夢さ…ん?」
見えたのは、耳をピンと上に立て早歩きで去る後ろ姿だった。
「幸?」
花穏が不思議そうにこちらを見つめる。
…帰ったらでいいか。
「いや、何でもない。その…浴衣、似合ってるな。」
ピンク色の生地に赤や白の牡丹柄が散りばめられた綺麗な浴衣だった。銀色の毛をもつ花穏によく似合っていた。
「っ…。あ、ありがと…ぅ。」
顔は真っ赤で耳が嬉しそうにピクピクとしている。
「あ、ああ。いくぞ。」
「うん。」
花穏ってこんなに可愛かったっけな…?
✲
その頃屋敷では…
「バカ…バカ…幸さんのバカ…」
言いながら料理を次々と仕上げていく、もちろん綺麗なのだが、いつもより動きが速い。
「今日の夢さん荒ぶってるね…珍しい…。」
触らぬ神に祟りなし…同僚たちも遠巻きにする。
もちろん原因は言うまでもないのだが…。
────こうしてそれぞれの想いは交差していくのだった。
更新遅くなりましたm(-ω-`;m)
ちょっと長めになってしまい…
切るところが無理やりですが…
感想もらえたら嬉しいです(*^^*)