夢さん
夢さんに連れられて、俺は屋敷の中を案内してもらっていた。
「ここが玄関です…。」
玄関はやはり大きかった。外には大きな門が見えて、それがいまは大きく開き、車が次々出ているところだった。
「先程までこのスイレンで会議が行なわれていましたので、それに来ていた方々が帰っているようです…。」
「会議?」
「はい、幸様の到着の報告です。選ばれし者が到着したら、報告する決まりなので…。」
選ばれし…者…。
「幸様…?」
夢さんが心配そうにのぞき込んでくる。ふわりと広がる甘い香り…。
「え?あ、ああ…なんでもない。」
「そうですか…?それじゃあ次は仕事場へ案内致します…。」
しっかりしろ、俺。
✿
「ここが幸様の仕事場です。」
「…ここが?」
「はい。」
俺の目の前に広がるのは教室サイズの部屋。3方の壁には本、本、本…。中央に机と背もたれ付き座椅子。書斎まで和風とは…。あ、仕事場か…。
「ここにある本はこの国に関する事が書いてあります…。歴史、地理、民族、郷土料理…、あらゆる事が…です。」
「これは全部読めと…?」
「…牡丹様はそうおっしゃっていました。」
申し訳なさそうに夢さんは言う。花穏のやつめ…。軽く100冊超えてるぞ…。
「分かった。じゃあその…案内はこれでもういい。…読まなきゃだからな。」
「はい。御用がありましたらいつでもお呼びください。」
「ああ、案内してくれてありがとう。」
「はい、では失礼します。」
一礼して夢さんは去っていく。
「ああ。」
答えて俺は椅子に座り、一冊目を読み始めた。
✿
「失礼します。お疲れ様です、幸様。食事の時間に…。」
「…。」
「寝ているのですか…?」
どうやら幸は寝ているらしい。毛布をそっとかける。
「お疲れ様…幸。」
寝顔は幼いなと思う。私は立ち上がると、部屋を出た。
廊下を歩きながらふと考える。
もうすぐ…私はワヨウノクニに帰らなければならないだろう…。
「私は…どうなるのかな。」
────外はもう暗く、学校が始まろうとしていた。
彼の転入は、牡丹の手により明日へ変更された。
更新遅くなりました((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
そろそろ夢さんの周りに変化が起きていきます。
次も頑張ります!