表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/41

三十七話「それは親切設計か」

「で、結局どうやって人間辞めたの?」


 一番聞きたいのは取り込まれた人達を救い出せるかだが、流石にそれは馬鹿正直に答えないと思ったあたしが、まずぶつけた問いは、きっと他の三人も疑問に感じるところだったと思う。


「あー、やっぱそう来ます? まー、この素晴らしい肉体に興味を持つのはむりもないこと。もー、趣味の悪いオブジェとか心ないこと言わないで始めから褒めておけば良かったのになぁ。うーん、どーしよっかなぁ?」


 ただ、コイツがウザイ奴だってことを失念していたかも知れない。


(この手の態度を取った時って次の展開はだいたい共通よね)


 悪く言ったから教えてあげないと答えるのを拒絶するか、もしくは前言の撤回を求めてくるってパターンだ。更に幾つかの要求を上乗せしてくる場合もある。前者なら情報は手に入らず、後者でかつあちらの要求に応じても気が変わったとか言い出す可能性が残っている。


「ま、いいでしょう。教えちゃいましょう」


「えっ」


 だから、素直に教えると言い出すなんて予想もしてなかった。親切設計とかそう言うレベルじゃないだろう、これは。


「はい? 何故驚いてるんですか?」


「っ」


 もっとも、声を漏らしてしまったのは失敗だった。訝しむ肉塊を前にあたしは視線を彷徨わせ、ふと目についたのは、肉塊から生えた行方不明者の一人。そこで、閃きは生じた。驚きを誤魔化す口実が見つかったのだ。


「う……くっ」


 だが、口に出すのには問題があった。とても大きな問題が。


「何ですかぁ? その態度、気になりますねぇ……あ、そうだ。こっちが一方的に教えるだけってのも面白くないので、どうしたのか教えてくださいよ?」


 だと いう のに、この にくいかい、ふれてほしくない ところ に ふれて きやがりましたよ。


「っ」


 出来れば避けたかった、だがここで機嫌を損ねる訳にはいかない。


「あ、あたしより……」


「うん?」


「あたしよりかなりスタイルが良かったのよ、そっちの人!」


 左手を強く握り締めながら右手の指で示したのは、肉塊から生えた行方不明者の一人。


「へ? あ……ぷっ」


 肉塊は器用に身体を捩ると、明らかに噴き出し。


「ぶっ」


 もう一箇所、別の場所でも、それは聞こえた。


「っ」


 あんまりだと思う。プライドを捨てて実を取ろうとしてるのにそれを笑うとか。裏切りだ、まごうことなき裏切り行為である。このまま下半身は肉塊に埋まってるから、太ももは太かったりするかも知れないとかあたしが負け惜しみを言うことで、あの肉塊に取り込まれた人の身体を出来るだけ露出させ、あわよくば引っぺがして確保しようと言うところまで思いついていたって言うのに。


「信じられない……帰る」


 そう言って回れ右したところで、誰が責められるだろうか。


「もぉ、だれよぉん笑ったの?」


「そ、そうだよ。お姉ちゃんのこと笑うなんて酷いよ!」


 まして、前と後ろから非難の声が上がれば、消去法で犯人は一人しか居ない。


「あれく?」


「ち、違います。私じゃないですよ! あなたを背負ってるんですから、あんな離れたところで吹き出せる訳ないじゃないですか!」


「っ、それはそうだけど……おかしいじゃない! それってこの場に他にもう一人居ることになるのよ? あ」


 疑問を口にし、気づく。自分の失態を。看過出来ない可能性を。


「よくよく考えれば、敵が目の前のアレだけとは限らないじゃないの」


「えっ?」


 そう、肉塊に注意を集め、肉塊の仲間が伏兵として潜んでいたなら、説明はつく。


「え?」


 つくと思ったのに、驚きの声を上げたのは肉塊以外のなにものでもなく、あたしも虚を突かれる。


「いや、『え?』って、さっき噴き出したのそっちの部下か何かじゃないの?」


「ええっ?! いやいや、知らないですよボクちゃん。てっきり、保険に忍び込ませたそっちの手のモノだとばっかり」


 深く考えずに聞いてみれば、あっちも想定外なのか肉塊は頭を振る様にぶるぶる揺れると、心外そうに言う。


「何、それ」


 つまり、どちらの味方でもない第三者が潜んでいると言うことであり。


「アレク、みんな、警戒をお願い」


 あたしも身構えると周囲を見回した。


次回、三十八話「アッバスさんってオチかと思ったけど、流石にそれはないわよね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ