三十話「あからさま過ぎるわのよっ!」
「さてと、街の中を探す分には食料なども不要ですが……」
「行方不明になったお嬢さん方が飲まず食わずの可能性もあるよな」
「と、なると聞き込みついでに買い物しておいた方が良いかも知れないわねぇん?」
そして、口を挟む暇もない。
(なんだか あたし ぬき で はなし が すすんでるん です けど)
「ど、どうしたのお姉ちゃん?」
「な、何でもないわ。大丈夫、大丈夫よ?」
心配そうにブラッドが声をかけてくれるが、自分が要らない子の様に思えたこの時のあたしには、動揺を隠すのも無理っぽかった。
「そ、それで、方針は決まりそう?」
「ええ。治安の悪い地域や、先日貴女が暗黒神官に襲われた場所などには既に他の同僚が向かいましたから、私達はまず商業区に向かい――」
「買い物をしてから同僚達が捜索してない場所を重点的に探してくって感じさ」
「そうなんだ……けど、捜索してない場所何てあるの?」
それでも何とか誤魔化すべく発した問いに答えるアレクの言葉をバッシュが継ぎ、納得しかけたあたしは、浮かんだ疑問をそのまま口にする。
(あたしが伝えた暗黒神様からの忠告があった矢先の失踪事件なのよね)
光神の神官達がこの事態を軽く見るとは思えない。全神官総出というのはないにしても虱潰しレベルで捜していそうなイメージがあったのだが。
「えっとね、ちょっと言いにくいんだけど」
「あるにはあるのよぉん」
(なんだか ことば を にごしてる じてん で ろくでもない てんかい が まって いそうなの は きのせい ですか?)
嫌な予感がした、猛烈に嫌な予感が。同時にこれがアニメやライトノベルだったらピンポイントにそれがアタリという臭いまで漂ってくる。
「あー、こいつ等が言葉を濁してるのは、その、何だ。まず間違いなくあり得ない場所だからなのさ」
「徒労に終わることが解りきってるから捜索範囲に入ってないのですよ」
「徒労って……その自信はどこから来るのよ?」
ジト目で対応してみるが、アタリ臭さは強くなる一方で。
「ああ、それはですね――」
いかにもそこが正解ですと言わんがばかりの流れに気をとられたあたしは、気づいていなかった。
「暗黒神官が入り込めないように結界が張り巡らされてるからです」
「え゛っ」
言葉の爆弾を投げつけられるまで、自身の破滅フラグに。
(と言うか、こんな不意打ちどうやって防げって言うのよぉぉっ!)
「そこは聖廟で、歴代の高位神官達が祀られてるのよぉん」
あたしが胸中で絶叫する中、ヴェゴンさん達は丁寧に説明してくれた。何でもその結界とやらはもの凄く強固だが、あまりに高等なモノである為、今の神官達には真似出来ずただ維持するのが精一杯なのだとか。
(下手すると光神様がこの世界を見限る前のものかもしれないってことね……)
頭の中の冷静な部分が解説を分析するが、今の神官では張ることもかなわない程強力な結界が、暗黒神官のあたしを素通しするだろうか。
(無理っ、絶対弾かれるっ! あぁっ、弾かれてバレて……)
顔も知らぬ昔の神官達が薪で囲まれた十字架もどきの脇でおいでおいでしてる幻覚が見えた。
(嫌ぁぁぁっ! なんとかしないと……なんとか)
「お姉ちゃん?」
絶望を前にしてあたしは知恵を絞る。誰かに呼ばれた気もしたが、今はそれどころではないのだ。
(ん? そ、そうよ……そんな強力な結界があるならわざわざ見に行くことなんてないじゃない!)
そんな当たり前すぎることに思い至るまで、暫くかかる程追いつめられていた。けれど、それもここまでだ。
(だいたい、強力な結界だって言うなら、光神の神官しか入れないかも知れないし)
絶望に囚われすぎていたと思う。
「ねぇ、アレク? その廟って暗黒神官以外はどうなの? ほら、あたしって光神の神官じゃないし」
きっとこう問えばアレクはきっと笑顔であたしの言わんとすることを察してくれるだろう。
(そして「廟を調べるのは止めましょう」って流れに……)
「あぁ、すみません。大丈夫ですよ暗黒神官以外なら」
「えっ」
あたしの希望は見事に打ち砕かれてしまった、残念。
「結界は中に居る者が敵と認識した者の侵入を防ぐものなのよぉん」
「そう言う訳だから安心して良いぜ?」
安心どころか一縷の望みを絶たれた心境ですが、何か。
「では、行きましょうか」
「……そ、そうね」
この流れでは行きたくないなど言えはしない。先に立ち寄る商業地区で何らかの奇跡が起こることを祈りながら、アレクに促されたあたしは歩き出すのだった。
長らくお待たせしました。
突如やってきた破滅フラグ。
果たして主人公に回避する術はあるのか?
続くのです




