二十九話「逆ハーって言うな!」
どんな危険が待ち受けているかもわからないのだ、あたしだって二人より三人の方が良いとは思う。
「全く素直じゃないな、着いてきて欲しいならそう言えばいいんだよ?」
「かけらもそんなことをおもったことはありませんよ?」
だが、相手にも寄るということもあたしは知っていた。
(だからこえをかけなかったのに、かんちがいびけいにまわりこまれましたよ?)
バッシュこと勘違い美形さんは戦力的には頼りになるかも知れないが、ファンの神官さん達に妬まれそうだし、言動がちょっと鬱陶しいし、一緒に居るとツッコミ頻度が上がるしとデメリットの方が遙かに多い。
「と言うか、行方不明者の捜索に加わらなくて良かったの?」
神官長さんに聞いたところ、既に編成した捜索隊が出発済みだったらしいのだ。アレクはあたしを待っていたから仕方ないとしても、「実力はある」バッシュなら既に捜索隊に加わっているかと思っていたのだが。
「いや、同行希望者が多くて収拾着かなくなっちまったんだよ」
「あー」
言われてみれば納得の理由だった。
「いやぁ、モテる男は辛いねぇ」
などと空気の読めない発言こそしなかったものの、この後バッシュが同行を申し出たことにあたしもアレクもいい顔はしなかった。
「だいたい、また同行したいという神官が殺到したらどうします?」
「それはお前も似たようなモンだろ?」
(空気読めない発言でもしてくれれば置いて行く理由になったんだけど……)
ぶっちゃけ、アレク側の同行希望者については昨日の光神様公式カップリング認定を持ち出せば何とかなるんじゃないかとあたしは思っている。
(世の中これ万事塞翁が馬ってことかしら?)
まさかあんなに嫌だった誤解を人除けに使うなんて昨日のあたしなら考えつかなかったと思うけど。
「だいたい、こんなとこでもめてる時間だって惜しいだろ?」
(だからスルーして通り過ぎようとしたのだけどね)
正論を吐くバッシュはたぶん、あたしが無視して通り過ぎようとしたことには気づいていないんだろう。もしくは、それすら自分の気を惹く駆け引きとか考えてるかも知れない。
(はぁ、口で言っても無駄よね、きっと)
いいえを選んでもスルーして同じ質問を繰り返してくるゲームの登場人物に何故かバッシュの姿が重なった。
「アレク、もう良いわ。確かに時間は惜しいし」
結局の所、あたしは根負けし。
「そうそう。んじゃ、よろしくな?」
(どうか「バッシュ が 仲間 に なった」なんてテロップの幻影見えませんように)
謎のファンファーレとかが鳴らないように祈りつつ、苦行を甘んじて受け入れることにした。
「はぁ……時間を浪費してしまいましたね、行きましょうか」
「おぅ」
一見すれば、あたしの姿は両手に花と見えるかも知れない。だが、実際の所「何であんたが答えてんのよバッシュ」と突っ込みたい気持ちでこの時はいっぱいだった。
だが、あたしはやっぱり甘かったのだ――。
「で、ようやく神殿の入り口まで来た訳なんだけど――」
「大変だったんだね、お姉ちゃん」
「そおねぇん、同情するわぁん」
すうふんご、どうこうしゃはなぜかさらにふたりふえていたのです。
「って言うか、なんでブラッドやヴェゴンさんまでいるのっ?!」
う゛ぇごんさんはともかく、こうしんしんでんのさんびけいそろっちゃったじゃないですかやだー。
(良かった、入り口の人が男の人で本当に良かった)
さん美形そろい踏みなこの状況、女性だったらきっと騒ぎになっていたのは間違いない。
入り口で警備に当たる神官が男性のみだったのも、行方不明になったのが女性だったからなのだろう。
「だ、だって……外は危険かも知れないって話なのに探しに行くって言うから」
「そうよぉん、オンナノコが危険な目に遭うかもしれないって言うのを黙ってみてたら男がすたるわぁん」
二人が同行を申し出てきたのは、あたしを心配してくれての善意からなのは、わざわざ質問しなくてもわかる。
「あ、ありがとう」
本当にありがたくもあったのだが、光神官に囲まれてるといざというとき暗黒神官の力を使えなくて困るという実情もあって。
(どうしよう……このパーティー)
激しく頭を抱えたくなりながらもあたしは微笑むしかないのだった。
ツッコミお姉さんに仕事させたらシリアスな空気が消し飛んだ。
どうしよう。
続きます。




