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二十五話「今すぐこの国あとにしたいのだけど」


『聞こえますか、人の子らよ』


「「な」」


 光神様が次の一言を発した瞬間、アレクを含む周囲の神官さん達が一斉に顔を上げた。


(そっか、あたしだけが聞こえたのが問題なんだから)


 神殿に居る神官さん達全てが神様の声を聞いたなら、あたしが光神様の声を聞いたことは完全に霞む。


(たぶん、さっきのアレクとの会話の誤解だってぶっ飛んじゃうわよね)


 流石と感心する半面ここまでしちゃっていいのかなとも思うが、光神様というかその代理人さんが決断を下したのだから問題はないのだろう。


(それはそれとして、何を話すつもりなのかしら?)


 あたしが暗黒神様に貰ったような忠告をするのか、全く別の話か。


『先日から時々この神殿を訪れる漂流人のことは知っていますね』


「え゛っ」


 ちょっとまってください、なんでいきなりあたしのことをわだいにするのですか。


『それは、続きを聞けばわかります』


 いや、わかりますじゃなくてしんかんさんたちのしせんがささりまくっていたいんですけれど。


「今の、あなたのこと……よねぇん?」


「え、あ、そ……そうみたいね」


 あたしはヴェゴンさんの言葉を引きつった顔で、肯定し。


『かの人はMではありません』


 続けた光神様の言葉に石化した。


「そ、そうだったんですねぇ、疑ってぇごめんなさぁい」


「悪かったわね……って、そんな個人的なことをわざわざ神が?!」


 えーと、ツッコミ入れてるところ申し訳ありませんが、あたしも猛烈にツッコミたいです。


『ふぅ、これで貴女に疑惑が向けられることはもう無いでしょう』


(いえ、ないとかそういうもんだいじゃありませんよね?)


 声だけだからドヤ声とでも言うのだろうか。穴が空きそうになるほど突き刺さる視線に耐えかね、現実逃避にそんなことを考えていたあたしは結局の所自分を誤魔化しきれず崩れ落ちた。


(何、この展開。神様に頼ったのが間違いだったの?)


「おい、聞いたかさっきの声?」


「勿論だとも。神のお声を聞けるとは……内容はかなり個人的だったが」


「ひょっとしたら深いお考えがあるのかもしれん」


 ないです、とか叫びたかったが、叫んだら更に注目を集めてしまう。


「そこの、記録は出来たか?」


「もちろん、一字一句違えることなく記載しました。後で石屋を呼んで碑を設置せねば」


 四つん這いになったあたしに建物の方から聞こえたやりとりが容赦なくトドメを刺す。


 恐るべし光神神殿、神と神官が力を合わせて精神的に屠りに来るとは。


「やったねあれく、せきひになるそうですよ?」


「そ、それだけ神が気にかけていると思えば……その」


 自らが信仰する神だからこそあたしの視線に晒されたアレクは何とかフォローしようとしているようだが、自分に火の粉が降りかかっていないからフォローの余裕もあるのだ。


「アレクもさらし者になればいいのに」


 などと少しでも恨みがましく思ってしまったのは、無理もないことだったと思う。


『では、かの者についても言及しておきましょう』


 などと光神様が妙な気を利かせてくれることなど、予想はしていなかった。うん、ほんのちょっとはあるかも知れないかなって思ったかも知れないが。


『そして、神官アレクはドSではありません』


「「時間差で続き?!」」


「は?」


 周囲の神官が異口同音するなか、今度はアレクが石像と化していて、神殿におけるあたし達の知名度はこの日を境に大きく跳ね上がったのだった。



光神『そう言えば、「交信」の感想を伝えるの忘れてましたね』


なにをどうしてこうなった。

神様の代理人は案外お茶目なのかもしれない。


続きます。


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