二十一話『どう考えても自業自得だものね』
「ふふふ、うふふふふ」
「やれやれ、そろそろ本題に移りたいのだが」
笑うしかないあたしに声をかけてきたのは、眠る前の状況を鑑みれば必然とでも言える存在。システムさんこと暗黒神の代理人である。
(そりゃ、あんな嘘ついてしまったもの)
テンパって居たとはいえ、醜態をうやむやにする為に「神様からお言葉を預かった」とか大嘘をかましたのだ、ダシにされた形の神様が懲罰に夢枕に立ったとしても不思議はない。
「ごめんなさいっ、すみませんでしたぁぁぁっ」
現実逃避を止めて、あたしは即座に土下座した。こういうことはさっさと謝っておくべきだ。
「いや、いきなり謝られても主語が無くては何について謝ってるのかわからないのだがね」
「えっ」
「そもそも、もしその謝罪が『交信』のでっち上げについてなら俺は気にしていない」
「は?」
「考えてもみたまえ、もし神々がそのでっち上げ程度で激怒するなら、その『交信』とやらの記述が今も残っていると思うかね?」
代理人さんいわく、大きな問題なら最初に『交信』などと言いだした先人が罰を受け、嘘も正されて言い伝えとして残るようなことも無かったはずだよ、とのこと。
「あー、言われてみればそうね」
「むしろ誤魔化そうとした『くろれきし』とやらの方が面白かったので見逃されたと言うことらしいが」
「なん……ですと?」
そこまで説明されて、ふとあたしは気づく。
「ちなみに先代の『交信記録』はしっかり映像として残されててね。神々やその代理人たる俺達なら自由に閲覧出来るのだよ」
それって、けっきょくばつじゃないですかやだー。
「ま、まさかあたし……のも」
「もちろん、明日にでも光神神殿に行ってみるといい。きっと感想かコメントをくれるだろう」
「いやぁぁぁぁぁっ」
あたしのくろれきしまわしみとかない。ありえない。
「そうそう、面白い娘だから今度こうして夢の中で話してみたいという同胞が数人いてね」
「なに、それ」
「彼らが気に入れば、複数の神々からの加護が得られるかも知れない。これは滅多にないことだ」
えーと、かごをえるりゆうがくろれきしをみてきにいったからとかありがたみがまいなすぞーんにとつにゅうしそうというかきえてしまいたくなるのですが。
「はっはっは、そう恐縮することはない。滅多にないとは言ったが同じ道を歩いた先人は存在するのでね」
あー、つまりさいしょに『こうしん』をやらかしちゃったひとですね、わかります。
「ちょっ、あたしのプライバシーは? って言うか何それ?」
まえにもこんなことをいったようなきもするが、あたしのこうぎをだいりにんさんはするりとかわしてえがおでいう。
「心の中で言ったじゃないか。そう、これは『罰』なのでね。その辺は考慮されないのだよ」
「いやぁぁぁぁぁぁっ」
朗らかな顔で言うな。仮面しててわかんないけど声と雰囲気で、あたしは察していた。察しつつ叫びながら床をのたうち回った。現実のあたしもきっとうなされていると思う。
「さてと、脱線してしまったが本題に入ろう。話したとおり罰と引き替えに『交信』の件はお咎め無しと言うことになるが、『交信』したということになっている以上、情報を授けなくては此方の沽券に関わる」
ゆえに、助言をしよう。代理人さんはそんなことを言っていたと思う。あたしはこの時羞恥プレーど真ん中でそれどころではなかったので、うろ覚えになってしまうのだが。
「君が役人に突き出した者達は、かの国に住む道を外れたモノの中では大物ということになっているが、それは光の神に仕える者達の誤解に過ぎない」
あたしも使える闇に同化する奇跡だがこれには離れた他の闇(ただし視界内)にテレポートすることが出来る上位互換のものが存在するのだとか。
「闇から闇へ跳ぶ方はかなり上位の神官でなくては使うことも能わない」
例の三人組は全く同じ衣服を使い、三人で一人を演じたりすることで上位の術が使えると光神の神官達を誤解させ、引っかき回していたらしい。
「普段別々の服装をすることで三人一役に気づかれないようにしてね」
つまり、思ったより馬鹿ではなかったが実際はあたしと同じかそれより下のランクの奇跡しか行使出来ない小者と言うことだった。
「故に、油断はしないことだ。この国にはあれらよりもはるかに危険な者が潜んでいる」
「は?」
じょげんというかとんでもないばくだんはつげんきましたよ、これ。
「ちょっ、え?」
黒歴史とかそれどころではない。あたしは我に返って代理人さんを問いただそうとし、異変に気づく。瞼が重く、同時に覚えのある倦怠感が襲い始めた。
「残念だが、時間切れのようだ」
あー、それでみじかいじかんでなるべくつかれがとれるようにいつものやつをしてくださったわけですね。とうぜんながら、あたしにこれへあらがえるはずもなく。
「あれ? そう言えば代理人さんは自我のない受け答えだけのシステムだったはず……」
不意に覚えた違和感へポツリと呟いたのは、次の日。ベッドから起きてのこと。外でスズメっぽい鳥がチュンチュンさえずっているのが、聞こえてきていた。
(その自我がないシステムがあたしのくろれきしをおもしろがる?)
他の神々の既に眠りについてしまっている神々の代理人ならAIのようなモノだけでは支障をきたすと自我が与えられてる何てことはあるかも知れないが、代理人さんははっきりと自分は自我のないシステムだと言っていた。
「ひょっとして――」
暗黒神様が代理人のふりをしていたのではなかろうか。
「って、それよりも問題はこの国に潜んでるって危険な者よね」
フラグ臭がくさやとやり合えるレベルなのだが、わざわざ助言してくれたということは状況次第でこっちにも火の粉が降りかかってくるとか、最悪既にこっちがロックオン
されてレベルなのかもしれない。
「アレクに相談し……って、だぁぁぁっ昨日の今日でアレクの顔なんて見れるかぁぁぁぁぁっ!」
相談したいのは山々だが、恥ずかしさと精神的ダメージがぶり返して気がつけばベッドで叫んでいたあたしなのだった。
大物かと思いきや、実は倒した敵は張りぼてだったという事実。
あわれ三馬鹿神官、安らかに眠れ。
と言うか、今度は本当に大物が登場するのか?
主人公からすれば目立ちたくないのに厄介ごとの臭いが消えてくれない。
そんな感じで続きます。




