表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男前女子、美少女だと思って助けた鬼と契約結婚する羽目になる  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/24

第24話 新しい日常

 桜の家の敷地内に美形が住み始めたという噂は、あっという間に広がった。


「秘密にしとくんじゃなかったのか」


 ぼやく桜に魁が笑顔で言う。


「ああ。鬼だということが秘密なだけであとのことはどうでも……」

「いや契約結婚のことは内緒だからねっ」


 間に割って入るように父が言った。


 ここは鬼頭家の応接間。

 魁たちが本格的に離れで暮らし始めて一週間が経っていた。


「それにしても一週間で話が回りすぎでしょ?」


 桜は頭を抱えて机の上に突っ伏した。

 

「学校で質問攻めにあうし。わたし、どう答えたらいいのか分からない」


 悩む桜に対し、(がく)はお気楽だ。


「ふわっはっはっ。オレの周りでは魁さんのこと『王族』ってことになってるよ」

「えっ⁉ 『王族』⁉」


 桜は驚いて顔をガバッと上げ、(がく)にズイッと近付けた。


「うん」


 (がく)はニコニコしている。


「なぜ『王族』なんてことに……」


 桜は(がく)と魁の顔とを見比べながらつぶやく。

 (がく)は笑いながら言う。


「こないだ、オレのサッカーの試合、みんなで見に来てくれただろ? そのときに真鬼(まき)さんがオレのことを『(がく)さま』なんて呼ぶからさ~。アレはどういうことだってザワザワしちゃってさぁ~。魁さんが王族で、真鬼(まき)さんがお付きの人ってことになっちゃった」

「ワタクシは優秀な執事なので。言葉使いには気を付けております」


 真鬼(まき)はピシッと揃えた右手の指先で、銀縁眼鏡の縁をクッと上げた。

 (がく)は、その姿を見てケラケラと笑っている。

 完全にギャグだ。


 澄ました顔をして銀縁眼鏡の縁を指先で押さえながら、(がく)の方へ顔を向けている真鬼(まき)を、魁が横目で嫌そうな表情を浮かべながら見ている。

 (がく)は笑い過ぎて吐きそうだ。


「もうっ。(がく)? ちょっとは落ち着きなさいよ」

「ガハハ。ねーちゃんは細かいよー。雑なくせに変なトコで繊細でうっさい」

「黙れっ」

「そんなんじゃ、契約結婚だっていったって、魁さんに嫌われちゃうよぉ~」

「うっ」

 

 言葉につまる姉を見て、(がく)はフォローを装って揶揄う。


「大丈夫だよ、皆の人気は真鬼(まき)さんのほうが上だからさー。魁さんは綺麗だけど、男か、女か、分かんないから人気でいくとイマイチ」

「「えっ、そうなの?」」


 桜と魁が同時に声を上げて、(がく)は再び吐きそうになるほど笑っている。

 真鬼(まき)は1人、満足そうにコクコクと頷いていた。

 

(言われてみれば確かに。わたしの学校での人気も真鬼(まき)さんのほうが上だった)


 桜が何となく魁の方を見ると、魁も桜の方を見ていた。


「あの……男装もしようと思えばできますが?」

「えっと……お気遣いなく」


 魁に言われてそう返した桜だったが、後日、魁は男装姿を見せに来た。


 桜が学校へ行くために家の玄関を出ると、魁がいた。


「おはようございます。たまには男装もしようと思って……どうですか?」


 桜が見せられたのは『お前どの時代の貴公子だよ?』と突っ込みたくなるような、派手でキラキラしたフリルだらけの貴族服系の派手な服だった。


「それは……かえって目立ちますよ?」


 朝一番から目が痛い。

 

 魁の後ろでは真鬼(まき)がこちらへ背を向けて肩を揺らしている。


(笑ってないで、アドバイスしてあげてよ、真鬼(まき)さんっ!)


 桜はちょっとムッとしたが、魁がブツブツ言っているのでそちらへ視線を戻した。


「うーん。男装はお気に召さない?」

「いえ、そういうわけじゃないです」


 腹が立つことに魁にはキラキラした貴族服が似合っていた。

 だが一番似合うというほどではない。


(魁さんの男装もカッコいいけど、初めて会ったときの白地に朝顔の柄の着物ほど似合ってはいないな?)


 桜がそんな風に思っていると真鬼(まき)が助け舟を出す。


「魁さま。せっかくですから、週末にでも桜さまに服を見繕ってもらったらいかがですか?」

「ああ、それもいいな。こちらで暮らすための冬服も用意しなきゃいけないし。どうですか? 桜さん。週末に買い物にでも出かけませんか?」


 魁はさりげなく桜を誘う。


(デート⁉ それは実質、デートでは⁉)


 ポンッと顔を赤らめる桜の後ろから玄関を出てきた父が言う。


「なら僕も一緒に行こうかな? 僕も冬物が欲しいんだよね。この辺、冬になると雪が積もるから」

「ああ、そうなんですね。だったら靴も必要でしょうか?」


 真鬼(まき)が父に聞いた。


「そうですねー。雪駄とかでは寒いかもですね。最近はブーツでも通気性のよいムレない素材の物もあるからおすすめですよ」

「では、靴も買うことにしましょう」


 魁は顎に手を当ててウンウンと頷いている。


「なんじゃ、なんでじゃ? 遊びに行く計画か? なら儂も行きたい」

「あら楽しそう。それなら私も行くわ」

「オレも行く、オレもー」


 話を聞きつけた祖父も、母も、(がく)も、ノリノリである。

 その週末、鬼頭家の面々と魁たちは街へ買い物に出かけた。


 祖父を交えた鬼頭家の五人に加え、美形2人が一緒にいれば目立つ。

 しかも大きな車に大柄の運転手付きだ。

 とてもとても目立つ。

 週明けの学校で、桜は質問攻めに遭う羽目となった。


(ま、いいか。買い物は楽しかったし。魁さんとお揃いのスウェットもプレゼントしてもらえたし)


 鬼へと変身した魁に貸したスウェットのお礼らしい。

 なぜかお揃いのスウェットは、可愛らしいピンク色の上下セットになっているものだった。

 肌ざわりはいいし可愛いが、桜よりも魁に似合っていた。


 これって桜色ですよね? とか魁が言っていたような気がするが、桜もボーとしていてよく覚えてはいない。

 そんな2人を見て真鬼(まき)は背を向けて肩を震わせていた。


 この後、鬼頭家には別の里の鬼が攻めてきたり、桜のフェロモンが気に入った鬼にストーカーされたり、魁を普通の女性と思ったストーカーに襲われたりなど色々な事件が起きたが、すべて腕力で解決した。

 筋肉。筋肉が全てを解決する。

 そして2人は楽しく笑いながら末永く幸せに暮らしたのでした。



~ おわり ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ