第16話 鬼頭家の秘密
真鬼によると鬼の情報はR13相当の情報だそうだ。
そこで楽に鬼の情報はまだ早いということになり記憶の一部が消されることになった。
「魁さんって鬼ってだけじゃなくて色々と出来るんですね」
「この程度なら真鬼もできます。鬼の特技は力業だけではないのです」
魁はにっこり笑って楽の記憶を消した。
記憶を消された楽は木を失い、今は自室で寝かされている。
目が覚めた時には鬼が応接間で暴れた記憶も、魁たちが鬼に変身した記憶も消えているらしい。
「でも応接間がこの惨状じゃ、何かあったのは丸わかりだね」
「んーそうねぇ。桜の縁談にブチ切れた 蒼さんと父さんが暴れたことにでもしようかしら?」
桜の母はとんでもないことを言っている。
桜は苦笑いしながら母を見た。
本当にそう説明しそうだが、鬼頭家で一番怖いのは母なので好きなようにさせるのが一番である。
誰も彼女を止めなかった。
「それよりも肝心の用事が済んでいませんね」
真鬼の言う通り、何も用事は済んでいない。
庭で土下座していた鬼たちが帰っていくのを見送ると、桜たちは改めて応接間に集まった。
いま応接間にいるのは、桜と魁、桜の両親と祖父、真鬼と運転手だけだ。
先ほどと同じ場所に座ったものの、応接間のなかは刀傷でズタズタになっている。
「どういうことか説明して欲しいです」
桜はキチンと正座すると、キッパリとした物言いで皆に向かってハッキリと意思を伝えた。
魁はポリポリと頬を掻きながら言う。
「あー……どこから説明すれば?」
「まずは鬼頭家のことを……」
真鬼はそう言いながら、困ったような表情を浮かべて祖父の方へ視線を向けた。
すると、桜の父が意見した。
「いや、まずは鬼のことから説明すべきでは?」
母は祖父を見ながら言う。
「ここは年長者のお父さんから話したら?」
「ウーム、仕方ない。じゃ、儂から説明するかのぉ~」
悠は説明を始めた。
「鬼はこの世に存在する。鬼の隠れ里というものがあってな。鬼はそこで生活しとるんじゃ」
「その鬼と我が家がどう関係するの? じーちゃん」
「ん。鬼頭家は手っ取り早く言うと鬼を封印できる家系なんじゃ」
「封印……」
桜は魁の方を見た。
(封印というと、封筒思い出しちゃう)
魁のマスコットが封筒に入っているのを想像した桜は、可愛いな、となんとなく思った。
祖父はわざとらしい咳をして説明を続けた。
「あー、コホン。とはいえ今は鬼の封印といっても、鬼の力を弱める程度の簡単なものだがな。鬼頭家のなかには鬼を鎮めるフェロモンのようなものを放出できる者がいるのだ。今の代だと、それがお前だ。」
「えっそうなの?」
桜は驚いた。
「フェロモンって……わたし、臭いの?」
「いや。むしろいい香りというか……」
自分の体の匂いを確認しだした桜を見て、魁は慌てて否定した。
「桃のような香りですよ。この桃のような」
真鬼はそう言いながら、魁の少し後ろから机の上に載っている桃を指さした。
「ふーん。わたしの匂い、桃なんだ……」
(とりあえず臭いわけじゃないみたいだからいいけど。鬼を鎮めるフェロモンかぁ~)
全く自覚のない桜は不思議そうな面持ちで、綺麗にカットされた桃を見つめた。
「そっかぁ……殺したり、こっちの世界に来られないように閉じ込めたり、って感じじゃないんだ?」
桜が物騒なことを言うと、父が慌てて口をはさんだ。
「ああ。それをしちゃうと我々もマズイことになるから……」
「は?」
父がモゴモゴ言い出したので、桜は異変を感じてちょっとキツメの「は?」を発した。
祖父が桜の疑問に答える。
「うむ……鬼と人間との戦いがたびたび起きて血が流れるのを避けるために、封印のための結婚、というものが行われるようになってな。形式的なもので実際に生活を共にする結婚とは異なるもので、それが契約結婚の始まりなのだが……。えっと、結論からと言うと我々のなかにも鬼の血が流れているんじゃ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
驚く桜に、母がニコニコしながら言う。
「そりや、ねぇ? 契約とはいえ、結婚とかしちゃうとねぇ……。なかには相性のよいカップルもいたりするでしょ? そうなったら、ほら、やっぱり子どもとか、できちゃうから……」
「ン。できちゃうねぇ」
母の言葉に父もウンウンと頷いている。
(何やらかしてんだ、ご先祖さま)
桜はスンッとした表情になった。




