第15話 強すぎる母
「申し訳ありませんでしたー」
鬼頭家に襲撃をかけてきた鬼たちが、庭に正座して一斉に頭を下げた。
「本当ですよ。どうするんですか、この部屋」
鬼の前に立った薫が、プンプンしながら室内を指さしている。
正座する鬼の先頭にいた首謀者の鬼が情けなく眉を下げながら言う。
「弁償はさせていただきますので……」
「当たり前ですっ。でもこんなのどうするの⁉ いまどき刀傷なんて……下手に業者も呼べないわよっ」
「はいっ。労働力も提供しますっ。なんなりとお申し付けください!」
「それは助かるわっ!」
鬼たちは弱体化していても鬼である。
しかも男性だ。
なのに薫は、全く臆することなく思う存分怒鳴り散らしている。
桜はその光景を室内から顔を引きつらせて眺めていた。
「こっわ。お母さん怒らせないようにしよ」
父もウンウンと頷いた。
「それがいいよ、桜。お母さんは怖いからね」
「本当に。我が娘ながらアッパレすぎる……」
祖父も腕を組んで感心していた。
「あー申し訳ありません。こちらの修復についても契約書にキチンと入れさせていただきます」
真鬼がひきつった笑顔をうかべて言う横で、魁もコクコク頷いている。
「それにしても……鬼だよ? どうなってんの?」
桜は改めて事の異常さを確認するようにつぶやく。
「鬼なんだよ、鬼。なんで鬼が我が家に来るの? 今日は節分でもないのに。それになんで弱体化したの? 意味が全然わかんないんだけど!」
つぶやく声は桜の苛立ちに合わせて、最後は叫び声のようになっていた。
隣で魁がビクッと震える。
今の魁はすっかり美少女のような姿に戻っていた。
着物が裂けてしまったので桜の服を貸したのだが、グレーのスウェットの上下を着ていても美少女のままだ。
(男性だけど! しかも鬼だけど! なんで美少女⁉)
意味が分からない中でも一番分からないのが鬼に強すぎる母だ。
(鬼来たって逃げたじゃん! 確かに応接間がギッタギタのズタズタだからキレるのも分かるけど! 楽連れて台所へ逃げたのにっ!)
動揺する桜は叫びを上げて暴れたかった。
(あ、それでお母さんは今、強いのか!)
急激に得た悟りでスンッと表情の消えた桜に、男性陣は次に何がくるのかと怯えた表情になった。




