第14話 あなたは怖くない
急激に弱体化した鬼たちは、あちらこちらでバタバタと転がっていく。
「オレの筋肉がぁぁぁぁぁぁ!」
「力がぁぁぁぁぁ、体に力が入らないぃぃぃぃぃィィィイ!」
「角がっ、角が勝手に引っ込む……」
うめき声のような悲鳴が上がる。
「むっ、これは異なこと」
真鬼は鬼の姿から銀縁眼鏡の執事姿に戻っていた。
(執事服は破れなかったんだ。素晴らしいストレッチ性!)
運転手も大柄なのはそのままだが鬼の姿から人の形になっていた。
「ぁ、これは……」
ボロボロになった着物を腰のあたりでかろうじて止めている魁は、みるみるうちに縮んでいく体の変化についていけずにヨロりとよろめいた。
「危ないっ!」
桜は思わず駆け寄って、魁の体を受け止めた。
(お、思わず……体が動いてしまったぁぁぁぁぁ)
左手で木刀を持っているので、右腕で抱き寄せるような形となった。
みるみるうちに鬼の体から人間の体になった魁の体は白く細い。
(な、なんか変な感じになっちゃったな)
桜はドキドキを誤魔化すように魁を助け起こしながら声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「え……あ、大丈夫です」
魁は目をぱちくりさせながらスッと立った。
「えっと……桜さんは、僕のことが怖くないのですか?」
「ふわぁ?」
今度は桜が目をぱちくりさせる番だった。
「怖いって……魁さんが、ですか?」
「はい」
「何でですか?」
桜は首を傾げた。
「何でって……僕、鬼なのに……」
「ん。それはさっき聞きました」
「いやでも、角だけ出した時とは違って巨大化したから……ちょっと引かれちゃったかな、と……」
「え? 何でですか?」
桜は全く分からないといった様子でキョトンとしている。
「普通の人間は鬼を怖がるから……」
魁は戸惑っているようだ。
(何を言わんとしているのかマジでワカラン)
「だって、魁さんは魁さんじゃありませんか。怖くなんてないですよ」
桜はキョトンとしたまま、思ったままを口にした。
「あ……え……え?」
戸惑う魁を見て、真鬼は後ろを向いて肩を揺らしている。
どうやら笑っているようだ。
運転手も口元を押さえて目を丸くしてこちらを見ている。
(えーと。どういう反応?)
桜が首を傾げる後ろで、祖父と父が苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべて桜と魁とを見比べていた。




